ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

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十話

悪巧みコンビ

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「ライが絡まれてないかな~と思って学校サボって神社に顔を出したら、なんでソルジさんまでいるんですか?隠れてるから、なんか気になって俺も一緒に隠れっちゃったし」
「あぁ?オレが神社にいちゃ悪いかよ、狐ヶ崎ユウキ」
「悪いって言うかソルジさん夜行性じゃん。こんな真っ昼間から神社にいるとか不自然すぎ」

 ソルジと呼ばれた方は欠伸をしてライの消えた方を見た。

「別に、大したことじゃねえ。昨日ライの寝顔眺めてたら首に絞め痣があってよぉ。なんかトラブってんのかなーって思って、念のためGPSで追ってたんだわ。そしたら店の準備時間にものすごい勢いで神社に向かってくから…怪しいと思って追いかけてきた」
「うわーGPSとか犯罪だー。てかライの寝顔眺めたってどういう事?ライと寝たんですか?」

 ユウキがガチ真顔で迫ると、ソルジは肩をすくめてみせる。

「ゲームしてたら横で寝落ちしやがったんだ。ベッドに運んでるうちにムラっときてちょっとおかずにした。…でもちゃんとルールは守ったぜ?」
「ルールって…ああ、あの乱交ルールね」
「うるせ、乱交にならねえ為のルールだっつの!」
「やらしい大人の言いそうな台詞ー。乱交防ぐ為ならそもそも接触禁止にするでしょー」
「オレとライはダチだから接触すんのはいーんだよ!!」
「えー?寝顔で抜ける間柄って友達とは言わないと思いますけど~」
「てめえに倫理観についてとやかく言われたくねえんだよサイコパスヤクザ息子が!!」
「あー職業蔑視だ~~~」
「蔑視してんのはヤクザ(職業)じゃなくててめえ(個人)なッ??!」

 二人でキャンキャン言い合った後、ユウキがふうと一息をつく。

「それで、話を戻しますけど、ライの話に出てきた“桐谷さん"…どうします?俺らで社会的に殺しちゃいますー?」

 ソルジならネット上で、ユウキなら戸籍上から消す事ができる。怪しい笑みを浮かべるユウキに対してソルジも一緒になってニヤリと笑った。

「いいねぇ、やっちまうか」
「あはは、俺ら悪巧みコンビで絞め上げれば大体の奴は泣かせられますよー…ってまあノリノリになっちゃった所悪いですけど、今の話、やっぱ無しで」
「アア?ビビってんのか?」
「んなわけないでしょあんな雑魚相手に」
「じゃーなんで引くんだよ。狐ヶ崎のてめえなら簡単に処理できるだろうが。ライをこのまま放置するのか?」

 ソルジが責めるように目を細めた。

「単純に、やれるかどうかの話で言えばやれますよ。ただ、ライが学生の頃の話をしてくれた時、桐谷の名前は出さなかったんです」

 内容が内容なだけに言いたくなかったのだろうが、ライの本音はそこにこそある、とユウキは冷静に指摘する。

「ライが言いたくないと思ってる過去を無理矢理掘り起こして、それを盗み聞きしただけの俺らが踏み荒らすなんて、加害者の桐谷と同じか…それ以上、ライの名誉を傷つける事になる」
「面子を守れ…ってわけか」
「そう。俺らは年下だし、余計、男としての面子は傷つけやすいから…配慮しないと」
「はぁ~。サイコパスの癖にそういう所に目がいくのが嫌になるね~」

 ソルジが感心したように首を振れば、ユウキは笑みだけで応えた。

「仮に、この状況で口を出せるとしたら、現在の恋人である“あの人”ぐらいです。ライの貞操を傷つけられて怒る権利がある」
「とはいっても…不死身野郎は多分、桐谷の存在に気付いてねえぜ?」

 奴は狐ヶ崎ユウキがちょっかいを出してると勘違いしてるからな…と心の中で溢せば、ユウキは心の底から嬉しそうな顔をした。

「それは好都合です。あの人には存分に墓穴を掘ってもらって、ライと不仲になってもらいましょ。別れてくれたら俺が速攻でライを引き取るんで何の問題もありませんし」
「おおー性格悪い~…っつーかてめえどんなお花畑な頭してんだよ。無理やり監禁したてめえの所にライがいくわけねえだろうが」
「いいえ、俺らには特別な愛と絆があるんで、ライは喜んできてくれます」
「は~~そーゆー、愛がありゃ何でもしていいって思ってんの不死身野郎とそっくりで反吐がでるぜ」

 自覚はあるのかユウキはムッと顔をしかめさせてソルジと睨み合った。それから…十秒もせず、馬鹿らしくなった二人がほとんど同時にため息を吐く。

「はあ、こんな所で俺らがいがみ合ってても不毛すぎますし、あの二人が別れるまでは、当て馬同士仲良くしましょ」
「けっ、やなこった。オレはクソガキが大嫌いなんだよ」
「えー俺はソルジさんの事結構好きなのに(わかりやすくて)」
「キッッッッショ」

 中指を立てられたユウキはくすくすと笑った。

「じゃあそろそろ俺も行きますねー」

 そう言ってユウキも神社の入り口へと歩いていく。慌ててソルジがその背中に声をかけた。

「おい!狐ヶ崎ユウキ!話はまだ終わってねえぞ!」
「終わりましたよ。俺らは手を出さない、以上。…ああ、くれぐれもグレイさんには内緒にしてくださいよ。あんな最強チートカードが出てきたら一瞬で場がこんがらがっちゃうんで」

 ライの面子を守るどころではない。それこそ盤がひっくり返るほどの力を持つ魔王なのだから。彼の脅威を誰よりもわかってるソルジが身震いしながら頷いた。

「わかってるっつの!だが…あの様子じゃライの奴、ぜってぇ無茶するからな。オレはオレで、気付かれねえ範囲でフォローするぜ」
「…いいですよ。俺も狐ヶ崎として監視するつもりですし、ついでに桐谷の事も洗っておきます」

 “いざって時、消しやすいんで"

 不穏な事を言い残し、狐ヶ崎ユウキは颯爽と立ち去った。最後に残されたソルジは一人頭を掻き、

「っとに、高校生が吐く台詞じゃねえんだよなぁ…」

 入道雲が浮かぶ青空を仰ぐのだった。


 ***

 神社を飛び出してすぐスマホが充電切れになってしまった俺は、行きよりも急ぐレベルで走って店に戻った。時刻は十六時を過ぎていて、何故こんな時間まで音信不通だったのかと仁王立ちのフィンに問い詰められる。俺は道中考えておいた言い訳をそのまま口にした。

「鳴海に神隠しの件で呼び出されて、神社をくまなく見て回っていたらこんな時間になっていた…と?」
「…ああ」

 フィンは思案するように目を瞑る。電話があった事も、鈴凪神社に行った事も嘘ではない。

「まったく…昨日の今日で、せめて一言ぐらいは残してくれ。本当に心配したんだぞ、ライ」

 心配してくれるフィンを見て胸がぎゅっと痛んだ。こんな顔にさせるぐらいなら、いっそ桐谷の事を全て話してしまいたい、そう思ったが、俺にとっては因縁の相手でも桐谷はただの“人間"だ。“幻獣"の彼らに頼って解決するのは違うだろう。それでは結局、逃げてるのと変わらない。
 (桐谷だけは…俺がケジメをつけねえと)
 そうじゃないと俺は…。

「ライ…?」

 フィンが眉を下げ不安な顔をする。俺を抱きしめようと両手をこちらに伸ばしてきた。

 バッ

「…ライ?」

 とっさに俺は後退って、その手を避けた。

「悪い、…結構汗かいちまってて、だから…シャワー行ってくるわ」

 俺は先ほど桐谷のものを咥え…あまつさえ奴の体液を取り込んでしまった。そんな自分の体は酷く汚いものに思えて、
 (こんな体に…触れてほしくない)
 フィンを避けるようにしてシャワーに駆け込むのだった。
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