目覚めたら親友(草食男子)の推しAV女優になってました

華山富士鷹

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鬼畜の残像

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「……弥生、弥生」
まだ全然瞼が重いというのに、スミレが俺を起こそうと呼んでいる。
「う、うぅん……」
けれども、俺はスミレの耳触りのいい声すら心地良くてなかなか夢の世界から離れられない。
「弥生、初詣行くんでしょ?もうお昼過ぎてるよ」
「ぅん……待って……」
昨夜はスミレのせいで(濡れ衣)眠れなかったんだ、もう少し寝かせてほしい。
それに、こうして夢うつつでまどろんでいるのも気持ちがいいし。
俺は丸くなって布団に潜り込もうとした。
「待て待て弥生、潜らない」
スミレに上体を引き戻され、俺は布団をギュッと握り締める。
「あ……と5分……」
「5分後にも同じ事言うだろ?」
「ぅん……」
「まったく」
スミレが深くため息をつき、俺から布団を引き離す。
「寒っ」
俺は外気に晒され身震いし、体温を求めてベッドに腰掛けたスミレの体にすり寄った。
ゴツゴツしてるけど温かい。人肌が心地良い。しかも柔軟剤のいい匂いがする。
「弥生、寝てていいから着替えさせてあげる」
「ぇー……」
脱いだら寒いじゃん。
俺が丸くなってスミレの膝に顔を埋めると、彼は結構強引に俺のシャツを剥がす。
え、なんかスミレ、力強い。
高校生の腕力なんてたかが知れていると思っていたが、俺はスミレにいいように押さえつけられ、あれよあれよという間に上半身裸になっていた。
寒っ!!
全身に鳥肌が立ち、俺はタックルするみたいにスミレの腹にしがみつく。
「うわぁん」
「……」
スミレはただ黙って俺のズボンに手を掛けた。
俺は駄々っ子するみたいにムギュッとスミレを抱く腕に力を入れると、まな板の様な彼の腹筋を感じて驚いた。
「スミ……レ、硬……い」
え、スミレって意外と腹筋割れてる。硬い。なんかペラペラの俺の腹と違うな。
スミレの奴、昔は俺より小さくてナヨナヨしてて可愛かったのに、いつの間に漢になったんだ?
俺は自分だけ置いてけぼりをくったようで少しだけジェラシーを感じる。
「弥生、寝ぼけてる?」
「……」
答えるのも億劫で、俺はスミレの熱と匂いに溺れてうつらうつらした。
するとスミレの手がサワサワと俺の首筋や背中や胸板に触れ、俺はそのこそばゆさに首を縮める。
「起きた?」
「……」
なんだ、スミレは俺をくすぐって起こそうというのか。でもそれは逆効果だ。なんならちょっと気持ちがいいからな。
「良かった」
何が?
スミレは俺を起こそうというのに、何故かホッとしたような事を呟いた。
「弥生、そのまま、そのまま──」
何故かスミレの穏やかな口調が催眠術にも聞こえて尚更眠くなる。いや、子守唄か?
「ぅん……」
スミレから背中を触れるか触れないかのタッチで撫でられ、俺はゾワゾワとケツ穴のむず痒くなるような変な気持ちになる。
「そのまま、そのまま──」
スミレは俺の耳元で、子供を寝かしつけるようなウィスパーボイスを発し、いきなり俺のズボンをパンツごと脱がせた。
「スミレッ!?」
つるんと臀部を剥かれ、俺が仰天して跳び起きると、スミレは意に介した様子もなく黙ってこちらを見つめていた。
「な、なに……?」
俺は何が起こったのか状況が把握出来ず、丸出しの尻をしまう事すら忘れて呆けた。
「ああ、ごめん。着替えさせようと思ったら、パンツまで下げちゃった」
「ぇ、ぁ、そぅ……サンキュ」
俺は引きつった顔で歯切れ悪く礼を言うのがやっとだった。
そうか、そうだよな、スミレは昔から俺の面倒見だけは良かったし、着替えだって子供の頃は手伝われてた気がする。別に過剰反応する必要なんかないんだ。
ただ……
昨夜観たエロ動画の陵辱の数々があまりにショッキングすぎて頭から離れないせいか、ついスミレをそういう(鬼畜)目で見てしまう。
一瞬、尻をぶたれる姉川レイの残像が脳裏に浮かび、自分も(ムッツリ鬼畜の)スミレに同じ目にあわされるかと思った。
だってスミレはあんな残酷な行為に興奮するような(ど)変態だし。
誤解だったにせよ、ちょっと怖いな。スミレは寡黙で無表情な分、何を考えているのか解らないのがネックなんだよあぁ。いい奴なんだけど、裏の顔を見てしまったせいで意識しちゃうな。
「き、着替えは?借りていいの?」
一旦落ち着くと、真冬の寒さが俺を包み込み、俺はそそくさと尻をしまって腕を組んだ。
何でエアコンつけてないんだよ。
「待ってて」
俺の念が通じたのか、スミレがエアコンをつけ、クローゼットから暖かそうな衣服を何枚も掘り出して来た。
「風邪ひくといけないから、沢山着て」
そう言うとスミレはスポスポと俺に暖かインナーを頭から被せていく。
いや、さっき寒い室内で俺を丸裸にしようとしてたじゃん。
……やっぱドSだからか?
極寒プレイ?
俺も男だが、周り曰く、悪戯されそうな男子高校生の名をほしいままにしているからか、鬼畜(スミレ)としては虐めたくなるのかもしれない。
「下は?」
「ぇ?あ、あぁ、自分で履く」
スミレに下を顎で指され、俺は彼から裏起毛のズボンを受け取った。
「……」
「……」
いざズボンを履き替えようと腰に手を当てたが、スミレの下加減な視線(なんならガン見)が気になってやりづらい。
なんか、俺の股間の辺りを見てないか?
サイズを気にしてる?
思春期の男子あるあるだが、こうも舐めるように見られるとやたら恥ずかしい。
スミレの視線なんて今まで気にした事なかったのに、意識してみると見たくもない事が見えてくるようだ。
俺が微動だにせずにいると、スミレが気を遣って後ろを指した。
「気になるなら後ろ向いてるけど」
「いや、女の子じゃないんだし、パンツ見られるくらい……」
そこは男同士だし、こんな会話をするのすらおかしな事なのだ。
ただ、お前がガン見するからこうなったんだろが。
「じゃあ見てる」
「見んな」
※見てもいいという意味ではない。
何故そうなる?
俺はこの後、ズボンの履き替えに10分も要した。

「昼飯、家の人がいないから冷食の炒飯とインスタントのスープでいい?」
身支度を整え、俺らは1階に昼飯を食べに行こうとしていた。
「俺、昔から好き嫌いないし、なんでもいいよ」
俺は着ぶくれして重くなった体をベッドから持ち上げる。
「野菜炒めくらいなら作るけど、男所帯だと冷食の炒飯なんて食べ飽きてない?」
「全然、俺、冷食好きだし。お前がチンする炒飯は美味しい気がするし。いや、何なら俺がチンしよっか?何か手伝いたいし」
チンしたり、粉末スープを溶かすくらいなら俺にも出来るし、いつも良くしてくれるスミレを手伝いたい。
「チンくらいいいよ。それより──」
「んー?」
俺が大あくびで伸びて油断していると、スミレがジッと俺の方を見やった。
「弥生はどの辺から起きてたの?」
ピシッ(※これは俺の中で何かにヒビが入った音だ)
「何か聞いたり、感じたりとかした?」
「な、何を聞いたり、感じたりする事があるんだよ?」
いつも無表情なスミレが、ここぞとばかりに俺を探るように見据えてきて、俺はしらを切った方が身の為な気がして素知らぬ顔をした。
起きてたらどうなんだよ?
確かにスミレの様子がおかしかった気はするが、俺が起きてたら何か不都合でもあるのか?
「いや」
「え?」
スミレはそっと俺から目を逸し、何かを考えているようだった。
「……」
だんまりが怖い。
「ならいいんだ」
良かった。まじで。
というか、別に怯える必要もないのに、俺は何故こんなにも動揺しているのか。
「じゃあ、下行こっか」
「ぉ、ぉぉぅ……」
俺は震える声でスミレの後に続いた。
「弥生」
階段を下る途中で不意に名前を呼ばれ、俺の肩に力が入る。
「な、なに?」
なんだよ、まだ爆弾があるのかよ?
「やっぱ弥生にチンしてほしい」
そう言って振り返ったスミレはやはりいつもの無表情で、普段と変わりのないように見えたが……何故だろう、そのセリフが凄く下ネタに聞こえた。


それから電車を乗り継いで到着したのは、鬼が奉られている事で有名な某神社、と言っても、境内に鬼の石像等といった象徴的な物は無い。そこらにあるような何ら特式の無い神社で、バイトの巫女がお守りやおみくじを売る事はおろか、自販機すら無い。
規模が小さいせいか雪にまみれた境内はほぼ貸し切り状態で、足跡も疎らだった。
それじゃあ何故ここを選んだのかと言うと、スミレ曰く、空いててわりと近いから、だそう。
鬼畜だから鬼の神社に引き寄せられたの間違いじゃねーか?
「なに?寒い?俺のマフラーも巻く?」
スミレが俺の方を見て自身のマフラーに手を掛けた。
「いや、これ以上巻いたら前見えなくなるわ」
優しさが時々重い。
スミレ、いい奴。
「弥生、凄く滑る」
自然とスミレが手を差し伸べてきて、俺はその過保護さにちょっと呆れる。
確かに石段が凍っててツルツルしているが、男同士で手を繋ぐのはかなり恥ずかしい。
「スミレ、それは未来の彼女にとっとけ」
俺は照れ隠しでぶっきらぼうに拒絶したが、スミレは気にせず俺の手を引いた。
ハズッ!
「俺の話聞いてねーな……」
今日のスミレはやけに強引だな。
「弥生に手袋貸すの忘れてたから。手、冷たいだろ?」
なんて言いながらもスミレは俺の手を引いてグングン石段を登って行く。
「お前、こんな強引だったか」
やれやれと呟いた言葉が、スミレの足を止める。
「嫌い?」
振り返って見下ろすスミレの眼差しがあまりに凛々しく、俺には勿体無いなと思った。
「やー……別に。でも女なら喜ぶんだろうけど、申し訳ない事に俺は男だから」
俺なんかに労力を使っても、何の得にもならないのになぁ。俺が頼りないから、スミレは子離れ出来ない親の心境なのかもな。
「問題無い」
「お、おぅ」
しかしスミレからピシャリと断言され、俺は戸惑いつつもそのまま社殿までエスコートされた。

中流階級の家より小さいくらいの社殿だが、わりと管理が行き届いた趣のある神社を前に、俺達は賽銭を投げ、手を叩いて合掌し、目を閉じてそれぞれの祈願をする。
去年は自分の恋愛成就を祈ったが実らず、それならばと、今年はスミレの恋愛祈願でもするかと気軽な気持ちで神に祈った。
(親友のスミレに姉川レイ似の彼女ができますよーに。あいつはいい奴だから幸せにして下さい。ついでに明日はエビフライが食べたいです)
こんなもんかと目を開けて隣のスミレを見ると、こちらを凝視する彼と目が合い、俺は驚嘆してヒッと声をあげる。
「こっち見んな」
「いや、見惚れてた」
「んなアホな」
スミレはこういった冗談(?)もご多分にもれず真顔で言う。
「弥生は何を願ってるのかと思って」
「お前な、俺の頭の中を透視しようとしてたのか?」
「うん、それで?」
スミレに先を促され、俺は素直に答えた。
「スミレに彼女ができますよーにって、あ、あと、明日はエビフライが食べたいって」
と、特に他意もなく答えたのだが、何故かスミレの口が引き結ばれ、俺は何かマズイ事でも言ったかなと焦る。
「俺は彼女なんかほしくないのに勝手に祈願しないでよ」
あまり意思表示しないスミレがこんなにもハッキリ『ノー』と口にするのは、これが初めてだった。
「え?あ、ごめん。去年の願い事も叶わなかったから、軽い気持ちで」
別に激高してる訳ではないが、スミレのオーラに気圧され、俺は気弱になる。
「去年の願い事って?」
「自分に彼女ができますよーにって」
「!?」
スミレは何も言わなかったが、肩を落とし、ショックを受けているようだった。
「おーぃ、スミレー、うおーい」
俺の声も届かぬくらいに。




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