オメガで腐男子の僕がBL展開期待して女装風俗店に勤務したら何故かノンケドライバーに惚れていた件

リナ

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一話

情けは人の為ならずってこういう事(ブラコン)

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「えーあーほんとだ。男の子じゃん。綺麗な顔してるからわかんなかった」

 そういってお兄さんが近付いてくる。爪先まで整えられた手を顔の前で合わせて「気分悪くさせちゃったらごめんねー」と謝ってきた。

「い、いえ…」
「俺、シンジって言うんだ。君は?」
「兎太です」
「ウタくんか可愛い名前だな~。あ、そうだ!ここで出会えたのも何かの縁だし、お詫びもかねて、好きなの買ってあげるよ!」
「ええ…?!」

 男の僕に化粧品を選べと言われても困るのだが(BLの為に女装はするけど)、

「なんでもいいよ!ほらほら~!」

 選ばないと解放してもらえなそうな雰囲気だったので、普段から愛用しているボディ用化粧水(千円もしない安い奴)を指した。

「それでいいの?」
「はぃ…兄も使うから…すぐなくなるんで…」
「はは!なるほど!んじゃ買ってくるから待ってて~」

 そう言ってシンジが山ほどいれた商品カゴと共に姿を消す。残された運転手…えっと、甘口と呼ばれてたっけ、と僕は気まずい空気に包まれた。

 (あれ?そういえば…今日、女装してないのによく僕だってわかったな…)

 女装してる僕は自分で言うのもあれだが結構可愛い。素の僕とは別人だし、一度兄と街ですれ違った時も全然バレなかった。メイク慣れしてる女性ならまだしも、男にはまず気付かれない。チラリと甘口の様子をうかがえば、綺麗な起立姿勢でレジの方に向いていた。シンジと仲は良さそうだったがリラックスしてる感じはないので、もしかしたら仕事中なのだろうか。

 (仕事…シンジさんも女装してそうだしそういうのに見慣れてて僕の女装も見抜けた、とか…?)

 甘口の事が無性に気になる。しかも昨日に続いて甘口からは甘い香りが漂ってきて

 (いい匂い…)

 空調の動きでたまにこちらに強く流れ込んでくるのがたまらない。早く次の波がこないかなとそわそわしているとおもむろに甘口が口を開いた。

「あの後は追いかけられませんでしたか」
「えっ…あ!…はぃ…っ」

 キモ男の事だとわかりすぐに頷くが、慌てたせいでそっけない返事になってしまった。

 シーン

 会話終了。

 (クソう!!僕の馬鹿!もっとうまく返せよ…!!)

 と内心地団駄する。年上の物静かな男性との会話なんて僕には難易度が高すぎる。結局何も言えぬままもじもじしてるとシンジが両手に買い物袋をさげて戻ってきた。

「お待たせ~はい!どうぞ!」
「あ、すみません…」
「いいのいいの、おまけに俺のおすすめもいくつかいれといたからよかったら使って!」
「ありがとうございます。大事に使いま…」

 言葉はそこで途切れた。渡された買い物袋には僕も知ってるような有名化粧品がゴロゴロと入っていて、しかもそれらと一緒にどぎついピンク色の


  が入っていたのである。


「??!!」

 BLでは何度も見たことあるが、実物をみるのは初めてだった。色味というか形というか質感というか…とにかく生々しい。大人のオモチャだとわかった瞬間、ぽふんと顔から火が出た。え、え、お兄さん入れる袋間違えてませんか??とあわあわしていると

「あはは、見た目通りの可愛い反応~!!たまら~ん!!」
「シンジさん、からかったら可哀想ですよ」

 シンジが笑いながら抱きついてくる(髭の一切ないつるつるの頬で頬擦りされた)。それを甘口が呆れたように見ていた。

「いいじゃ~ん可愛い子は癒しだよ、癒し~!あ、ちなみにそれほんとにあげるからね、いらなかったら甘口さんにあげていいけど」
「困ります」
「あはは、で、ウタくんこれの使い方わかる?」
「わか、(BL思い出す)…ります」
「あはは!わかるのか~!可愛い顔してやるね~!」


「兎太っ!」


 だだだだ、とエスカレーターを駆け上がる音と共に兄の亮太が慌てた様子で寄ってきた。

「あれ、兄貴スーパーは?」
「遅いから迎えにきたんだよ!」
「あ、そう…うわわ」

 兄は苛立った様子でぐいっと僕の体をシンジから取り返し、睨み付ける。僕が絡まれていると思ったのだろう。兄にはこういう場面を何度も助けられている。今回はそういう絡みではなかったので「兄貴違うよ」と止めに入った。

「二人とも悪い人じゃないから安心して」
「…え、そうなのか?」
「うん。甘口さんには昨日マニメイト帰りに、ち…ナンパから助けてもらって…むしろ恩人なんだ」
甘口倖人あまぐちゆきひとと申します」

 甘口がぺこりと会釈して、兄もすぐに「それは…俺の勘違いで失礼しました」と頭を下げ、自分も名乗った。シンジはニコニコと笑って兄の顔を眺めている。

「弟も相当顔整ってるけど、兄は超絶イケメンだね~これはモテるぞ~」
「シンジさん、口説かないでくださいね」

 甘口の冷静なツッコミをニヤリと笑って返し、兄と僕それぞれに名刺を渡してきた。

「俺、ここの近くで働いててさ。よかったら遊びに来てよ。あ、ウタくん未成年?」
「いえ、今月二十歳になりました」
「じゃあ問題なし!夕方から開いてるからよかったら来てみて~!歓迎するよ~!あ、時間帯によっては結構カオスだからちゃんと指名するんだよー!浮気したら助けにいかないぞ(ニヤリ)…あははっ、なんてね!じゃーねー!」

 シンジが陽気に手を振ってエレベーターに向かう。甘口も「失礼します」と会釈して追いかけた。最後まで礼儀正しいなあと感動してると、横にいた兄がポリポリと頭を掻いた。

「なんというか、キャラ濃い人達だな…」

 それは同意である。まあBLではこれぐらいの個性珍しくもないし僕は気にしな(以下略)


 ***


 買い出しを終え、兄と一緒に近くの牛丼屋で遅めの昼食を食べてると「職場から呼び出された」とか言って兄だけ一足先に帰っていった。社会人って休日まで大変なんだなぁとか思いながらゆっくりとお味噌汁を飲み干し、ふう、と一息つく。

 (これからどうしようかな)

 まだ十五時だし帰るにはもったいない気がする。だからってぼっちの僕にはやれること・いける場所は限られてくる。

 (マニメイトは昨日行ったし何より女装してないからBLを物色できない…)

 マニメイトに行ったのにBLを見れないなんて生殺しもいいところだ。早々に却下し、先ほどの会話を思い出す。


 “夕方から開いてるからよかったら来てみて~"


 シンジにもらった名刺をポケットから取り出して、じーっと見つめる。シンジというカタカナの名前の上には“Bloom"という文字が並んでいて

「ぶるーむ…?」

 多分店名なのだろうが、名刺の端には花の蕾がいくつも描かれていて華やかだった。

 (花屋とかオシャカフェ系のお店?)


「ここに行ったら甘口さんに会えるかな…」


 僕は名刺を握りしめ牛丼屋から出た。


 ***


 兄から「あまり近づくなよ」と言われている有名な歓楽街の中に、例のぶるーむという店はあった。時刻は十六時半。営業時間ではないのか扉にはCloseの看板がかけられていた。土曜日だしよっぽどの事がなければ営業時間になれば開くと思うが

 チカチカ

 店の入り口、いや店全体が、やけに眩しくて戸惑った。煌びやかというか何というか…

 (これキャバクラ?ホスト??)

 シンジさんの名刺がなかったら絶対近付かないであろうギラギラとした雰囲気を店全体、いやむしろ道路や近隣店舗巻き込む形で醸し出してる。「BLです」結界並みの圧だ。いやそれ以上か。

 (勢いで来ちゃったけど…、夜遊びできるお金なんてないし、何よりぼっちコミュ障の僕は場違いすぎる…帰ろう…)


「ああ、待ってたよ。こっちこっち」


 耐えきれず立ち去ろうとした時、防犯カメラで店頭を確認していたのかスーツの男が顔を出してきた。

「え?え?」

 反論する間もなく、腕を掴まれ問答無用で連行される。入ってすぐは煌びやかな店内を進んだが、関係者用の扉を越えるとわりと普通の廊下が続いていてホッとした。いやホッとするのもおかしい話なんだけども。

 ガチャ

 よくわからないまま僕は謎の事務室に連れてこられた。室内には大きめのソファがテーブルを挟む形で二つ置かれ、壁際には簡素なPC机とパイプ椅子があり、角には申し訳程度に観葉植物が置かれている。広すぎず狭すぎない程よい事務室は僕と連行したこの男以外に人はいない。

「荷物はこっちで預かっとくから、頑張って」

 男は僕がずっと抱きしめていたボンキの買い物袋(BL)を持って出ていってしまう。色々なショックで反応できなかったが、一人にされた瞬間我に返る。

 (や、やばい、どうしよう、ここどこ?!何がどうなって僕はここに入れられたの??)

 待ってたよという事は誰かと間違われているようだが「あの!僕、違うんです!」と扉を叩いて訴えてもすでに立ち去った後なのか返事はなかった。僕の荷物を置きに行ってるのだろうか。荷物、そうだ。スマホも一緒に持ってかれてるから兄に電話する事もできない。

 ガチャガチャ

 扉は鍵がかけられていて出られない。一応僕が入ってきた扉とは別にもう一つ扉があるのだが、そちらも鍵をかけられていた。完全密室。だめだ詰んだ。

 (お、落ち着け落ち着け、BLではこんな時どうなってた…どう切り抜けてた…)

 こんな時もBL頼りの僕。ちょっと笑えた。

 ガチャリ

 そんなこんなであわあわしてると、僕が入ってきた方とは別の扉から一人の男が入ってきた。
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