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番外編④「はじめまして」
――数日後。
「……いよいよね」
腕の中の小さなぬくもりを見つめながら、そっと呟く。
今日は、両家の家族が集まる日。
――この子と、初めて対面するために。
「緊張してる?」
隣から、くすっと笑う声。
「……少しだけ」
「大丈夫だよ」
エルは、いつもの調子で言う。
「どうせみんな、可愛いしか言わないから」
「……それは確かに」
苦笑する。
だってもう、想像できる。
あの両親たちの反応は。
「ほら」
彼がそっと赤ちゃんの頬に触れる。
「今日もかわいい」
「親バカね」
「今さらでしょ」
即答。
そのやり取りに、少しだけ肩の力が抜ける。
――そして。
扉が開いた瞬間。
「来たか!」
「待っていたわ!」
声が重なる。
予想通り、いや予想以上の勢い。
「……っ」
思わず一歩引きそうになるのを、
エルがそっと支える。
「大丈夫」
小さく囁かれる。
「ほら、見せてあげて」
ゆっくりと前へ出る。
腕の中の子を、そっと見せると――
「……」
「……」
一瞬、静寂。
そして次の瞬間。
「……可愛い……!」
母が崩れ落ちる。
「天使……!」
父は天を仰ぎ、
「これが……孫……!」
震える声。
一方。
「ちょっと貸して!」
「いやまず私が!」
エルの両親も大混乱。
「順番よ順番!」
「そんなの待てるか!」
完全に収拾がつかない。
「……すごいわね」
「言ったでしょ?」
隣で、エルが苦笑する。
「こうなるって」
「想像以上よ……」
でも。
その光景が、どこか嬉しくて。
「……抱いてもいいか?」
少し遠慮がちに、父が言う。
「ええ、もちろん」
そっと腕を差し出すと、
まるで壊れ物みたいに慎重に受け取る。
「……軽い」
ぽつりと呟く。
「こんなに小さいのか……」
その顔が、少しだけ緩む。
「……守らなければな」
低く、でも優しい声。
その姿に、胸がじんわりする。
「ほら、私も!」
次は母。
受け取った瞬間、
「……ああ……」
涙がこぼれる。
「本当に……生まれてきてくれて……」
言葉にならないまま、頬を寄せる。
その様子に、エルの母もすでに涙目。
「……次、私!」
「待て、順番だ!」
そしてまた軽い争い。
「……元気ね」
「うん」
エルが笑う。
「でも嬉しいんだよ、みんな」
「……そうね」
その通りだと思う。
こんなに愛されて。
この子は、幸せだ。
「そういえば」
ふと、父が顔を上げる。
「名前は、もう決まっているのか?」
「……ええ」
私はエルを見る。
彼も、静かに頷く。
「決めたよ」
そして。
そっと、赤ちゃんを見つめて。
「――ルナ」
やさしく、名前を呼ぶ。
「この子の名前」
その音が、部屋に広がる。
「ルナ……」
母が繰り返す。
「いい名前ね……」
「夜みたいに、やさしい響きだ」
父も頷く。
「意味は?」
問われて、エルが少しだけ笑う。
「光るもの」
「暗い中でも、ちゃんと輝くもの」
その言葉に、胸がじんわりあたたかくなる。
「……いいわね」
「……ああ」
みんなが、ゆっくり頷く。
その中心で、小さなルナは、静かに眠っている。
「ルナ」
エルが、そっと呼びかける。
「これからよろしくね」
指先で、小さな手に触れる。
ぎゅっと握り返されて。
「……っ」
また、少しだけ目が潤む。
「……弱いわね」
「仕方ないでしょ」
笑いながら言う。
「可愛すぎるから」
「そればっかりね」
「事実」
即答。
思わず、また笑ってしまう。
祖父母たちの笑い声と、小さな寝息に包まれながら。
私は思う。
この子はきっと、たくさんの愛に囲まれて育つ。
そして。
その中心には――
「奥さん」
「なに?」
「幸せ?」
「……ええ」
迷わず答える。
「とても」
そう言うと、彼は満足そうに笑って。
「俺も」
ぎゅっと手を握る。
そのぬくもりと、腕の中の小さな命。
どちらも、かけがえのないもの。
――こうして。
私たちの家族は、また一つ形になった。
愛されて、愛して。
少しずつ、増えていく幸せの中で。
今日もまた、新しい物語が始まっていく。
感想
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