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3章 結婚式

自己嫌悪

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 芯の強い声が聞こえました。

「彼女は私の婚約者であり、次期王太子妃だ。それを分かっていての言葉なのかな?」

とたんに令嬢たちの顔が真っ青になりました。殿下と私の不仲が嘘であると理解したようです。

「い、いえ!ただ聖女様は社交界に出るのが始めてとお聞きしましたので、緊張をほぐせればと少し冗談を……」
「そ、そうですわ。お気に触ってしまったのならし、謝罪いたします。」

 殿下は眉をひそめ、追い打ちをかけます。
「令嬢と我が婚約者はそれほど親密な仲だったのか!知らなかったよ。いやぁ、あまりに悪意を感じたものだから勘違いしてしまった。すまないね。」
「いえ……」

真っ青な顔のまま、そそくさと令嬢たちは去っていきました。すると身体の力が突如としてガクリと抜け落ち、殿下に支えられました。
「大丈夫か?」
「は、はい。申し訳ありません。」


 何も言い返せなかった事が、ちっぽけな存在なのに聖女になってしまった事が、情けなくて倒れそうでした。
「少し疲れたようだね。控え室に行こうか?」
「いえ、大丈夫です。」
殿下には取り繕ったものの、その後のパーティーについてはほとんど覚えていません。何となく陛下や貴族の方々とお話して、味も分からない食事をとって、楽しそうな顔を作ってダンスをして……

 結局、私は何なのでしょう。よくわかりません。
 このまま誰からも認められた王太子妃になんて、なれる筈がありません。元々聖女として生まれただけ。何の期待もされていないのに、勝手に勘違いしただけ。愚かで卑しい村娘。

 成長したレオナルド殿下は外見はもちろん内面も完璧。対して私は平民によくある容姿で内面は取り繕っただけで、ただの一般人。釣り合いようがありません。
 お優しい殿下は私を見捨てる事は無いでしょう。優しい殿下という名の鳥籠の中で、聖女の称号だけを求められ、これから暮らしていくのでしょう。


 一度陥った自己嫌悪から逃れるのは難しく、私はそれから随分悩まされることになったのです。
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