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第一章
第二話
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渡された鍵を見る。
二限も終わり、それ以外授業もない雫は、自宅に帰ろうと思っていた。
そして電車に乗り込んで、晶の家と正反対の方へ向かう。
そして家に着いて、荷物を整理して。
晶にお別れの言葉を告げたかった。
もう大丈夫だと、そう言いたかった。
でも、そんな言葉到底言えなくて。気づけば雫は生活必需品、寝巻きやら普段着やらをボストンバッグに詰めると、家を飛び出していた。
そして、電車に揺られて、到着駅で降りた時に、凄まじい罪悪感に苛まれる。
きっと、晶にだって自分の生活があるのに。
もしかしたら恋人だっているかもしれない。
それなのに、雫の足は、晶の家に向かっていた。
あの笑顔が見たくて。
あの優しい声が聞きたくて。
そして、雫は結局、渡された鍵を使ったのだ。
雫は晶の家に向かう前に、スーパーに寄った。
あの家にはあまりにも食品が無さすぎる。雫の勝手なお節介だったが、何かあった時が心配だったのだ。
できるだけ日持ちする野菜や肉を買っておいて、調味料も買っておく。
家を出る前に塩と砂糖、醤油があることは確認してきた。
そして雫は両手で荷物を持つと、長い道のりを歩き出したのだ。
秋の昼にも関わらず、雫は晶の家に着く頃は汗に塗れていた。
ボストンバックを肩にかけ、両手には大量の食材と水分と調味料。
そしてエントランスに入って、オートロックに鍵を差し込む。
すると自動的に扉が開くから、雫はまた荷物を持ち直して、エレベーターへ乗り込んだ。
三階にある晶の部屋は、廊下の一番奥だった。
荷物を下ろして、覚えた手の暗証番号を機械に打ち込む。
開錠された扉を開けて、荷物を廊下に置いた。
「っ、ふー」
やり遂げた。痛む腰を叩く。これでは、自分の老後が心配だった。
そして自分の荷物を入れたボストンバッグを置くと、扉を閉め、雫はスーパーの袋の中身の解体作業を始める。
今夜は回鍋肉だから、二分の一キャベツとピーマン、細切れの豚肉を買ってきた。
そしてそれから、冷凍食品を冷凍室に入れる。
もし雫の料理を気に入ってくれたのなら、ポトフでも作り置きしておこうと思って買ってきたのだ。本当は生野菜が欲しかったけれど、晶の家に置いていく訳にいかないし、一人で持って帰るには多すぎる。
有名な会社のものだから、一度食べたことがあった。どれもレンジで調理できるし、あのものぐさな晶でもこれなら食べるだろと思ったのだ。
少し値は張るが、晶に不味いものは食べさせたくない。
そして足りなくっているお茶を補充して、食パンを棚にしまって。
袋が空っぽになると、雫は食卓の椅子に座った。
「疲れた……」
流石に荷物が多すぎた。
すると、ふ、と不安が過ぎる。
迷惑でなかったか、と。
回鍋肉が食べたいとは言われた。でもそれは、本気だったのだろうか。
いや、晶が嘘をつくような人間ではないことはわかっている。でもその場を収めるために、食べたいと言ったのではないだろうか。
冷凍食品は要らなかったのではないだろうか。
使い道に困るのではないだろうか。
ぐるぐる嫌な方向に頭が回って、自分の情緒不安具合に笑えてくる。
昨日、雫は人生で最悪の体験をした。
一人彷徨っているところを、非番の晶に声をかけてもらったのだ。
雫の両親は、この世にいない。
雫の祖父母も、もうこの世にはいない。
二限も終わり、それ以外授業もない雫は、自宅に帰ろうと思っていた。
そして電車に乗り込んで、晶の家と正反対の方へ向かう。
そして家に着いて、荷物を整理して。
晶にお別れの言葉を告げたかった。
もう大丈夫だと、そう言いたかった。
でも、そんな言葉到底言えなくて。気づけば雫は生活必需品、寝巻きやら普段着やらをボストンバッグに詰めると、家を飛び出していた。
そして、電車に揺られて、到着駅で降りた時に、凄まじい罪悪感に苛まれる。
きっと、晶にだって自分の生活があるのに。
もしかしたら恋人だっているかもしれない。
それなのに、雫の足は、晶の家に向かっていた。
あの笑顔が見たくて。
あの優しい声が聞きたくて。
そして、雫は結局、渡された鍵を使ったのだ。
雫は晶の家に向かう前に、スーパーに寄った。
あの家にはあまりにも食品が無さすぎる。雫の勝手なお節介だったが、何かあった時が心配だったのだ。
できるだけ日持ちする野菜や肉を買っておいて、調味料も買っておく。
家を出る前に塩と砂糖、醤油があることは確認してきた。
そして雫は両手で荷物を持つと、長い道のりを歩き出したのだ。
秋の昼にも関わらず、雫は晶の家に着く頃は汗に塗れていた。
ボストンバックを肩にかけ、両手には大量の食材と水分と調味料。
そしてエントランスに入って、オートロックに鍵を差し込む。
すると自動的に扉が開くから、雫はまた荷物を持ち直して、エレベーターへ乗り込んだ。
三階にある晶の部屋は、廊下の一番奥だった。
荷物を下ろして、覚えた手の暗証番号を機械に打ち込む。
開錠された扉を開けて、荷物を廊下に置いた。
「っ、ふー」
やり遂げた。痛む腰を叩く。これでは、自分の老後が心配だった。
そして自分の荷物を入れたボストンバッグを置くと、扉を閉め、雫はスーパーの袋の中身の解体作業を始める。
今夜は回鍋肉だから、二分の一キャベツとピーマン、細切れの豚肉を買ってきた。
そしてそれから、冷凍食品を冷凍室に入れる。
もし雫の料理を気に入ってくれたのなら、ポトフでも作り置きしておこうと思って買ってきたのだ。本当は生野菜が欲しかったけれど、晶の家に置いていく訳にいかないし、一人で持って帰るには多すぎる。
有名な会社のものだから、一度食べたことがあった。どれもレンジで調理できるし、あのものぐさな晶でもこれなら食べるだろと思ったのだ。
少し値は張るが、晶に不味いものは食べさせたくない。
そして足りなくっているお茶を補充して、食パンを棚にしまって。
袋が空っぽになると、雫は食卓の椅子に座った。
「疲れた……」
流石に荷物が多すぎた。
すると、ふ、と不安が過ぎる。
迷惑でなかったか、と。
回鍋肉が食べたいとは言われた。でもそれは、本気だったのだろうか。
いや、晶が嘘をつくような人間ではないことはわかっている。でもその場を収めるために、食べたいと言ったのではないだろうか。
冷凍食品は要らなかったのではないだろうか。
使い道に困るのではないだろうか。
ぐるぐる嫌な方向に頭が回って、自分の情緒不安具合に笑えてくる。
昨日、雫は人生で最悪の体験をした。
一人彷徨っているところを、非番の晶に声をかけてもらったのだ。
雫の両親は、この世にいない。
雫の祖父母も、もうこの世にはいない。
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