王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)

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6章 つながる世界

11.元王子

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「正式な面会の申込み?」

「ああ、ちゃんと家名入りの署名で申し込まれた。」

「じゃあ、会わないわけにはいかないな。昼休み、王族の控室でいいか?」

「わかった、そう伝える。」

学園に来てすぐレイモンドが待ち換え前ていたから何かと思ったら、俺とレイモンドとミーシャに面会の申し込みが来ているらしい。
正式なものでなければ断るのだが、家名付きで申し込まれたら断るわけにはいかない。
何を考えて面会したいのだろう。


授業が終わり、いつもなら食堂に行くのだが、王族の控室に向かう。
後で食べるようにジーンとブランには食堂に行ってもらって、食事を控室のほうに運んでもらうことにした。
レミリアは呼ばない方が良さそうだったので、今日は先に食事をするように伝えてある。


「まだ来てないよな?」

「まだのようだね。5学年は授業が長いから。
 少し待つことになるかもしれないな。」

王族の控室で俺とレイモンド、ミーシャがそろって待っていると、扉をノックされた。
中に入ってきたのは、辺境公爵家に引き取られた元王子、フレデリックだった。


「面会の申し込みを受けていただいて感謝します。
 フレデリック・リハエレールです。」

「あぁ、リオルだ。それで、俺に用とは?」


フレデリックの用は俺にあるらしい。
レイモンドとミーシャはその立会人としての意味があるようだ。


「この度は、妹のエリザが申し訳ございません。
 いえ、妹といっていいものか迷いますが。
 わが公爵家では、リオル様にご迷惑をおかけする気持ちはまったくございません。
 それをお伝えしたくて面会を申し込みました。」

「えーっと、つまり、エリザが勝手なことしたけど、
 辺境公爵家は関わってないよ、と言いたいのか?」

「リオル、はっきり言い過ぎだ。本当にお前は貴族のやり取りが苦手だな。
 フレデリック、リオルはエリザには怒ってるけど、
 辺境公爵家やあなたには怒っていないよ。
 心配しなくても、そちらにまで責任を取らすことは無い。
 むしろ、離宮を管理している王宮の責任の方は大きいはずだ。」

「そういってもらえると助かるのですが、そのことについても報告を。」

「報告?」

「はい。もともと離宮の人事は辺境公爵家の方で管理していました。
 それが女官長が代わってから、こちらでは一切口出しできなくなりまして。
 それでも何か問題があったら困ると、こっそりと監視のものをつけていました。
 ですが、ここ数日、監視のものと連絡が取れません。
 もしかしたら気が付かれて消されている可能性があります…。」

「その女官長があやしいと思うか?」

「おそらく…ロードンナ国から魔術具を仕入れているようで、
 裏があるのではと調べさせているところでしたので。」

「魔術具だと!」

「はい。しかも多種にわたって仕入れているようでしたので、
 離宮で生活するのに魔術具が必要なのかと疑問になって。
 王宮内での魔術具の使用は制限がかかってるはずですよね?」

「ああ。父上が使えないように結界を張っているはずだ。
 だけど離宮の方はわからないな。…確認してみるか。」

「…こちらでも監視のものと連絡が取れればすぐに報告いたします。
 どうやら離宮の者たちは元リハエレール国の貴族の縁のものがいるようです。
 油断すると痛い目を見ます。お気を付けください。」


油断すると痛い目…おそらくジョセフィーヌ王女の事件を言っているのか。
あれは魔術具で操られていた可能性か高い。公表はしていないが、実の息子だ。
誰かに聞かされていてもおかしくなかった。


「油断しないように、それも伝えておくよ。」


話が終わるとほっとした顔でフレデリックは部屋から出ていった。
レイモンドとミーシャは複雑そうな顔をしている。
異母兄であるフレデリックだが、兄弟としての交流はしたことがない。
大事な領地である辺境公爵家の嫡男としてのフレデリックとは今後も会うことはあるだろう。


「いろいろと複雑そうだな。兄弟が多いと。」

「そうだな。兄とは呼べないが、少し複雑ではある。
 本来なら、フレデリックが王太子になるはずだろう。
 今はそんなことにならないのはわかっているが、ホント複雑だよ。
 少しだけうらやましい気もするしな…いや、言ったら怒られるか。」

「王太子になりたいと思わなきゃいけないわけじゃないと思うぞ。
 俺たちといる時くらい、めんどくさくて嫌だなって本音言ってもいいよ。
 陛下だって、父上や宰相には愚痴ってたらしいから。」

「そうか…父上は王子一人だけだったから、迷うこともできなかっただろうな。
 それを考えたら、俺がダメでもフランソワがいるし、お前たちもいる。
 俺はまだ恵まれているのかもしれないな。」

「恵まれてるからって我慢することは無いよ。
 変えたいところは変えていけばいい。側妃、娶りたくないんだろう?」

「…知ってたのか。」

「なんとなく。俺だって、ミーシャ以外を娶れって言われても嫌だからな。
 幸い、陛下の時と違って、王子はお前だけじゃない。
 娶るのは王妃だけって決めても良いと思うぞ。
 少なくとも、俺とミーシャは応援する。」

「そうね。レイモンドだけ我慢させるつもりはないわ。
 変えたいのなら、一緒に変えていきましょう?」

「あぁ、ありがとう。」

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