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5.久しぶりに会うエラルド
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入学の日、学園の掲示板には教室の名簿が張り出されていた。
私の名前はA教室のところにあった。
首席合格ではなかったけれど、いい成績ではあったようだ。
この学園はA教室からD教室までにわかれる。
A教室は特別教室と呼ばれ、授業内容が違う。
もうすでに学園で覚えることは学び終わっている者が入る教室だ。
私のような領主になるための教育を終えている者、そして王家の者だ。
B教室は高位貴族だが領主候補ではない者、伯爵家以下の領主候補。
C教室は伯爵家以下の領主候補ではない者。
そして、D教室は落ちこぼれと言われ、全く勉強ができない者、
学園の授業についていけないと判断されたものが基本から学び直す教室だ。
……エラルドはD教室のところに名前があった。
家庭教師をつけて学び直したはずなのに、間に合わなかったのだろうか。
D教室は必ずあるわけではなく、存在しない学年もある。
それなのに、今年のD教室は四人もいた。これは十年ぶりのことらしい。
エラルドが一人だけD教室じゃないだけ良かったのかも。
仲間がいれば、一緒にC教室を目指そうと頑張れるかもしれない。
そう自分に納得させて、A教室のある特別棟に向かう。
A教室だけ授業が違うので、時間割も違う。
食堂やカフェテリアは共用だが、休み時間が違うので他の教室とは会わない。
エラルドに会うのは授業が終わった後になるだろう。
敷地内にある寮にいる私とは違い、
王都の屋敷から通っているエラルドと会うには、待ち合せなければ難しい。
一度手紙を出して会いたいと伝えてみようか。
特別棟のA教室に入ると、中にはもう学生がいた。
私よりも早い人がいるなんてと思い、軽く会釈する。
相手が誰なのかはわからないけれど、間違いなく高位貴族なはず。
こちらから挨拶していいものか迷っていたら、向こうから近づいてきた。
「やぁ、令嬢がA教室だなんて素晴らしいね」
「ありがとうございます」
嫌味のようなものは感じられなかった。
純粋にすごいと褒めてくれたようだ。
サラサラの金髪に少し暗めの紫目。
金髪なので高位貴族だとは思うが、印象としては騎士とか戦士。
私も背は高い方なのに、見上げるほど背が高くがっしりとした身体だった。
「初めて会うね。地方貴族なのかな。
俺はアルフレード・ファリーナルだ」
「ファリーナル……え?王子なのですか?」
「ああ。やっぱり気がついてなかったんだ。第三王子だよ。
君は王子の婚約者選びの会に来てなかったんだな」
ファリーナル、それはこの国の名前。
第三王子は正妃様の第二子だったはず。
言われてみれば同じ歳だったと思い出したけれど、気にしていなかった。
「ディアナ・カファロと申します。
もうすでに婚約者がいますし、私が家を継ぐので。」
「それで社交していなかったのか。なるほど」
納得したのかうなずいたアルフレード王子に、
後ろにいた令息が呆れたように声をかける。
「これで納得したか?
全員がお前の婚約者になりたいわけじゃないんだぞ」
「うるさいな。知らない令嬢がいるって言っただけだろう?」
「それがいかにもおかしいように言うからだ。
探せば他にもアルのことを知らない令嬢がいると思うぞ」
「あーそうかよ。どうせ俺は世間知らずだよ」
仲が良いのか、言い合いを始めた二人にどうしようかと思う。
この令息も高位貴族以上なのは間違いない。
こちらは銀髪に緑目。エラルドの緑目よりも、深い緑色。
私も銀髪だけど、令息は青みがかっているように見える。
「王子が馴れ馴れしくて申し訳ない。
俺はエルネスト・コレッティだ」
「あぁ、コレッティ公爵家の方でしたか」
コレッティ公爵家はアルフレード王子を産んだ正妃様の生家だ。
領地持ち貴族ではあるが、王都のすぐ隣に領地があるために、
王宮貴族とも関わりが深い。
アルフレード王子と仲がいいのは、母方の従兄弟で同じ歳だからか。
アルフレード王子より一回り身体は小さいが、それでも私よりもずっと高い。
二人に並ばれると、少し威圧感がある。わざとではないだろうけど。
「今年のA教室はこの三人だけらしい。
だから、アルフレードが何かして困ったら俺に言ってくれ」
「何かって、なんだよ!」
「一応は言っておかないと困るだろう。
お前は気にしないかもしれないが、まわりは王子だと思って気をつかうんだ」
「……それはそうかもしれないが」
何か今までそんなことがあったのか、アルフレード王子がしゅんとなっている。
そういえばさっき自分のこと世間知らずって言ってたな。
成績は優秀なのに、どうしてだろう。
「わかりました。何か困るようなことがあれば相談させてください。
何も無ければ言いませんので、あまり気にしないでくださいね」
「ああ、遠慮なくエルに言ってくれ!」
「ふふ。わかりました」
悪い人ではないようだ。
王子ではあるが、同じ学生として扱ってほしいとお願いされる。
これから一年間。もしかしたら三年も同じ教室で学ぶことになる。
お互いに気をつかいすぎても良くないだろう。
こんな風に始まったA教室の居心地は悪くなかった。
三人しかいないが、授業では先生も混じって討論する。
過去の事例を渡され、領主としてどう対処すべきかを語り合う、
とても有意義なものだった。
エラルドから手紙が来たのは、私が手紙を出してから三日後のことだった。
めずらしく返事がきたことにほっとしながら、手紙の内容には少し首をかしげる。
「紹介したい人がいる?誰のことかしら」
授業が終わった後、中庭にテーブルが置かれている場所があるので、
そこに来てほしいという内容だった。ディアナに会わせたい人がいるんだと。
とにかく行ってみればわかるかと思い、授業が終わった後で中庭に向かってみる。
一度も行ったことがなかったが、中庭は食堂やカフェテリアから見える場所にあった。
私の名前はA教室のところにあった。
首席合格ではなかったけれど、いい成績ではあったようだ。
この学園はA教室からD教室までにわかれる。
A教室は特別教室と呼ばれ、授業内容が違う。
もうすでに学園で覚えることは学び終わっている者が入る教室だ。
私のような領主になるための教育を終えている者、そして王家の者だ。
B教室は高位貴族だが領主候補ではない者、伯爵家以下の領主候補。
C教室は伯爵家以下の領主候補ではない者。
そして、D教室は落ちこぼれと言われ、全く勉強ができない者、
学園の授業についていけないと判断されたものが基本から学び直す教室だ。
……エラルドはD教室のところに名前があった。
家庭教師をつけて学び直したはずなのに、間に合わなかったのだろうか。
D教室は必ずあるわけではなく、存在しない学年もある。
それなのに、今年のD教室は四人もいた。これは十年ぶりのことらしい。
エラルドが一人だけD教室じゃないだけ良かったのかも。
仲間がいれば、一緒にC教室を目指そうと頑張れるかもしれない。
そう自分に納得させて、A教室のある特別棟に向かう。
A教室だけ授業が違うので、時間割も違う。
食堂やカフェテリアは共用だが、休み時間が違うので他の教室とは会わない。
エラルドに会うのは授業が終わった後になるだろう。
敷地内にある寮にいる私とは違い、
王都の屋敷から通っているエラルドと会うには、待ち合せなければ難しい。
一度手紙を出して会いたいと伝えてみようか。
特別棟のA教室に入ると、中にはもう学生がいた。
私よりも早い人がいるなんてと思い、軽く会釈する。
相手が誰なのかはわからないけれど、間違いなく高位貴族なはず。
こちらから挨拶していいものか迷っていたら、向こうから近づいてきた。
「やぁ、令嬢がA教室だなんて素晴らしいね」
「ありがとうございます」
嫌味のようなものは感じられなかった。
純粋にすごいと褒めてくれたようだ。
サラサラの金髪に少し暗めの紫目。
金髪なので高位貴族だとは思うが、印象としては騎士とか戦士。
私も背は高い方なのに、見上げるほど背が高くがっしりとした身体だった。
「初めて会うね。地方貴族なのかな。
俺はアルフレード・ファリーナルだ」
「ファリーナル……え?王子なのですか?」
「ああ。やっぱり気がついてなかったんだ。第三王子だよ。
君は王子の婚約者選びの会に来てなかったんだな」
ファリーナル、それはこの国の名前。
第三王子は正妃様の第二子だったはず。
言われてみれば同じ歳だったと思い出したけれど、気にしていなかった。
「ディアナ・カファロと申します。
もうすでに婚約者がいますし、私が家を継ぐので。」
「それで社交していなかったのか。なるほど」
納得したのかうなずいたアルフレード王子に、
後ろにいた令息が呆れたように声をかける。
「これで納得したか?
全員がお前の婚約者になりたいわけじゃないんだぞ」
「うるさいな。知らない令嬢がいるって言っただけだろう?」
「それがいかにもおかしいように言うからだ。
探せば他にもアルのことを知らない令嬢がいると思うぞ」
「あーそうかよ。どうせ俺は世間知らずだよ」
仲が良いのか、言い合いを始めた二人にどうしようかと思う。
この令息も高位貴族以上なのは間違いない。
こちらは銀髪に緑目。エラルドの緑目よりも、深い緑色。
私も銀髪だけど、令息は青みがかっているように見える。
「王子が馴れ馴れしくて申し訳ない。
俺はエルネスト・コレッティだ」
「あぁ、コレッティ公爵家の方でしたか」
コレッティ公爵家はアルフレード王子を産んだ正妃様の生家だ。
領地持ち貴族ではあるが、王都のすぐ隣に領地があるために、
王宮貴族とも関わりが深い。
アルフレード王子と仲がいいのは、母方の従兄弟で同じ歳だからか。
アルフレード王子より一回り身体は小さいが、それでも私よりもずっと高い。
二人に並ばれると、少し威圧感がある。わざとではないだろうけど。
「今年のA教室はこの三人だけらしい。
だから、アルフレードが何かして困ったら俺に言ってくれ」
「何かって、なんだよ!」
「一応は言っておかないと困るだろう。
お前は気にしないかもしれないが、まわりは王子だと思って気をつかうんだ」
「……それはそうかもしれないが」
何か今までそんなことがあったのか、アルフレード王子がしゅんとなっている。
そういえばさっき自分のこと世間知らずって言ってたな。
成績は優秀なのに、どうしてだろう。
「わかりました。何か困るようなことがあれば相談させてください。
何も無ければ言いませんので、あまり気にしないでくださいね」
「ああ、遠慮なくエルに言ってくれ!」
「ふふ。わかりました」
悪い人ではないようだ。
王子ではあるが、同じ学生として扱ってほしいとお願いされる。
これから一年間。もしかしたら三年も同じ教室で学ぶことになる。
お互いに気をつかいすぎても良くないだろう。
こんな風に始まったA教室の居心地は悪くなかった。
三人しかいないが、授業では先生も混じって討論する。
過去の事例を渡され、領主としてどう対処すべきかを語り合う、
とても有意義なものだった。
エラルドから手紙が来たのは、私が手紙を出してから三日後のことだった。
めずらしく返事がきたことにほっとしながら、手紙の内容には少し首をかしげる。
「紹介したい人がいる?誰のことかしら」
授業が終わった後、中庭にテーブルが置かれている場所があるので、
そこに来てほしいという内容だった。ディアナに会わせたい人がいるんだと。
とにかく行ってみればわかるかと思い、授業が終わった後で中庭に向かってみる。
一度も行ったことがなかったが、中庭は食堂やカフェテリアから見える場所にあった。
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