【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

2章 王太子と公爵令嬢

ドレスアップ

　1週間が光の速さで過ぎ去り、私の社交界デビューの日になりました。お母様もお父様も執務で行けないとの事なので、心細い気持ちも中々にあります。

「今日はいつもより気合い入れて準備しますよ！お嬢様がパーティーの主役になるんです！」
「お嬢様の大人びた魅力を引き出すには落ち着いた色のドレスの方がいいんじゃない、エリカ？」
「絶っ対こっち！お嬢様の可愛らしさを最大限出すの！」
「アクセサリーはどちらにしましょう？」

「え、えぇ……」
侍女の2人も何だか気合いたっぷりです。ですが少し気合い入りすぎな気もしますね。さっきからドレスやら髪型やらで言い合いしてますし。

「お嬢様はどちらがいいですか！？」
　言い合いの末、結局私の意向を尊重することになりました。それでも長時間かかったんですけどね。


「わぁ……！素敵です、お嬢様。」
「本当っ！これなら、パーティーでお嬢様より美しい人はいませんよ！」
「あ、ありがとう……」
　結局、レースを施された紺色のドレス、お父様から貰ったネックレスを付けて、髪はハーフアップにしました。薄めのメイクもしてもらい、何だか自分ではないみたいです。
　この感じ、公爵邸に来て初めてドレスを着せてもらった時の感覚に似ていますね。

「公爵様の元へ行ってはどうでしょう？」
　ポーラさんに言われました。確かに出発の まではまだ時間がありますね。言ってみましょう。

　お父様の書斎、この時間帯はいつもここにいます。
「お父様、失礼します。」
「あぁ、レイ………」
見ていた物から顔を上げたお父様は、目を見開きました。そんなにおかしいでしょうか、この格好は。
「綺麗だよ、レイ。こんなに美しい娘がいるのは、私の誇りだよ。」
「て、照れます……」
「真実だよ。社交界に行かせるのは正直不安だったけど、安心したよ。もうレイは立派な公爵令嬢だな。」
「エメリック公爵家の家門に泥を塗らないよう、頑張ります！」

「肩に力が入っているよ。そう気張らずに、社交界を楽しんで来なさい。」
私は無意識の内に緊張していたようです。少し楽になりました。
「はいっ！精一杯楽しんできます！」


　公爵邸を出ると、玄関には馬車が止まっていました。近くにはフェリーナ先生もいますね。
「先生、行ってきます！」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様。」
フェリーナ先生は何故か不安そうです。馬車に乗り込み、フカフカの椅子に座ります。扉が閉まる本の一瞬、私に向かってフェリーナ先生は呟きました。

「テレネシア公爵令嬢に気をつけてください。」

と。