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七話
★ルール
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助けを求めてグレイの方を見れば、いつの間にか酒を片手に楽しく飲み始めていた。絶句する。
「は~イケメンが善がる姿って酒の肴に最高ネ~」
「ちょ!グレイっ!俺を守るんじゃねえのかよ?!」
「大丈夫大丈夫。本当におバカちゃんタチが暴走しかけたら止めてあげるカラ」
「もう十分暴走しっ、ひっ!やめ!触んな!」
「ここは?」
「だめだ」
ソルに腰骨を撫でられ、フィンが即座に引き剥がした。二人にとっては確認作業でも俺にとっちゃ一つ一つが確かな刺激となっている。わりと本気の力で二人の手首を掴んで煩わしい動きを止めさせた。
「待てって!二人と、もっ!くっ、はあ…あっ!ちょっ!」
二人は自由な方の手で互いを牽制し合いながらどんどん触れてくる。内ももや脇腹、背中…どこも性感帯とは言いにくい微妙な場所だが、甘く痺れる刺激は積もり積もって確かな快感となっていく。だめだ。気持ちいいと認めたら速攻落ちる。必死に二人の手を払いのけた。
「さわんな!うあっ、このっ…!」
「ここはー?」
「だめだ」
「そこっ、ひっ!?」
「ここは」
「だめだ」
「はあ、はっ、ん、もう…全部、ダメで、いい、っ!」
こんな頭のおかしい確認作業今すぐやめてほしい。どうして同僚と友人の前で醜態を晒さなくちゃいけないんだ。
(全部禁止でいいだろうが…!!)
背中側のフィンに助けを求めた。
「ライ。耐えてくれ。私も全部禁じてしまいたいが…無駄に抑圧させると反動が怖いのも事実だ。ある程度自由にさせて飼い殺すのが一番良い。そのためにも、ルール作りは必須だ」
「んなのっ、口にしなくても、わかんだろ…っ」
恋人以外は触ってはいけない部位とか、これ以上は倫理的にアウトとか。普通に考えたらわかるだろう。そう食い下がるが…頭を撫でる手も、腰を抱く腕も解かれなかった(甘い抱擁に見えて身動きが取れない形で固定されてる)。
「脳みそが下半身にある駄犬に人の言葉は難しいだろうからな。こうして直接教えるのが合理的だ」
「はああ??あっ、ちょっ!」
「ワンワン」
ソルがふざけた調子で犬の振りをしてくる。ぺろりと頬を舐められ、そのまま首まで舌を這わせてきた。温泉で温まった皮膚は敏感に反応してしまいゾクゾクと快感が駆け上がってくる。
「ひっ、んんん…っ」
噛まれたり我慢させられたりで散々だった体には甘すぎる刺激だ。フィンにもたれながら震えてると、彫刻のように美しい手がソルの額を押し返す。肌に触れる唇を無理やり引き剥がした。
「首を舐めるのも禁止だ」
「あー?」
「噛むのは全ての部位で禁止とする」
「チッ、ウゼエー」
そういってソルはぺろりと舌なめずりした。顔を近づけてきて、キスされる、と構えれば…鼻や頬にちゅ、ちゅっと口付けられる。ちゃんとルールを守った形の、普段の言動からは考えられない優しすぎる口付けに動揺した。
「ふ、あ…?」
予想外の甘さに拒絶する事も忘れてソルを見つめる。
「かーわいい顔」
くくっと笑いながらちゅっと瞼に口付けられる。その刺激に震える事しかできない俺は、細く骨ばった指先で胸を撫でられ、堪らず声が出る。
「だめだ」
胸を弄る指先をフィンが取り上げた。思いっきり舌打ちしてソルの体が離れていく。ホッと胸を撫で下ろしていると斜め前の方向から声がかけられた。グレイだ。
「あらあら、胸は診察とかで触れられる事もあるんじゃない?」
酒に口をつけながらフフっと怪しい笑みを浮かべるグレイ。フィンは目を細めてそちらを見た。
「診察…病院の医者か」
「そうそう。それに、そもそもライって」
一度言葉を切ったグレイは手元の酒を飲み干して前屈みになる。
じゅるるっ
酒が染みた口で胸を吸われた。
「アアっ…?!、はっ、うあっ」
強く吸いあげて敏感になった所を舌で舐め上げられれば痺れるような刺激が背中を走っていく。だがそれを快感に繋げるのはできず、ただただ呼吸がしにくいのと恥ずかしさで爆発しそうだった。
「ほら、胸じゃあまり感じないっぽいし、乳首だけ禁止しとけば大丈夫ジャナイ?」
胸についた唾液を指先で拭いながら再び酒の元へと戻っていくグレイ。いや、淫魔。もう淫魔でいい、こんな男。俺よりも更に衝撃を受けていたフィンがハッと我に返って両手で抱え直す。
「グレイ!!私の大切なライを食い物にしないでくれっっ!」
「えー?仕事仲間としても同居人としても大切にしてるつもりヨ~?それに横取りは趣味じゃないワ~」
「くくっ!とかいってあいつ“自分から求めるようになれば横取りにならない”とか言ってしれっと奪ってくるぜ?」
「なっ!!!」
「もー失礼しちゃうワネ~」
と言いつつ否定しないグレイにフィンの鋭い視線が向けられる。珍しくこの二人がバチバチに睨み合っている事に他人事のように驚いた(グレイは笑っているけど)。フィン達の意識がそれた瞬間、今の内だとソルの手が俺の腹に添えられた。腹筋をなぞるように撫でていき、やがて勃ちあがりかけた俺のものへと伸びた。
ぐちゅり
先端を掌で包むように擦られ、びくりと肩が震える。逃げようにもフィンの両手で抱かれ自由がない。
「ああっ…!ば、かっ!んくっ、フィンッ」
俺の声に反応するようにフィンがソルの弄る手を取り上げた。ミシミシと骨が軋むほど強く手首を掴む。
「んだよ、ここもだめかぁ?」
「だめに決まっているだろう。殺されたいのか」
「けっ、擦り合いもダメかよ」
「当たり前だ。ライの性器に触れる事は許さない。前も後ろも全て禁じる」
「口で舐めんのはぁ?」
「だめだ」
焼き殺すぞと言わんばかりの気迫にソルは渋々体を引いた。
「チッ、つまんねえな。ライが欲求不満で泣いてもしらねえぞ」
「私が全て満足させるから問題ない」
「へえー?じゃあ、てめえがライを持て余させる事があったら、例外としてルール撤廃するって事にしようぜえ?絶対満足させる自信があるなら関係ないしいいだろお?なあ、恋人サマァ?」
「…いいだろう」
(いいのかよ?!)
「もしもライが持て余す事があれば、その期間はルールを除外する」
「はっ!今の言葉、ぜってえ忘れんなよ」
内心驚きつつ「それだけ満足させる自信があるのか…」と顔が赤くなる。正面にいたソルが目を細めつつ、俺の右手を拾い上げて指先に口付けた。ちゅ、ちゅっと指先をついばんでからぺろりと掌を舐め上げる。だめだ。さっきから甘い刺激ばかりで頭が混乱してきた。その混乱を上塗りするようにソルが指の間の部分を舐め上げてくる。ぞくりと身震いした。
「ん、はっ、う…っ、ソル…っ」
「はー、入れてえなあ」
「だめだ」
「ウゼエな、わかってるっつの。喋んな、萎える」
「なら今すぐに萎えさせろ。視界に入る度不快になる」
「アア??そりゃこっちの台詞だわ!ンなガチガチにしといて冷静ぶってんじゃねえ!!つーか絶対入んねえだろそれえ!」
海外サイズじゃねえかと悪態をつくソルのも十分デカいのだが、俺にとっては後ろのものの方が興味がある。なんだかんだ最近は俺ばっか触られていてフィンのを見れてない。
(見たい…触りたい)
しかし俺の体はフィンの両腕によって拘束するように固められていた。
(そうだ…)
少しだけ動かせる方の腕を捻りながら背中に回した。指先で辿りながら熱くて固いそれにたどり着くと耳元で小さく吐息が漏れた。
「ライ…」
窘めるように囁かれた後手首を掴まれるがぎゅっと掌に力を込めて握り込んだ。腕を離せ、正面を向かせろと誘うように手を動かせばフィンの両手が拘束の形から抱擁のものに変わる。
「わっ、ん、あ…」
ザバっとお湯からすくいだされ、浴槽の縁に腰掛けたフィンの膝の上に乗せられた。フィンと正面から見つめ合い呼吸が止まる。興奮で色を濃くさせたオレンジの瞳に、濡れて張り付く白金の髪、くっきりと浮き出た鎖骨、割れた腹筋、そそり上がるソレすらも全てが美しかった。いつもはそれらが服で覆われ紳士的に見えてたが、こうしてみると全然違った。
(めちゃめちゃ雄だな…)
男女問わず惹き付けるであろう体に、例外なく見惚れてしまう。
「フィ、ン…、んっ、ふっ、ンン…っ」
腰を抱かれ頬に手を添えられながらキスされればあっという間に体も心も溶かされた。本当はちょっと手で擦って腕から逃げ出すつもりだったのに…逆に捕まってしまった。
(だめだ、もう考えらんねえ…)
スイッチが入ったフィンの腕の中で溺れたようにキスをする。
「おいコラア!てめえらの世界に入ってんじゃねえよ!」
イラつくソルに片手を奪われ、熱くなったそれを握らされた。あまりの固さにギョッとする。
「ひっ、…っ、んっ、なん、で」
俺の体はフィンの方を向くように抱かれているし手足は抵抗に使えない。逃げようにも腰を抱くフィンの腕が許さないだろう。という事はフィンがソルの暴走を止めるしかないのだが、
「…」
フィンは視線だけで確認した後、また胸への愛撫に戻ってしまう。
「ふぃ、んっ…!な、に、して…!」
どうしてソルを止めないのかと目を見開く。確かに「俺」が「ソルの体」に「触れる」のは禁じられてない。でも、でもだ。
(これがアウトじゃないって意味わかんねえよ…!)
普通ダメだろ。恋人以外のもの触るのは。必死にフィンの意図を読み解こうとするが溶けきった頭では大した思考なんてできない。混乱する頭は置いてけぼりで、フィンの指は胸の次に勃起した俺のにも手を這わせてくる。
ぐちゅぐちゅ
「んっ、ハア、あぁ…っ、うあっ、ハア、あ、くうっ…」
先走りを塗り広げながら擦られ、やっと与えられた直接的な刺激に体が歓喜するのがわかる。何より、フィンの熱い掌に触れられるだけで腰が溶けそうな程気持ち良い。待ち望んでいた熱だ。
「は、あああ…っ」
ソルのを握らされている感触も一瞬で消えてしまうほど、圧倒的な気持ちよさだった。オレンジの瞳は一秒とそらす事なく俺の体に向けられている。見てる。フィンが、俺を見ている。そう思うと喉が無性に乾き、どうしようもなくなった。
「ん、…あ…、フィ、ン…」
フィンの腕を軽く引っ掻いて伝えた。早くくれ、と。すると、ずっと表情を崩さなかったフィンがすっと眉をひそめて、小さく舌打ちした。
「へえ~てめえもそんな顔するんだなあ?お綺麗モードが抜けてやっと可愛げがでてきたじゃねえの」
ソルが俺の肩に顎をのせてくくっと喉を鳴らす。それから俺の手を自分のとひとまとめにして擦り上げ、頬に口付けてくる。どれもこれもギリギリではあるがちゃんとルールは守ってる。
「…」
フィンはそれを黙殺して俺に口付けた。お前にはできないだろう、と見せつけるように深々と噛みつけ、ねっとりと舌を絡ませる。
「ふ、っンンッ、、んう…う、あっ、んん…!」
前を刺激されながらのキスは反則だ。気持ち良すぎてすぐにイってしまう。フィンのも気持ちよくさせてやりたいのに、体からはどんどん力が抜けて自分の思い通りにいかなくなる。ただ与えられる気持ちよさに喘ぐ事だけの体が情けなかった。
「チッ」
ソルは俺の手ごと握りこむ力を強めた。こんなに強くしたら痛いだろうにと視線だけ横に向ければ
じっ
全く知らない男がそこにいた。全身をずぶ濡れにして、銀色の瞳に冷たい光を灯す男が、こちらを食い入るように見ている。狼男でもなければソルでもない。ただ俺に欲情してる男の姿を見て、冷水を浴びせられたように理性が呼び戻された。
「んんーっ、ふっ、うう!んッ!ンンッ!」
フィンの胸を必死に押し返した。今すぐここから逃げたい。見られたくない。恐怖すら感じる程の羞恥心に苛まれた俺は
ガリッ
口の中に入り込む舌に歯を立てた。
「っ…、ライ…」
「はあっ、はあっ、ごめ、っん、っ、…――うわっ!?」
腰を掴まれぐるりとソルの方に向かされた。急な動きに驚いていると背中を押され前のめりになる。ソルの腕が支えるように肩を掴んだが、目の前に固く勃ちあがったそれが現れて喉の奥で声なき悲鳴が溢れた。なんで、と首だけで振り返れば
「そんなに奴が気になるなら舐めてやったらいい」
冷たく見下ろすフィンと目が合う。オレンジの瞳には煮えたぎる“何か”が燃えていた。それが怒りなのか、嫉妬なのか…興奮なのかわからなかった。今の俺にわかるのはただ一つ。
(目が…据わってる…)
初めて見るキレっぷりに「これヤバイやつなんじゃ」と恐怖したところで逃げられるわけもなく。
「ライがしたいのなら私は止めないし…ルールに定めるつもりもない」
「はあ??何言っ…っんぶ、ンンうう~っ?!」
「くく、ラッキー」
言い返そうと開いた口にソルのが入ってきた。一瞬の迷いもなく髪を掴んで引き寄せたソルを信じられない気持ちで睨みつければ
「んな怖い顔すんなよ。さっきみてえに快楽に溶けてた方が楽だぜ?」
後頭部と顎を手で固定しながら自由に動く指先で耳を撫でてくる。せめて口の中のものを追い出そうと舌を這わせたが、先走りに混じって苦い味がするだけ。無力さに打ちのめされる。
「ううっ!んッ!ケホッ、んぐっ、ふっ、んう…!!」
「変なタイミングで理性戻っちまって可哀想になあ。ま、勃ったままだしてめえも興奮してるんだろ?愛しの恋人サマが許可してくれたせっかくの寝取りプレイだもんなあ?くくっライも楽しもうぜ」
「んんん…っ!!」
(んなの楽しめるか!!)
上目遣いに睨み付ければソルはニヤリと笑って喉を突いてきた。苦しいし痛いしで最悪だ。なんでこんな事をさせるのかとフィンを問い詰めたいが後ろを振り向くこともできない。せめて、と縋りついていたソルの太ももに爪を立てた。
(なんでこんな…、何がしてえんだよっフィン…!)
ソルのを咥えさせながら、俺に触れてくる手は驚くほど優しくて、甘いのだ。なんでこんなに優しくするのにソルの好きにさせてるのか、訳がわからない。実はこういう趣味があったのだと暴露された方がまだ気が楽になるのに。
「んああっ…!!そこ、やめっ、んぐうー…っ!」
フィンの指によって前後を同時に刺激され背中がのけぞった。口から抜けかけたものをソルの手が髪を掴んで角度を調節して入れてくる。上顎を擦りながら飲み込まされると背中が粟立ち、とろとろと先走りが溢れた。
「ああっ、んくっ、やっ、だ、もっ、ンンンっん!ほん、と、っアアアッ…っ!」
すでに波が何度もきていたが限界だった。俺よりも俺の体をよく理解しているフィンの指先が前に回り込んでくる。力を込めて擦り上げられれば呆気なく終わりが訪れた。
「くっ、あっ、んああーー…っ!」
前からドクリと溢れ、脳が痺れる程の快感が押し寄せてくる。白く濁った液体はお湯に落ちる前にフィンの手によって受け止められた。それにホッとしつつ、視界を白く染める程の気持ちよさに震える。
「は、ふっ、うあっ…なに、んん、っ…」
ソルの手が顎を掴み上を向かせる。次の瞬間、熱い飛沫が飛んできた。とっさに目を瞑ったが顔にどろりとした液体がかけられる。こいつ、顔射までやりやがって。あとで三発殴る。いや股間蹴ってやる。
「ほら、あーん」
「うあ…んっ、ンンッ?!」
俺の物騒な内心を知ってか知らずか、ソルのが唇を割るようにして入ってきた。どろどろと残りの精液を舌の上で出される。独特の苦みに吐き気がするがお湯に吐くわけにもいかず嫌々飲み込んだ。喉で出してくれれば味を感じずにすんだのにつくづく性格の悪い奴だ。反抗するように軽く歯を立ててやれば、満足げなため息が降ってきた。
「ハッ、最高」
ソルが乱暴に頭を撫でてくる。銀色の瞳が柔らかく溶けていて少しだけいつものソルに戻っていた。それにホッとしたところでフィンの腕がぐるりと回り込んできた。
「んな、あっ、うわっ!」
フィンの胸板にもたれるようにして膝の上に座らされた。フィンのが背中に押しあてられ、その熱く固い感触にゴクリと喉を鳴らした。
「チッ!んだよ、もう一ラウンドやらせろよ」
「だめだ」
「顔射まで許しといて意味わかんねえんだけど。…。あー、はいはい、わかったっつの」
こちらからフィンの表情は見えなかったが、俺の後ろが見えているソルが速攻食い下がるのをやめたので色々と察した。
(み、見たくねえ…)
怖い。先程の目の据わってるフィンを思い出して身震いする。
「仕方ねえなあ…ここで見張っててやるからあんまライをいじめんじゃねえぞ」
「お前に言われるまでもない」
「はっ!どうだかな!てめえ、今すげえ面してんぜ」
俺達から2m程離れてから後ろに手をついたソルが苦笑しながら言う。すげえ面って。そんな事を言われたらますます振り向く気になれない。どうしよう、このまま壊されたりしないよな、と青ざめていると
「――だめよ」
カタン、と固いものがぶつかる音がした。グレイが酒をお盆に戻した音だ。やっと止めてくれる気になったのかと目を輝かせる。
(てかまだ飲んでたのかよ)
こんなガッツリ乱交(身内)見ながらよく飲めるな。ある意味ソルと同じかそれ以上に趣味が悪い。内心毒づいていると、グレイがお湯の中を歩いて、フィンに抱かれたままの俺に顔を寄せてきた。
「ひっ、ん、え?!何、してっ…」
ぺろぺろと俺の顔についたソルの精液を舐めとっていく。その行為自体に刺激は無くても、器用に動く舌が精液を絡ませながら口の中に戻っていく様はあまりにも目に毒だった。
「ご馳走サマ」
ぺろりと舌なめずりして離れていく。まるで今までずっと眠っていたのかと思えるほど生き生きとしてる姿をみて、俺はやっとグレイの本性を知った。
(インキュバスってマジだったのか…)
唯一の救いはその下半身が催してなかった事だ。これでグレイの相手もさせられていたら帰らずの湖に突っ込んで死んでやるところだった。
「ふふ」
妖艶で美しい悪魔が顔を近づけてくる。食われる、一瞬そう思ったが
「大丈夫、仕事仲間には手を出さない主義だから」
俺にだけ聞こえる音量で囁かれた。女っぽい口調じゃない。低く滑らかで淡々とした声音にゾクりと鳥肌が立った。これが本来のグレイなのかと目を見開いた。グレイは驚く俺の頬をつねって、何事もなかったかのように上体を起こす。
「フィン、それ以上はやめときなさい。ライはまだ後ろ使えないんダカラ」
いつもの調子に戻ったグレイが呆れながら言う。なんでそれを、と思ったが事件から逆算すれば傷の治りなど容易に想像できるだろう。動揺をなんとか飲み込んでフィンの反応を待つ。
「…グレイ」
フィンが短く低く唸った。邪魔をするなと言わんばかりの声音にゾクリと恐怖を抱いた。グレイは妖艶な笑みを崩さず、俺の後ろにいるフィンと数秒睨み合った。それから…おもむろにため息を吐く。
「はあ…これはもうダメネ…」
「ダメだろうなあ、くくっ」
グレイとソルが同時に頷く。それから二人してお湯から出てしまった。
「あ、おい…!」
置いていくなよと手を伸ばすがグレイは苦笑を浮かべるだけだった。
「ゴメンナサイ、これ以上うるさくするとあんたの後ろの男に焼き殺されそうだから退散しとくワ」
「はああ???」
「一応外で待機しててあげるから何かあったら呼ぶのヨ~」
酒の乗ったお盆を片付けながら「頑張って★」と口パクで言ってくる。何が頑張れだ。
(てか、なんで霧使わないんだよ??)
霧なら一瞬で黙らせられるのに、と大混乱のまま首を振る。そんな俺の頭をぽんぽんとソルが撫でていく。
「オレものぼせそうだし出るわ。じゃ、殺されんなよお」
と不穏な言葉だけ残して二人は大浴場を去ってしまった。
「は~イケメンが善がる姿って酒の肴に最高ネ~」
「ちょ!グレイっ!俺を守るんじゃねえのかよ?!」
「大丈夫大丈夫。本当におバカちゃんタチが暴走しかけたら止めてあげるカラ」
「もう十分暴走しっ、ひっ!やめ!触んな!」
「ここは?」
「だめだ」
ソルに腰骨を撫でられ、フィンが即座に引き剥がした。二人にとっては確認作業でも俺にとっちゃ一つ一つが確かな刺激となっている。わりと本気の力で二人の手首を掴んで煩わしい動きを止めさせた。
「待てって!二人と、もっ!くっ、はあ…あっ!ちょっ!」
二人は自由な方の手で互いを牽制し合いながらどんどん触れてくる。内ももや脇腹、背中…どこも性感帯とは言いにくい微妙な場所だが、甘く痺れる刺激は積もり積もって確かな快感となっていく。だめだ。気持ちいいと認めたら速攻落ちる。必死に二人の手を払いのけた。
「さわんな!うあっ、このっ…!」
「ここはー?」
「だめだ」
「そこっ、ひっ!?」
「ここは」
「だめだ」
「はあ、はっ、ん、もう…全部、ダメで、いい、っ!」
こんな頭のおかしい確認作業今すぐやめてほしい。どうして同僚と友人の前で醜態を晒さなくちゃいけないんだ。
(全部禁止でいいだろうが…!!)
背中側のフィンに助けを求めた。
「ライ。耐えてくれ。私も全部禁じてしまいたいが…無駄に抑圧させると反動が怖いのも事実だ。ある程度自由にさせて飼い殺すのが一番良い。そのためにも、ルール作りは必須だ」
「んなのっ、口にしなくても、わかんだろ…っ」
恋人以外は触ってはいけない部位とか、これ以上は倫理的にアウトとか。普通に考えたらわかるだろう。そう食い下がるが…頭を撫でる手も、腰を抱く腕も解かれなかった(甘い抱擁に見えて身動きが取れない形で固定されてる)。
「脳みそが下半身にある駄犬に人の言葉は難しいだろうからな。こうして直接教えるのが合理的だ」
「はああ??あっ、ちょっ!」
「ワンワン」
ソルがふざけた調子で犬の振りをしてくる。ぺろりと頬を舐められ、そのまま首まで舌を這わせてきた。温泉で温まった皮膚は敏感に反応してしまいゾクゾクと快感が駆け上がってくる。
「ひっ、んんん…っ」
噛まれたり我慢させられたりで散々だった体には甘すぎる刺激だ。フィンにもたれながら震えてると、彫刻のように美しい手がソルの額を押し返す。肌に触れる唇を無理やり引き剥がした。
「首を舐めるのも禁止だ」
「あー?」
「噛むのは全ての部位で禁止とする」
「チッ、ウゼエー」
そういってソルはぺろりと舌なめずりした。顔を近づけてきて、キスされる、と構えれば…鼻や頬にちゅ、ちゅっと口付けられる。ちゃんとルールを守った形の、普段の言動からは考えられない優しすぎる口付けに動揺した。
「ふ、あ…?」
予想外の甘さに拒絶する事も忘れてソルを見つめる。
「かーわいい顔」
くくっと笑いながらちゅっと瞼に口付けられる。その刺激に震える事しかできない俺は、細く骨ばった指先で胸を撫でられ、堪らず声が出る。
「だめだ」
胸を弄る指先をフィンが取り上げた。思いっきり舌打ちしてソルの体が離れていく。ホッと胸を撫で下ろしていると斜め前の方向から声がかけられた。グレイだ。
「あらあら、胸は診察とかで触れられる事もあるんじゃない?」
酒に口をつけながらフフっと怪しい笑みを浮かべるグレイ。フィンは目を細めてそちらを見た。
「診察…病院の医者か」
「そうそう。それに、そもそもライって」
一度言葉を切ったグレイは手元の酒を飲み干して前屈みになる。
じゅるるっ
酒が染みた口で胸を吸われた。
「アアっ…?!、はっ、うあっ」
強く吸いあげて敏感になった所を舌で舐め上げられれば痺れるような刺激が背中を走っていく。だがそれを快感に繋げるのはできず、ただただ呼吸がしにくいのと恥ずかしさで爆発しそうだった。
「ほら、胸じゃあまり感じないっぽいし、乳首だけ禁止しとけば大丈夫ジャナイ?」
胸についた唾液を指先で拭いながら再び酒の元へと戻っていくグレイ。いや、淫魔。もう淫魔でいい、こんな男。俺よりも更に衝撃を受けていたフィンがハッと我に返って両手で抱え直す。
「グレイ!!私の大切なライを食い物にしないでくれっっ!」
「えー?仕事仲間としても同居人としても大切にしてるつもりヨ~?それに横取りは趣味じゃないワ~」
「くくっ!とかいってあいつ“自分から求めるようになれば横取りにならない”とか言ってしれっと奪ってくるぜ?」
「なっ!!!」
「もー失礼しちゃうワネ~」
と言いつつ否定しないグレイにフィンの鋭い視線が向けられる。珍しくこの二人がバチバチに睨み合っている事に他人事のように驚いた(グレイは笑っているけど)。フィン達の意識がそれた瞬間、今の内だとソルの手が俺の腹に添えられた。腹筋をなぞるように撫でていき、やがて勃ちあがりかけた俺のものへと伸びた。
ぐちゅり
先端を掌で包むように擦られ、びくりと肩が震える。逃げようにもフィンの両手で抱かれ自由がない。
「ああっ…!ば、かっ!んくっ、フィンッ」
俺の声に反応するようにフィンがソルの弄る手を取り上げた。ミシミシと骨が軋むほど強く手首を掴む。
「んだよ、ここもだめかぁ?」
「だめに決まっているだろう。殺されたいのか」
「けっ、擦り合いもダメかよ」
「当たり前だ。ライの性器に触れる事は許さない。前も後ろも全て禁じる」
「口で舐めんのはぁ?」
「だめだ」
焼き殺すぞと言わんばかりの気迫にソルは渋々体を引いた。
「チッ、つまんねえな。ライが欲求不満で泣いてもしらねえぞ」
「私が全て満足させるから問題ない」
「へえー?じゃあ、てめえがライを持て余させる事があったら、例外としてルール撤廃するって事にしようぜえ?絶対満足させる自信があるなら関係ないしいいだろお?なあ、恋人サマァ?」
「…いいだろう」
(いいのかよ?!)
「もしもライが持て余す事があれば、その期間はルールを除外する」
「はっ!今の言葉、ぜってえ忘れんなよ」
内心驚きつつ「それだけ満足させる自信があるのか…」と顔が赤くなる。正面にいたソルが目を細めつつ、俺の右手を拾い上げて指先に口付けた。ちゅ、ちゅっと指先をついばんでからぺろりと掌を舐め上げる。だめだ。さっきから甘い刺激ばかりで頭が混乱してきた。その混乱を上塗りするようにソルが指の間の部分を舐め上げてくる。ぞくりと身震いした。
「ん、はっ、う…っ、ソル…っ」
「はー、入れてえなあ」
「だめだ」
「ウゼエな、わかってるっつの。喋んな、萎える」
「なら今すぐに萎えさせろ。視界に入る度不快になる」
「アア??そりゃこっちの台詞だわ!ンなガチガチにしといて冷静ぶってんじゃねえ!!つーか絶対入んねえだろそれえ!」
海外サイズじゃねえかと悪態をつくソルのも十分デカいのだが、俺にとっては後ろのものの方が興味がある。なんだかんだ最近は俺ばっか触られていてフィンのを見れてない。
(見たい…触りたい)
しかし俺の体はフィンの両腕によって拘束するように固められていた。
(そうだ…)
少しだけ動かせる方の腕を捻りながら背中に回した。指先で辿りながら熱くて固いそれにたどり着くと耳元で小さく吐息が漏れた。
「ライ…」
窘めるように囁かれた後手首を掴まれるがぎゅっと掌に力を込めて握り込んだ。腕を離せ、正面を向かせろと誘うように手を動かせばフィンの両手が拘束の形から抱擁のものに変わる。
「わっ、ん、あ…」
ザバっとお湯からすくいだされ、浴槽の縁に腰掛けたフィンの膝の上に乗せられた。フィンと正面から見つめ合い呼吸が止まる。興奮で色を濃くさせたオレンジの瞳に、濡れて張り付く白金の髪、くっきりと浮き出た鎖骨、割れた腹筋、そそり上がるソレすらも全てが美しかった。いつもはそれらが服で覆われ紳士的に見えてたが、こうしてみると全然違った。
(めちゃめちゃ雄だな…)
男女問わず惹き付けるであろう体に、例外なく見惚れてしまう。
「フィ、ン…、んっ、ふっ、ンン…っ」
腰を抱かれ頬に手を添えられながらキスされればあっという間に体も心も溶かされた。本当はちょっと手で擦って腕から逃げ出すつもりだったのに…逆に捕まってしまった。
(だめだ、もう考えらんねえ…)
スイッチが入ったフィンの腕の中で溺れたようにキスをする。
「おいコラア!てめえらの世界に入ってんじゃねえよ!」
イラつくソルに片手を奪われ、熱くなったそれを握らされた。あまりの固さにギョッとする。
「ひっ、…っ、んっ、なん、で」
俺の体はフィンの方を向くように抱かれているし手足は抵抗に使えない。逃げようにも腰を抱くフィンの腕が許さないだろう。という事はフィンがソルの暴走を止めるしかないのだが、
「…」
フィンは視線だけで確認した後、また胸への愛撫に戻ってしまう。
「ふぃ、んっ…!な、に、して…!」
どうしてソルを止めないのかと目を見開く。確かに「俺」が「ソルの体」に「触れる」のは禁じられてない。でも、でもだ。
(これがアウトじゃないって意味わかんねえよ…!)
普通ダメだろ。恋人以外のもの触るのは。必死にフィンの意図を読み解こうとするが溶けきった頭では大した思考なんてできない。混乱する頭は置いてけぼりで、フィンの指は胸の次に勃起した俺のにも手を這わせてくる。
ぐちゅぐちゅ
「んっ、ハア、あぁ…っ、うあっ、ハア、あ、くうっ…」
先走りを塗り広げながら擦られ、やっと与えられた直接的な刺激に体が歓喜するのがわかる。何より、フィンの熱い掌に触れられるだけで腰が溶けそうな程気持ち良い。待ち望んでいた熱だ。
「は、あああ…っ」
ソルのを握らされている感触も一瞬で消えてしまうほど、圧倒的な気持ちよさだった。オレンジの瞳は一秒とそらす事なく俺の体に向けられている。見てる。フィンが、俺を見ている。そう思うと喉が無性に乾き、どうしようもなくなった。
「ん、…あ…、フィ、ン…」
フィンの腕を軽く引っ掻いて伝えた。早くくれ、と。すると、ずっと表情を崩さなかったフィンがすっと眉をひそめて、小さく舌打ちした。
「へえ~てめえもそんな顔するんだなあ?お綺麗モードが抜けてやっと可愛げがでてきたじゃねえの」
ソルが俺の肩に顎をのせてくくっと喉を鳴らす。それから俺の手を自分のとひとまとめにして擦り上げ、頬に口付けてくる。どれもこれもギリギリではあるがちゃんとルールは守ってる。
「…」
フィンはそれを黙殺して俺に口付けた。お前にはできないだろう、と見せつけるように深々と噛みつけ、ねっとりと舌を絡ませる。
「ふ、っンンッ、、んう…う、あっ、んん…!」
前を刺激されながらのキスは反則だ。気持ち良すぎてすぐにイってしまう。フィンのも気持ちよくさせてやりたいのに、体からはどんどん力が抜けて自分の思い通りにいかなくなる。ただ与えられる気持ちよさに喘ぐ事だけの体が情けなかった。
「チッ」
ソルは俺の手ごと握りこむ力を強めた。こんなに強くしたら痛いだろうにと視線だけ横に向ければ
じっ
全く知らない男がそこにいた。全身をずぶ濡れにして、銀色の瞳に冷たい光を灯す男が、こちらを食い入るように見ている。狼男でもなければソルでもない。ただ俺に欲情してる男の姿を見て、冷水を浴びせられたように理性が呼び戻された。
「んんーっ、ふっ、うう!んッ!ンンッ!」
フィンの胸を必死に押し返した。今すぐここから逃げたい。見られたくない。恐怖すら感じる程の羞恥心に苛まれた俺は
ガリッ
口の中に入り込む舌に歯を立てた。
「っ…、ライ…」
「はあっ、はあっ、ごめ、っん、っ、…――うわっ!?」
腰を掴まれぐるりとソルの方に向かされた。急な動きに驚いていると背中を押され前のめりになる。ソルの腕が支えるように肩を掴んだが、目の前に固く勃ちあがったそれが現れて喉の奥で声なき悲鳴が溢れた。なんで、と首だけで振り返れば
「そんなに奴が気になるなら舐めてやったらいい」
冷たく見下ろすフィンと目が合う。オレンジの瞳には煮えたぎる“何か”が燃えていた。それが怒りなのか、嫉妬なのか…興奮なのかわからなかった。今の俺にわかるのはただ一つ。
(目が…据わってる…)
初めて見るキレっぷりに「これヤバイやつなんじゃ」と恐怖したところで逃げられるわけもなく。
「ライがしたいのなら私は止めないし…ルールに定めるつもりもない」
「はあ??何言っ…っんぶ、ンンうう~っ?!」
「くく、ラッキー」
言い返そうと開いた口にソルのが入ってきた。一瞬の迷いもなく髪を掴んで引き寄せたソルを信じられない気持ちで睨みつければ
「んな怖い顔すんなよ。さっきみてえに快楽に溶けてた方が楽だぜ?」
後頭部と顎を手で固定しながら自由に動く指先で耳を撫でてくる。せめて口の中のものを追い出そうと舌を這わせたが、先走りに混じって苦い味がするだけ。無力さに打ちのめされる。
「ううっ!んッ!ケホッ、んぐっ、ふっ、んう…!!」
「変なタイミングで理性戻っちまって可哀想になあ。ま、勃ったままだしてめえも興奮してるんだろ?愛しの恋人サマが許可してくれたせっかくの寝取りプレイだもんなあ?くくっライも楽しもうぜ」
「んんん…っ!!」
(んなの楽しめるか!!)
上目遣いに睨み付ければソルはニヤリと笑って喉を突いてきた。苦しいし痛いしで最悪だ。なんでこんな事をさせるのかとフィンを問い詰めたいが後ろを振り向くこともできない。せめて、と縋りついていたソルの太ももに爪を立てた。
(なんでこんな…、何がしてえんだよっフィン…!)
ソルのを咥えさせながら、俺に触れてくる手は驚くほど優しくて、甘いのだ。なんでこんなに優しくするのにソルの好きにさせてるのか、訳がわからない。実はこういう趣味があったのだと暴露された方がまだ気が楽になるのに。
「んああっ…!!そこ、やめっ、んぐうー…っ!」
フィンの指によって前後を同時に刺激され背中がのけぞった。口から抜けかけたものをソルの手が髪を掴んで角度を調節して入れてくる。上顎を擦りながら飲み込まされると背中が粟立ち、とろとろと先走りが溢れた。
「ああっ、んくっ、やっ、だ、もっ、ンンンっん!ほん、と、っアアアッ…っ!」
すでに波が何度もきていたが限界だった。俺よりも俺の体をよく理解しているフィンの指先が前に回り込んでくる。力を込めて擦り上げられれば呆気なく終わりが訪れた。
「くっ、あっ、んああーー…っ!」
前からドクリと溢れ、脳が痺れる程の快感が押し寄せてくる。白く濁った液体はお湯に落ちる前にフィンの手によって受け止められた。それにホッとしつつ、視界を白く染める程の気持ちよさに震える。
「は、ふっ、うあっ…なに、んん、っ…」
ソルの手が顎を掴み上を向かせる。次の瞬間、熱い飛沫が飛んできた。とっさに目を瞑ったが顔にどろりとした液体がかけられる。こいつ、顔射までやりやがって。あとで三発殴る。いや股間蹴ってやる。
「ほら、あーん」
「うあ…んっ、ンンッ?!」
俺の物騒な内心を知ってか知らずか、ソルのが唇を割るようにして入ってきた。どろどろと残りの精液を舌の上で出される。独特の苦みに吐き気がするがお湯に吐くわけにもいかず嫌々飲み込んだ。喉で出してくれれば味を感じずにすんだのにつくづく性格の悪い奴だ。反抗するように軽く歯を立ててやれば、満足げなため息が降ってきた。
「ハッ、最高」
ソルが乱暴に頭を撫でてくる。銀色の瞳が柔らかく溶けていて少しだけいつものソルに戻っていた。それにホッとしたところでフィンの腕がぐるりと回り込んできた。
「んな、あっ、うわっ!」
フィンの胸板にもたれるようにして膝の上に座らされた。フィンのが背中に押しあてられ、その熱く固い感触にゴクリと喉を鳴らした。
「チッ!んだよ、もう一ラウンドやらせろよ」
「だめだ」
「顔射まで許しといて意味わかんねえんだけど。…。あー、はいはい、わかったっつの」
こちらからフィンの表情は見えなかったが、俺の後ろが見えているソルが速攻食い下がるのをやめたので色々と察した。
(み、見たくねえ…)
怖い。先程の目の据わってるフィンを思い出して身震いする。
「仕方ねえなあ…ここで見張っててやるからあんまライをいじめんじゃねえぞ」
「お前に言われるまでもない」
「はっ!どうだかな!てめえ、今すげえ面してんぜ」
俺達から2m程離れてから後ろに手をついたソルが苦笑しながら言う。すげえ面って。そんな事を言われたらますます振り向く気になれない。どうしよう、このまま壊されたりしないよな、と青ざめていると
「――だめよ」
カタン、と固いものがぶつかる音がした。グレイが酒をお盆に戻した音だ。やっと止めてくれる気になったのかと目を輝かせる。
(てかまだ飲んでたのかよ)
こんなガッツリ乱交(身内)見ながらよく飲めるな。ある意味ソルと同じかそれ以上に趣味が悪い。内心毒づいていると、グレイがお湯の中を歩いて、フィンに抱かれたままの俺に顔を寄せてきた。
「ひっ、ん、え?!何、してっ…」
ぺろぺろと俺の顔についたソルの精液を舐めとっていく。その行為自体に刺激は無くても、器用に動く舌が精液を絡ませながら口の中に戻っていく様はあまりにも目に毒だった。
「ご馳走サマ」
ぺろりと舌なめずりして離れていく。まるで今までずっと眠っていたのかと思えるほど生き生きとしてる姿をみて、俺はやっとグレイの本性を知った。
(インキュバスってマジだったのか…)
唯一の救いはその下半身が催してなかった事だ。これでグレイの相手もさせられていたら帰らずの湖に突っ込んで死んでやるところだった。
「ふふ」
妖艶で美しい悪魔が顔を近づけてくる。食われる、一瞬そう思ったが
「大丈夫、仕事仲間には手を出さない主義だから」
俺にだけ聞こえる音量で囁かれた。女っぽい口調じゃない。低く滑らかで淡々とした声音にゾクりと鳥肌が立った。これが本来のグレイなのかと目を見開いた。グレイは驚く俺の頬をつねって、何事もなかったかのように上体を起こす。
「フィン、それ以上はやめときなさい。ライはまだ後ろ使えないんダカラ」
いつもの調子に戻ったグレイが呆れながら言う。なんでそれを、と思ったが事件から逆算すれば傷の治りなど容易に想像できるだろう。動揺をなんとか飲み込んでフィンの反応を待つ。
「…グレイ」
フィンが短く低く唸った。邪魔をするなと言わんばかりの声音にゾクリと恐怖を抱いた。グレイは妖艶な笑みを崩さず、俺の後ろにいるフィンと数秒睨み合った。それから…おもむろにため息を吐く。
「はあ…これはもうダメネ…」
「ダメだろうなあ、くくっ」
グレイとソルが同時に頷く。それから二人してお湯から出てしまった。
「あ、おい…!」
置いていくなよと手を伸ばすがグレイは苦笑を浮かべるだけだった。
「ゴメンナサイ、これ以上うるさくするとあんたの後ろの男に焼き殺されそうだから退散しとくワ」
「はああ???」
「一応外で待機しててあげるから何かあったら呼ぶのヨ~」
酒の乗ったお盆を片付けながら「頑張って★」と口パクで言ってくる。何が頑張れだ。
(てか、なんで霧使わないんだよ??)
霧なら一瞬で黙らせられるのに、と大混乱のまま首を振る。そんな俺の頭をぽんぽんとソルが撫でていく。
「オレものぼせそうだし出るわ。じゃ、殺されんなよお」
と不穏な言葉だけ残して二人は大浴場を去ってしまった。
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