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2章 旅の始まり
2.魔女の馬車
しおりを挟む魔女の家から戻って来たリリーの後ろに、真っ白な馬車があった。
光り輝いていて、あきらかに普通の馬車には見えない。
つないである馬も、馬じゃない。何だろう、この生き物…。
「リリー?」
「あのね、魔女が使ってって。
向こうには転移して行けないし、移動手段がいるだろうって。
さすがに馬でずっと移動するのもつらいし、お借りしてきたの。」
「魔女の馬車か…初めて見るな。」
確かに知らない場所へは転移していけない。
何か移動手段は必要ではあるのだが…。魔女の馬車か。
魔女の使う馬車は、普通の人間には見えないし、さわれない。
こっそり移動するには一番いいだろうけど…あ、じゃあ使い魔か。
「この使い魔も貸してくれるのか?」
「うん、一緒に行ってくれるって。
ミミカとララ。どっちも女の子なんだって。」
かわいいでしょと言いながら、リリーが使い魔の背中をなでている。
グルゥと鳴いているのは、もしかして甘えているんだろうか。
女の子、ね…灰色の身体は馬よりも大きく、耳は地面近くまで垂れ下っている。
ふさふさの毛は良いとして、その爪なんだ?地面に刺さってるぞ…。
あれ、尻尾は無いのか。
「使い魔ですか~よろしくね。」「毛並みいいな、お前ら。」
シーナとシオンは気にしていないようだ。
俺も気にしちゃダメなんだろうな。ため息一つついて、準備を続ける。
「じゃあ、馬車に乗ろうか。今夜は雨が降りそうな気がする。
早く向こうに着いて、マジックハウスが置けそうな森を探そう。」
「はーい。」
「あ、この馬車って御者どうするんだ?」
「いらないって。
馬車の中に地図があるから、その場所を示せば動いてくれるって。」
「わ~便利ですね。」
「…確かにいいな、それ。魔女には何かお礼しなきゃな。」
「行き先は麦の栽培地よね。
小麦粉をいっぱい買ってきて、お菓子をいっぱい焼いて渡すわ。」
馬車の中に入ると、思った以上に広かった。
全員横になって眠れるんじゃないかと思うくらい広いが、
椅子に座ると上からテーブルが降りてくる。
そのテーブルの上にある地図を見て、これかと思う。
「じゃあ、行き先を示すよ。
レイジャール侯爵家の領地にある森を目指してくれ。」
「「グゥル!」」
…意思は通じたかな。今の返事だよな?
ゆっくりと進み始めたと思ったが、窓の外を見ると、ものすごい速さで進んでいる。
何か馬車の本体にも魔術がかかっているのだろう。
シーナが入れてくれたお茶を飲んで、くつろぎながら移動することになった。
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