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第二部1章 隣国へ

馬車の中で

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 隣国とは言ってもハルティアもグレシアナもそこそこの面積がありますから、それぞれの王都間を移動するには馬車で二日くらいかかります。

 という訳で馬車の旅です。今はハルティア王国の国境付近までやって来ました。もうすぐグレシアナ王国に入ります。
「レイはグレシアナに行ったことはあるかい?」
「無いですね。初めてなので楽しみです。ルークはあるんですか?」
「あぁ、友好協定式典とか、貿易視察とかで何度か。」

 王太子の頃の話でしょう。ルークはもっぱら国王の代理として奔走していましたから。
「レイ、髪にゴミが付いているよ。」
「え?どこですか?」
ゴミを取ろうと私は髪に手を触れます。ですが中々見つかりません。あまり手を入れると髪形が崩れてしまいます。せっかくセットしてもらっているのですから、それは避けたいところです。

「ここだよ。」
とルークが私の頭に手を伸ばします。そして、頭をポンポンと撫でたのです。
「なっ…!」
「ふふ、隙だらけだよ。」
続いて、私を抱きしめたのです。
 え、ちょ、ちょっと待ってください!急には心の準備が!私はアワアワとしますが、ルークの腕はそっと、優しく、私を包みます。
「グレシアナにも汚い貴族はいるだろう。あまり油断はしないこと。無防備すぎる。レイは私の婚約者なのだからね。」
「は、はい。」
いつになく積極的なルークに心臓がうるさいです。多分顔も真っ赤になっていることでしょう。

 でも、ルークがそう言うなら私だって同じ思いなんですからね。
「ルークも……」
「ん?」
抱きしめられている姿勢のまま、ルークを見上げます。
「ルークも、他の令嬢に唆されては駄目ですからね。嫉妬してしまいますから。」
私ってわりと独占欲が強いのかもしれません。嫌われないと良いのですが。でも、ルークは頬を赤く染めてはにかんでいました。どうやら嫌われてはいないようです。
「勿論だ。」
 向かい合った椅子に座る時、ルークが何か言っている気がしました。
「っか……すぎる……」
よく聞こえませんでしたけどね。

 そうこう話している内に国境に到着しました。警備の方が馬車の荷物を調べ、入国目的などを聞いてきます。
「ハルティア国王様方御一行ですね。危険物等が無いとは思いますが、規則ですので調べさせていただきます。」
身分で信じきらず、しっかり検査するところが好感を持てます。
 一通り見終えると、警備の方は笑顔で国境の門を開きました。
「ようこそ、グレシアナ王国へ。では、行ってらっしゃいませ!」
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