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240.転売屋は花を贈る
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例の花は予定通り畑の北側、それも塀の向こう側に植えられた。
塀の向こうにある事で、農作業に従事している皆が被害にあうことは無いし、なにより魔物に対処しやすくなる。
翌日埋められたのを確認しに行くと、早くも自分たちで魔物を捕まえた跡があった。
どうやって捕まえたかは考えない方がいいだろう。
ルフが嫌がる感じも無いので、いい関係を築いていけることだろう。
ちゃんと餌を置くと、翌日以降は近づいても歯を向けられることは無くなった。
それどころかぺこりと頭を下げてくるぐらいだ。
よく見るとなかなか可愛い顔をしている。
新しい仲間が増えた感じだ。
「とはいえ、魔物は魔物だ。気を付けるとしよう。」
「カニバフラワーを植えるって聞いた時は頭がおかしくなったのかと思ったけど、あの魔物ってあぁ言う使い方が出来たのね。」
「種はよく見ましたが、花は初めて見ました。」
「害がないのであれば問題ありません。」
最初は驚いていた女達も現物が気に入ったのか、時々様子を見に行っているようだ。
気に入ってくれて何よりだよ。
「で、ついでにそれを注文してきたのね。」
「ついでじゃない、こっちが本命だ。」
「どうだか。」
「じゃあエリザは要らないんだな?」
「いるってば!」
「エリザ様、素直に欲しいと言えばいいんですよ?」
「わかってるんだけど、理由が理由だし・・・。」
「シロウ様には考えがあっての事です。それに、我々の方が優先順位が高いというのは一目でわかると思いますが?」
三人の前に置かれたのは色とりどりの花束。
それぞれモチーフは変えてある。
イメージカラーはエリザは赤、ミラは青、アネットは黄色だ。
それをこの間の花屋に注文しておいたのだ。
ちゃんとした花で魔物じゃないぞ。
これらの花も全部ダンジョンの奥で見つけてきたそうだ。
この寒い中これだけの花を見つけられるのはそこしかないものなぁ。
ぶっちゃけこれで商売できるんじゃないのか?と思って聞いてみたらズバリその通りだったらしい。
「フィオーレはダンジョンでも有名だから。」
「その有名な花屋に作ってもらったんだ、喜べよ。」
「喜んでるわよ。」
「じゃあ気に入らないのはこれの事か?」
用意した花は四つ。
女達の三つと、それよりも二回りほど小さい最後の一つ。
色とりどりの花で飾られているが、どの花も小さく女達の花束にはかなわない。
誰にやるのかって?
「タトル様のお願いですからご主人様も断れなかったんです。」
「アネットの取引先だからな、恩を売れば売るだけ儲かるって事だ。こんな花束一つで金貨がわいてくるなら喜んで運んでやるさ。」
「ぶぅ。」
「そんな顔するなよ。」
「渡すのがあのレイラさんじゃなかったらこんな顔しないわよ。」
「俺があのナンパ女になびくんじゃないかって?」
「シロウに限ってそんなことは無いだろうけど、向こうはプロでしょ?」
「胸も尻もお前達の方が上なんだから靡く理由はないだろう。」
そう、残りの花はあのナンパ女に渡すためのものだ。
なんでもこの前の一件以降ふさぎ込んでいて商売あがったりらしい。
それで何とかならないかとタトルさんから相談があったんだ。
正確には避妊薬を卸しに行ったときにアネットが話を聞いて、それを俺に教えてくれただけだが・・・。
女ってのはサプライズに弱いからな、ついでに娼館にも恩を売って二重で儲けようというわけだ。
アネットの避妊薬は無事に納品され、かなりの利益を生み出した。
そのお礼も兼ねて一役買ってやろうと思っただけ、なのであのナンパ女にはこれっぽっちも思い入れはない。
なんせ白昼堂々目の前でドレスを引きちぎり裸体を晒してやったんだから、ふつうは怒られるなり賠償請求されるなりされてもおかしくなかった。
だがタトルさんはそれをしなかった。
図に乗ったあのナンパ女にお灸をすえるにはいい機会、そう思ったんだろう。
だがお灸がきつすぎて仕事をしなくなったんじゃお話にならない。
責任は俺にもあるわけだし、その辺も上手く清算したいっていう気持ちも少しはあるわけだよ。
「じゃあ行ってくる。」
「夕飯は作っておきます、お早いお帰りを。」
「わかってるって。」
「じゃあ私も行ってきます!」
「アネットくれぐれもお願いね!」
俺だけだと不安だという事で、アネットも同行することになっている。
この時点で何の問題も無いと思うんだけどなぁ。
まったく、心配性な女達だ。
「作戦は昨日話した通りだ。サプライズで会いに行き花束を渡して元気づける、それで終わり。戻るのが遅かったら支配人に言って俺を呼び出してくれ。」
「すぐに呼びます。」
「そもそもあの女を抱くつもりも抱かれるつもりもない。それはわかってるはずだが?」
「・・・お尻を揉みながら話さなくてもいいじゃないですか。」
「女には満足してる、っていうかこれ以上は身がもたない。」
「お薬処方しましょうか?」
「勘弁してくれ。」
いくらドーピングしても気持ちが乗ってなければ楽しくもなんともない。
好きでもない女を抱くほど、飢えているわけじゃないんでね。
てな感じでアネットと共に竜宮館へと向かった。
「いらっしゃいませ。」
「タトルさんはいるか?」
「ご用件は?」
「うちの薬師が世話になったんでな、そのお礼に来たと伝えてくれ。」
「かしこまりました、どうぞ中でお待ちください。」
受付のおっちゃんは前と同じだった。
俺もアネットの事も知っているだろうが、一応仕事柄聞かなきゃいけないんだろう。
俺を見た瞬間に、『あぁ、あいつね』みたいな表情をしたのを俺は見逃さないぞ。
しばらく入り口横のソファーで待っていると、奥から小走りでタトルさんが戻ってきた。
「これはシロウ様アネット様、ようこそお越しくださいました。」
「アポなしで悪いな、この間の礼をしに来たんだ。」
「お礼、ですか?」
「この間派手にやって以降随分とふさぎ込んでいると聞いてな、一応責任を感じてるんだ。」
「申し訳ありません、シロウ様にそこまで考えさせてしまいまして。」
「っていうのは建前で単純に避妊薬の礼をしに来ただけだ。良い値段で買ってもらったようで感謝している。」
「こちらとしてもあの量を用意して頂けて感謝しています。」
普通は薬のお礼が建前で本音があのナンパ女のご機嫌取り、って感じだろうがそんなわけがない。
あくまでもご機嫌取りはついでだよ。
「で、どうすればいい?」
「レイラは最上階の一番奥の部屋におります、どうぞお好きになさってください。」
「おいおい、一番人気の女を好きにしていいのか?」
「シロウ様でしたら本望でしょう。もっとも、キズをつけるのだけは避けて頂ければ。」
「そっちの趣味は無いし抱くつもりもない。後で請求されても困るしな。」
「どうぞよろしくお願いします。」
深々と頭を下げるタトルさん。
冗談が通じない所から察するにかなり重症なんだろう。
うーむ、ちょいとばかしやり過ぎたか。
階段まで案内されたがそこから先は俺一人だ。
竜宮館は三階建て、一番上まで上がると長い廊下があり、その突き当りがナンパ女の部屋らしい。
さ~て、さくっと終わらせて帰りましょうかね。
ずんずんと廊下を進み、目的の部屋へ。
コンコンと二回ノックする。
さすがにいきなり入るなんて愚行はしない。
それぐらいのマナーは持っているつもりだ。
「誰が来ても相手せぇへんよ、帰って。」
「随分とつれない返事だな、この間は自分で来たくせに。」
「そ、その声は!」
中からどたばたと暴れる音がする。
まるで間男が旦那の帰還に慌てているような感じだ。
まぁ、実際そんな状況見たことも聞いたことないけどな。
しばらくして扉が開き、扉の向こうでレイラ(ナンパ女)が仁王立ちしていた。
若干衣服は乱れ、化粧らしい化粧もしていない。
こっちの方が中々いいじゃないか。
「い、いったい何の用なんや?この間の詫びをしに来たんやったらもう遅いで!」
「まぁそう言うな。ほら、これをやるから機嫌を直せ。」
「ふん、物なんかで私の気が・・・綺麗やんか。」
「だろ、冬にこれだけの花を集めるのは大変なんだぞ。」
「これを私の為に採ってきてくれたんか?」
「集めたのは俺じゃないが依頼したのは俺だ、気に入らないなら持って帰るが?」
「そんなこと言ってへんやんか!返せ言うてももう返さへんからな!」
ふんだくるように花を奪うと後ろを向くレイラ。
気の利く男ならここで抱きしめたりするんだろうが、生憎今日はご機嫌取りだけだ。
さっきも言ったように抱くつもりはさらさらない。
「まぁ気に入ってくれたなら何よりだ。」
「・・・上がっていく?」
「いや、今日はそのつもりじゃないし帰る。」
「ねぇ、なんでなん?この前からどれだけ考えてもわからへん。どうして私じゃアカンの?」
「好みじゃないから。」
「じゃあ好みに合わせるやん。」
「そうじゃないんだよなぁ、俺が好きなのは俺の為にカネを運んでくる女だ。」
「貢げって事?」
「そういうんじゃないんだよな~。」
「じゃあなんやのん!」
おぉ、逆切れしたぞ。
部屋に入っていないので後ろの廊下によく響いたことだろう。
「それを含めてよく考えろ、今は一番かもしれないがあっという間に抜かれるぞ。」
「私が一番や、それは変わらへん。」
「どうだかな。」
そんな風に思っている間は興味ないね。
おせっかいかもしれないが、これも何かの縁だ。
タトルさんの顔もあるしもうしばらくは付き合ってやるとしよう。
「ご主人様、お迎えに上がりました。」
「もうそんな時間か。」
「仕事の話は終わりました、次は15月に二度目の納品の予定です。」
「誰やその女!」
「俺の女に決まってるだろ、お前の使ってる避妊薬を作る薬師だよ。」
「そ、そいつは抱いてるんか?」
「当たり前だろ、俺好みのいい女だ。」
見せつけるようにアネットを抱き寄せ、その尻を揉む。
今更だが俺は胸より尻派だな。
「な、なんでやねん。うちの方が何倍も・・・。」
「よく考えろ。じゃあな、レイラ。」
「あ、名前・・・。」
「アネット行くぞ。」
「はいご主人様。」
クルリと反転しまた長い廊下を進んでいく。
てっきりまた罵倒が飛んでくると思ったが、今回はそうはならなかった。
下に降りると恭しくタトルさんが頭を下げている。
「どうなるかはわからないぞ。」
「十分でございます。わざわざありがとうございました。」
「次の納品の時にまた来る、何かあったらまた連絡してくれ。」
「タトル様失礼します。」
さて、どうなる事やら。
とりあえず頼まれた仕事はしたはずだ。
後はあの女次第だな。
塀の向こうにある事で、農作業に従事している皆が被害にあうことは無いし、なにより魔物に対処しやすくなる。
翌日埋められたのを確認しに行くと、早くも自分たちで魔物を捕まえた跡があった。
どうやって捕まえたかは考えない方がいいだろう。
ルフが嫌がる感じも無いので、いい関係を築いていけることだろう。
ちゃんと餌を置くと、翌日以降は近づいても歯を向けられることは無くなった。
それどころかぺこりと頭を下げてくるぐらいだ。
よく見るとなかなか可愛い顔をしている。
新しい仲間が増えた感じだ。
「とはいえ、魔物は魔物だ。気を付けるとしよう。」
「カニバフラワーを植えるって聞いた時は頭がおかしくなったのかと思ったけど、あの魔物ってあぁ言う使い方が出来たのね。」
「種はよく見ましたが、花は初めて見ました。」
「害がないのであれば問題ありません。」
最初は驚いていた女達も現物が気に入ったのか、時々様子を見に行っているようだ。
気に入ってくれて何よりだよ。
「で、ついでにそれを注文してきたのね。」
「ついでじゃない、こっちが本命だ。」
「どうだか。」
「じゃあエリザは要らないんだな?」
「いるってば!」
「エリザ様、素直に欲しいと言えばいいんですよ?」
「わかってるんだけど、理由が理由だし・・・。」
「シロウ様には考えがあっての事です。それに、我々の方が優先順位が高いというのは一目でわかると思いますが?」
三人の前に置かれたのは色とりどりの花束。
それぞれモチーフは変えてある。
イメージカラーはエリザは赤、ミラは青、アネットは黄色だ。
それをこの間の花屋に注文しておいたのだ。
ちゃんとした花で魔物じゃないぞ。
これらの花も全部ダンジョンの奥で見つけてきたそうだ。
この寒い中これだけの花を見つけられるのはそこしかないものなぁ。
ぶっちゃけこれで商売できるんじゃないのか?と思って聞いてみたらズバリその通りだったらしい。
「フィオーレはダンジョンでも有名だから。」
「その有名な花屋に作ってもらったんだ、喜べよ。」
「喜んでるわよ。」
「じゃあ気に入らないのはこれの事か?」
用意した花は四つ。
女達の三つと、それよりも二回りほど小さい最後の一つ。
色とりどりの花で飾られているが、どの花も小さく女達の花束にはかなわない。
誰にやるのかって?
「タトル様のお願いですからご主人様も断れなかったんです。」
「アネットの取引先だからな、恩を売れば売るだけ儲かるって事だ。こんな花束一つで金貨がわいてくるなら喜んで運んでやるさ。」
「ぶぅ。」
「そんな顔するなよ。」
「渡すのがあのレイラさんじゃなかったらこんな顔しないわよ。」
「俺があのナンパ女になびくんじゃないかって?」
「シロウに限ってそんなことは無いだろうけど、向こうはプロでしょ?」
「胸も尻もお前達の方が上なんだから靡く理由はないだろう。」
そう、残りの花はあのナンパ女に渡すためのものだ。
なんでもこの前の一件以降ふさぎ込んでいて商売あがったりらしい。
それで何とかならないかとタトルさんから相談があったんだ。
正確には避妊薬を卸しに行ったときにアネットが話を聞いて、それを俺に教えてくれただけだが・・・。
女ってのはサプライズに弱いからな、ついでに娼館にも恩を売って二重で儲けようというわけだ。
アネットの避妊薬は無事に納品され、かなりの利益を生み出した。
そのお礼も兼ねて一役買ってやろうと思っただけ、なのであのナンパ女にはこれっぽっちも思い入れはない。
なんせ白昼堂々目の前でドレスを引きちぎり裸体を晒してやったんだから、ふつうは怒られるなり賠償請求されるなりされてもおかしくなかった。
だがタトルさんはそれをしなかった。
図に乗ったあのナンパ女にお灸をすえるにはいい機会、そう思ったんだろう。
だがお灸がきつすぎて仕事をしなくなったんじゃお話にならない。
責任は俺にもあるわけだし、その辺も上手く清算したいっていう気持ちも少しはあるわけだよ。
「じゃあ行ってくる。」
「夕飯は作っておきます、お早いお帰りを。」
「わかってるって。」
「じゃあ私も行ってきます!」
「アネットくれぐれもお願いね!」
俺だけだと不安だという事で、アネットも同行することになっている。
この時点で何の問題も無いと思うんだけどなぁ。
まったく、心配性な女達だ。
「作戦は昨日話した通りだ。サプライズで会いに行き花束を渡して元気づける、それで終わり。戻るのが遅かったら支配人に言って俺を呼び出してくれ。」
「すぐに呼びます。」
「そもそもあの女を抱くつもりも抱かれるつもりもない。それはわかってるはずだが?」
「・・・お尻を揉みながら話さなくてもいいじゃないですか。」
「女には満足してる、っていうかこれ以上は身がもたない。」
「お薬処方しましょうか?」
「勘弁してくれ。」
いくらドーピングしても気持ちが乗ってなければ楽しくもなんともない。
好きでもない女を抱くほど、飢えているわけじゃないんでね。
てな感じでアネットと共に竜宮館へと向かった。
「いらっしゃいませ。」
「タトルさんはいるか?」
「ご用件は?」
「うちの薬師が世話になったんでな、そのお礼に来たと伝えてくれ。」
「かしこまりました、どうぞ中でお待ちください。」
受付のおっちゃんは前と同じだった。
俺もアネットの事も知っているだろうが、一応仕事柄聞かなきゃいけないんだろう。
俺を見た瞬間に、『あぁ、あいつね』みたいな表情をしたのを俺は見逃さないぞ。
しばらく入り口横のソファーで待っていると、奥から小走りでタトルさんが戻ってきた。
「これはシロウ様アネット様、ようこそお越しくださいました。」
「アポなしで悪いな、この間の礼をしに来たんだ。」
「お礼、ですか?」
「この間派手にやって以降随分とふさぎ込んでいると聞いてな、一応責任を感じてるんだ。」
「申し訳ありません、シロウ様にそこまで考えさせてしまいまして。」
「っていうのは建前で単純に避妊薬の礼をしに来ただけだ。良い値段で買ってもらったようで感謝している。」
「こちらとしてもあの量を用意して頂けて感謝しています。」
普通は薬のお礼が建前で本音があのナンパ女のご機嫌取り、って感じだろうがそんなわけがない。
あくまでもご機嫌取りはついでだよ。
「で、どうすればいい?」
「レイラは最上階の一番奥の部屋におります、どうぞお好きになさってください。」
「おいおい、一番人気の女を好きにしていいのか?」
「シロウ様でしたら本望でしょう。もっとも、キズをつけるのだけは避けて頂ければ。」
「そっちの趣味は無いし抱くつもりもない。後で請求されても困るしな。」
「どうぞよろしくお願いします。」
深々と頭を下げるタトルさん。
冗談が通じない所から察するにかなり重症なんだろう。
うーむ、ちょいとばかしやり過ぎたか。
階段まで案内されたがそこから先は俺一人だ。
竜宮館は三階建て、一番上まで上がると長い廊下があり、その突き当りがナンパ女の部屋らしい。
さ~て、さくっと終わらせて帰りましょうかね。
ずんずんと廊下を進み、目的の部屋へ。
コンコンと二回ノックする。
さすがにいきなり入るなんて愚行はしない。
それぐらいのマナーは持っているつもりだ。
「誰が来ても相手せぇへんよ、帰って。」
「随分とつれない返事だな、この間は自分で来たくせに。」
「そ、その声は!」
中からどたばたと暴れる音がする。
まるで間男が旦那の帰還に慌てているような感じだ。
まぁ、実際そんな状況見たことも聞いたことないけどな。
しばらくして扉が開き、扉の向こうでレイラ(ナンパ女)が仁王立ちしていた。
若干衣服は乱れ、化粧らしい化粧もしていない。
こっちの方が中々いいじゃないか。
「い、いったい何の用なんや?この間の詫びをしに来たんやったらもう遅いで!」
「まぁそう言うな。ほら、これをやるから機嫌を直せ。」
「ふん、物なんかで私の気が・・・綺麗やんか。」
「だろ、冬にこれだけの花を集めるのは大変なんだぞ。」
「これを私の為に採ってきてくれたんか?」
「集めたのは俺じゃないが依頼したのは俺だ、気に入らないなら持って帰るが?」
「そんなこと言ってへんやんか!返せ言うてももう返さへんからな!」
ふんだくるように花を奪うと後ろを向くレイラ。
気の利く男ならここで抱きしめたりするんだろうが、生憎今日はご機嫌取りだけだ。
さっきも言ったように抱くつもりはさらさらない。
「まぁ気に入ってくれたなら何よりだ。」
「・・・上がっていく?」
「いや、今日はそのつもりじゃないし帰る。」
「ねぇ、なんでなん?この前からどれだけ考えてもわからへん。どうして私じゃアカンの?」
「好みじゃないから。」
「じゃあ好みに合わせるやん。」
「そうじゃないんだよなぁ、俺が好きなのは俺の為にカネを運んでくる女だ。」
「貢げって事?」
「そういうんじゃないんだよな~。」
「じゃあなんやのん!」
おぉ、逆切れしたぞ。
部屋に入っていないので後ろの廊下によく響いたことだろう。
「それを含めてよく考えろ、今は一番かもしれないがあっという間に抜かれるぞ。」
「私が一番や、それは変わらへん。」
「どうだかな。」
そんな風に思っている間は興味ないね。
おせっかいかもしれないが、これも何かの縁だ。
タトルさんの顔もあるしもうしばらくは付き合ってやるとしよう。
「ご主人様、お迎えに上がりました。」
「もうそんな時間か。」
「仕事の話は終わりました、次は15月に二度目の納品の予定です。」
「誰やその女!」
「俺の女に決まってるだろ、お前の使ってる避妊薬を作る薬師だよ。」
「そ、そいつは抱いてるんか?」
「当たり前だろ、俺好みのいい女だ。」
見せつけるようにアネットを抱き寄せ、その尻を揉む。
今更だが俺は胸より尻派だな。
「な、なんでやねん。うちの方が何倍も・・・。」
「よく考えろ。じゃあな、レイラ。」
「あ、名前・・・。」
「アネット行くぞ。」
「はいご主人様。」
クルリと反転しまた長い廊下を進んでいく。
てっきりまた罵倒が飛んでくると思ったが、今回はそうはならなかった。
下に降りると恭しくタトルさんが頭を下げている。
「どうなるかはわからないぞ。」
「十分でございます。わざわざありがとうございました。」
「次の納品の時にまた来る、何かあったらまた連絡してくれ。」
「タトル様失礼します。」
さて、どうなる事やら。
とりあえず頼まれた仕事はしたはずだ。
後はあの女次第だな。
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