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164.転売屋は体を動かす
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天高く、馬肥ゆる秋。
それは人にも同じことが言える。
ってか生き物全てか?
「太った・・・。」
「だな。」
「どうしてわかるのよ!」
「だって昨日上に乗って・・・。」
「あーうるさいうるさい!どうせ太りましたよ!」
逆ギレかよとツッコミながら、これ以上からかうと痛い目を見るのでこの辺で止めておく。
「仕方ないのよ、ご飯が美味しいんだもん。」
「今年は何を食べても美味しいですね。」
「そうなの!お肉は脂がのってるし、お野菜は真ん丸だし、エールの出来は最高だし!」
「冷蔵用魔道具も来ましたしね。」
「あれのせいで、あれのせいで・・・。」
「いや、あいつは何も悪くない。ただエールを冷やしていただけだ。」
「わかってるわよ!」
だからなんで俺に当たる。
ダンジョンから戻った後、風呂から上がった後、運動の後、何かにつけてエールを飲んでたらそりゃ太るわ。
美味いのは分かるがその辺はしっかりとセーブしてだな・・・。
「どうしますか?今晩からお食事減らしますか?」
「ううん、減らさない。」
「ならどうするんだ?」
「ダンジョンいってくる。」
「でしたらパニックグラスなんていかがでしょう。」
ダンジョンで体を動かす作戦にアネットがのっかってきた。
「え~、あいつ際限なく湧くんだもん。」
「だからいいんです。この時期のパニックグラスには稀にアルビノ種が混じる事があるんです。ホワイトグラスは薬にも使えますし、なによりいい運動になりますよ。良かったら代謝を上げるお薬用意しますけど。」
「ん、じゃあやる。」
「よろしくお願いします。」
どうやら交渉成立のようだ。
パニックグラスとはダンジョンに生息する草の魔物で、見た目は雑草っぽいが根っこに本体があり歩いてくる冒険者の脚に絡んでくる厄介な奴だ。
動けなくなった所を他の魔物に襲わせ、死骸を食べるという何ともめんどくさい魔物なのだが、雑草の見た目に違わず繁殖力が半端ない。
それこそ、本体を切り損ねるとそこからすぐに生えてくる。
いっきに燃やし尽くすか本体を的確に潰さなければ延々とわき続けてくるらしい。
ただ面白いのは、必要以上に繁殖しない事。
ある一定の数まで増えると、ピタッと止まる。
なので、その習性を利用して端っこで一匹ずつ狩るやり方もあるらしい。
ただ、倒した所で実入りが無いのでそんなことをやるのは暇つぶしぐらいなものだとか。
ちなみに冒険者じゃなくても油を撒いて火を点ければ退治できるそうだ。
もっとも、わざわざそこまで行って燃やす一般人などいないのだが・・・。
「ちなみに二人は大丈夫ですか?」
「何のことですか?」
「・・・増えたな?」
「ですから何のことですか。」
ミラが良くわからないと首をかしげる。
なるほど、自分では認めたくないと。
わかる、わかるぞその気持ち。
俺も自分が太ったことは認めたくない。
認めれば最後痩せる努力をしなければならないからだ。
気付かない、もしくは変わらなければそんな面倒な事はしなくてもいい。
だから気にしないようにしているのだろう。
だが、俺の目はごまかせん。
話題から逃げようとくるりと反転し、台所へ向かうミラ。
それを素早く追いかけ、魅惑の尻を両手で揉んだ。
「うん、良い尻だ。」
「シロウ様、仕事が有りますのでせめて夕食後に。」
「いつも以上にボリュームがある。胸も少し増えたな。」
「・・・ひどい人です。」
「俺はこのぐらいあっても構わないぞ。」
「いいえ、そこまでされて無視できるほど出来た女ではありません。」
パシッっと手で尻を揉む俺の手を払いのけ、鋭い目で俺を睨んで来る。
その表情もまたそそられるなぁ。
って朝から俺もなにやってんだか。
「あ、私は現状維持ですよ。」
「そうみたいだな。」
「この裏切り者。」
「えへへ、最近製薬しながら鍛えてるんです。」
「鍛える?」
「ダンジョンに連れて行ってほしいって言われてるのよ。」
「誰が?」
「私です。製薬に使う薬草なんですけど、やっぱり自分で取りに行って現場で処理した方が効能が上がるので。」
なるほど。
仕事熱心なのは良い事だが、個人的にはあまり危ない事はしてほしくないんだが。
それをアネットに言った所で聞いてくれそうにないけどな。
「エリザを護衛に連れて行けよ、護衛費が浮くからな。」
「え、そこ!?」
「エリザ様なら安心ですしね。」
「まぁあまり深くない所なら大丈夫だけど・・・。」
「だそうだ、無理はするなよ。」
「はい。」
無理に引き留めるぐらいならある程度制限をつけて好きにやってもらう方がストレスも少ない。
それが回りまわって俺に帰ってくるわけだしな。
「で?」
「なんだよ。」
「シロウは太ってないの?」
「俺か?俺は大丈夫だ。」
「本当に?」
「毎晩搾り取られてるからな。」
嘘はついていない。
減りはしていないが増えることも無い。
若いって最高だな。
「ふ~ん。」
「なんだよ。」
「じゃあもっと激しくしても大丈夫なんだなって。」
「お前、あれで遠慮してるのか?」
「当たり前じゃない。フラフラで仕事できなくなったら嫌だもの。」
「・・・ダンジョンでしっかり身体動かして来い。」
今でも結構キツイんだが?
しっかりダンジョンでストレス&運動不足発散してきてもらわないと俺の身体がもたない気がしてきた。
「シロウも鍛えようよ。」
「そうです!ご主人様も一緒に鍛えませんか?」
「鍛えてどうするんだ?」
「そりゃあダンジョンに潜るのよ。」
「俺は今のままでいい。なぁ、ミラ。」
「いえ、シロウ様も少しは鍛えられると良いと思います。」
ここでまさかの裏切り者が追加された。
くそ、さっきの件を恨んでいるのか。
「そうすれば、もっと楽しめますから。」
「・・・ミラも遠慮しているのか?」
「多少は。」
「アネットは?」
「私は別に・・・いえ、ちょっと物足りません。」
そうか。
足りないのか。
そこまで言われちゃ男が廃るってもんだ。
このまま女達にいい顔させたままではいけない。
鍛えなければ。
スポーツの秋ともいうしな。
身体を動かすには絶好の季節だ。
「俺にも代謝を上げる薬をくれ。」
「まずは自分でなさらないと効果が出ませんよ。」
「ぐぬぬ。」
ドーピングは禁止らしい。
「シロウ様、地道に参りましょう。私もお付き合いいたします。」
「俺は今のままでも構わないのだが?」
「私が嫌なのです。やはり、好きな方には素敵な体を見て頂きたいので。」
「あ~!ミラ、ズルい!」
「本当の事ですから。」
「わ、私も頑張ります!」
「アネットまで!」
「お前は頑張らないのか?」
三人の視線を一身に受け、エリザが一瞬たじろぐ。
さぁどう返事する?
「わ、私だってシロウの事が・・・。」
「「「事が?」」」
「好きに決まってるじゃない!」
「って事で、今週から筋トレを開始する。各自目標を定めてしっかりと頑張れ。」
「シロウもよ?」
「もちろんやるからにはしっかりやるさ。とはいえ、いきなりは体を壊すからな。ジョギングから始めるよ。」
ルフを護衛にすれば城壁の周りをまわるぐらいは問題ないだろう。
まずは体力作りから。
筋肉よりも俺に必要なのはそれ一択かもしれない。
「お供いたします。」
「とりあえず今日の夕方からな。朝晩二回、食事の前でどうだ?」
「それがよろしいかと。」
一人よりも誰かとやる方が効率は上がる。
頼もしい?仲間も出来たのでしっかりと自分を追い込んでいこう。
「ではエリザ様、パニックグラスの件宜しくお願いします。」
「任せといて、全部刈り尽くしてくるから!」
「刈り尽くしたらホワイトグラスが出てこないぞ。」
「あ、そうだった。」
「私も鍛えて参加できるように頑張りますね。」
各自目標は決まったようだ。
それに向かってあとは鍛えるのみ。
その後、最初の二日間ほどは筋肉痛に襲われたりもしたが、三日目以降はリズムもわかって来たのでスムーズに事は進んだ。
そして一週間後。
エリザは元の体重に戻り、アネットと一緒にダンジョンへと潜って行った。
そして俺とミラはというと・・・。
「いかがでしょうか。」
「素晴らしい形だ。」
「お褒めに預かり光栄です。」
仕事の合間に尻を揉んでいた。
もちろんそれで済むはずもなく、ダンジョンから戻ってきた二人に白い目で見られたのは言うまでもない。
それは人にも同じことが言える。
ってか生き物全てか?
「太った・・・。」
「だな。」
「どうしてわかるのよ!」
「だって昨日上に乗って・・・。」
「あーうるさいうるさい!どうせ太りましたよ!」
逆ギレかよとツッコミながら、これ以上からかうと痛い目を見るのでこの辺で止めておく。
「仕方ないのよ、ご飯が美味しいんだもん。」
「今年は何を食べても美味しいですね。」
「そうなの!お肉は脂がのってるし、お野菜は真ん丸だし、エールの出来は最高だし!」
「冷蔵用魔道具も来ましたしね。」
「あれのせいで、あれのせいで・・・。」
「いや、あいつは何も悪くない。ただエールを冷やしていただけだ。」
「わかってるわよ!」
だからなんで俺に当たる。
ダンジョンから戻った後、風呂から上がった後、運動の後、何かにつけてエールを飲んでたらそりゃ太るわ。
美味いのは分かるがその辺はしっかりとセーブしてだな・・・。
「どうしますか?今晩からお食事減らしますか?」
「ううん、減らさない。」
「ならどうするんだ?」
「ダンジョンいってくる。」
「でしたらパニックグラスなんていかがでしょう。」
ダンジョンで体を動かす作戦にアネットがのっかってきた。
「え~、あいつ際限なく湧くんだもん。」
「だからいいんです。この時期のパニックグラスには稀にアルビノ種が混じる事があるんです。ホワイトグラスは薬にも使えますし、なによりいい運動になりますよ。良かったら代謝を上げるお薬用意しますけど。」
「ん、じゃあやる。」
「よろしくお願いします。」
どうやら交渉成立のようだ。
パニックグラスとはダンジョンに生息する草の魔物で、見た目は雑草っぽいが根っこに本体があり歩いてくる冒険者の脚に絡んでくる厄介な奴だ。
動けなくなった所を他の魔物に襲わせ、死骸を食べるという何ともめんどくさい魔物なのだが、雑草の見た目に違わず繁殖力が半端ない。
それこそ、本体を切り損ねるとそこからすぐに生えてくる。
いっきに燃やし尽くすか本体を的確に潰さなければ延々とわき続けてくるらしい。
ただ面白いのは、必要以上に繁殖しない事。
ある一定の数まで増えると、ピタッと止まる。
なので、その習性を利用して端っこで一匹ずつ狩るやり方もあるらしい。
ただ、倒した所で実入りが無いのでそんなことをやるのは暇つぶしぐらいなものだとか。
ちなみに冒険者じゃなくても油を撒いて火を点ければ退治できるそうだ。
もっとも、わざわざそこまで行って燃やす一般人などいないのだが・・・。
「ちなみに二人は大丈夫ですか?」
「何のことですか?」
「・・・増えたな?」
「ですから何のことですか。」
ミラが良くわからないと首をかしげる。
なるほど、自分では認めたくないと。
わかる、わかるぞその気持ち。
俺も自分が太ったことは認めたくない。
認めれば最後痩せる努力をしなければならないからだ。
気付かない、もしくは変わらなければそんな面倒な事はしなくてもいい。
だから気にしないようにしているのだろう。
だが、俺の目はごまかせん。
話題から逃げようとくるりと反転し、台所へ向かうミラ。
それを素早く追いかけ、魅惑の尻を両手で揉んだ。
「うん、良い尻だ。」
「シロウ様、仕事が有りますのでせめて夕食後に。」
「いつも以上にボリュームがある。胸も少し増えたな。」
「・・・ひどい人です。」
「俺はこのぐらいあっても構わないぞ。」
「いいえ、そこまでされて無視できるほど出来た女ではありません。」
パシッっと手で尻を揉む俺の手を払いのけ、鋭い目で俺を睨んで来る。
その表情もまたそそられるなぁ。
って朝から俺もなにやってんだか。
「あ、私は現状維持ですよ。」
「そうみたいだな。」
「この裏切り者。」
「えへへ、最近製薬しながら鍛えてるんです。」
「鍛える?」
「ダンジョンに連れて行ってほしいって言われてるのよ。」
「誰が?」
「私です。製薬に使う薬草なんですけど、やっぱり自分で取りに行って現場で処理した方が効能が上がるので。」
なるほど。
仕事熱心なのは良い事だが、個人的にはあまり危ない事はしてほしくないんだが。
それをアネットに言った所で聞いてくれそうにないけどな。
「エリザを護衛に連れて行けよ、護衛費が浮くからな。」
「え、そこ!?」
「エリザ様なら安心ですしね。」
「まぁあまり深くない所なら大丈夫だけど・・・。」
「だそうだ、無理はするなよ。」
「はい。」
無理に引き留めるぐらいならある程度制限をつけて好きにやってもらう方がストレスも少ない。
それが回りまわって俺に帰ってくるわけだしな。
「で?」
「なんだよ。」
「シロウは太ってないの?」
「俺か?俺は大丈夫だ。」
「本当に?」
「毎晩搾り取られてるからな。」
嘘はついていない。
減りはしていないが増えることも無い。
若いって最高だな。
「ふ~ん。」
「なんだよ。」
「じゃあもっと激しくしても大丈夫なんだなって。」
「お前、あれで遠慮してるのか?」
「当たり前じゃない。フラフラで仕事できなくなったら嫌だもの。」
「・・・ダンジョンでしっかり身体動かして来い。」
今でも結構キツイんだが?
しっかりダンジョンでストレス&運動不足発散してきてもらわないと俺の身体がもたない気がしてきた。
「シロウも鍛えようよ。」
「そうです!ご主人様も一緒に鍛えませんか?」
「鍛えてどうするんだ?」
「そりゃあダンジョンに潜るのよ。」
「俺は今のままでいい。なぁ、ミラ。」
「いえ、シロウ様も少しは鍛えられると良いと思います。」
ここでまさかの裏切り者が追加された。
くそ、さっきの件を恨んでいるのか。
「そうすれば、もっと楽しめますから。」
「・・・ミラも遠慮しているのか?」
「多少は。」
「アネットは?」
「私は別に・・・いえ、ちょっと物足りません。」
そうか。
足りないのか。
そこまで言われちゃ男が廃るってもんだ。
このまま女達にいい顔させたままではいけない。
鍛えなければ。
スポーツの秋ともいうしな。
身体を動かすには絶好の季節だ。
「俺にも代謝を上げる薬をくれ。」
「まずは自分でなさらないと効果が出ませんよ。」
「ぐぬぬ。」
ドーピングは禁止らしい。
「シロウ様、地道に参りましょう。私もお付き合いいたします。」
「俺は今のままでも構わないのだが?」
「私が嫌なのです。やはり、好きな方には素敵な体を見て頂きたいので。」
「あ~!ミラ、ズルい!」
「本当の事ですから。」
「わ、私も頑張ります!」
「アネットまで!」
「お前は頑張らないのか?」
三人の視線を一身に受け、エリザが一瞬たじろぐ。
さぁどう返事する?
「わ、私だってシロウの事が・・・。」
「「「事が?」」」
「好きに決まってるじゃない!」
「って事で、今週から筋トレを開始する。各自目標を定めてしっかりと頑張れ。」
「シロウもよ?」
「もちろんやるからにはしっかりやるさ。とはいえ、いきなりは体を壊すからな。ジョギングから始めるよ。」
ルフを護衛にすれば城壁の周りをまわるぐらいは問題ないだろう。
まずは体力作りから。
筋肉よりも俺に必要なのはそれ一択かもしれない。
「お供いたします。」
「とりあえず今日の夕方からな。朝晩二回、食事の前でどうだ?」
「それがよろしいかと。」
一人よりも誰かとやる方が効率は上がる。
頼もしい?仲間も出来たのでしっかりと自分を追い込んでいこう。
「ではエリザ様、パニックグラスの件宜しくお願いします。」
「任せといて、全部刈り尽くしてくるから!」
「刈り尽くしたらホワイトグラスが出てこないぞ。」
「あ、そうだった。」
「私も鍛えて参加できるように頑張りますね。」
各自目標は決まったようだ。
それに向かってあとは鍛えるのみ。
その後、最初の二日間ほどは筋肉痛に襲われたりもしたが、三日目以降はリズムもわかって来たのでスムーズに事は進んだ。
そして一週間後。
エリザは元の体重に戻り、アネットと一緒にダンジョンへと潜って行った。
そして俺とミラはというと・・・。
「いかがでしょうか。」
「素晴らしい形だ。」
「お褒めに預かり光栄です。」
仕事の合間に尻を揉んでいた。
もちろんそれで済むはずもなく、ダンジョンから戻ってきた二人に白い目で見られたのは言うまでもない。
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