5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)

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2章 次代へ

4.ジークハルト8歳

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俺だけ周りと違うと感じてた。
父様も母様もジョルノも、金色の髪だった。
母様と目の色は一緒だったけど、三人が並んでいるのを見ると、
みんな金色で同じなのに、俺だけ違う。

隣国にいた、亡くなったひいおばあ様が、
俺と同じ銀色の髪で紫の目だったと聞いた。
小さいころに会ったそうだけど、まったく覚えていない。
紫の目は紫水晶の瞳って呼ばれて大事にされるんだって。
母様が紫水晶の姫なんだと聞いたけど、俺は姫じゃないし。

わかったのは、この国に銀髪の子はいないってこと。
隣国の王家か公爵家にしかいない。

うちはコンコード公爵家とオーガスト公爵家、どちらも継ぐ予定がある。
その上、ルールニー王国の王族で、父様は王位継承者でもある。
普段は呼ばれないけど、俺も王子なんだって言われた。
国が大事、公爵家が大事って言われても、それもよくわからない。
どこに行くかは両親が決めるんだろう。
決まってから、大事にすればいいだろうか?

母様のお腹の中に俺の弟か妹がいるらしい。
また金髪の子なんだろうか。もしかしたら?
少しだけ期待してしまって、怖くなった。
また金髪の子に決まってる。期待してどうするんだろう。


エリーゼ王女はいつも突然やってくる。
何が楽しいのか俺に付きまとっては、同じように付きまとうジョルノと喧嘩する。
エリーゼ王女とジョルノが俺を取り合うのを見て、うんざりする。
俺から見たら、お前らは同じようなものだ。
金髪に碧目の似たような顔が二つ並ぶ。
お前たちのほうが姉弟って言った方がしっくりくる。
それを見るたびに、俺だけ違うことを意識させられる。

エリーゼ王女のことは、どうしても好きになれなかった。
いつも我がままばかり言って侍従たちを困らせているし、
容姿はジョルノと同じに見えるんだし、惹かれるわけがない。
だから、「結婚してあげる」と言われて、すぐ断った。
断った瞬間大泣きし、暴れだして手が付けられなかった。
その上、絶対に結婚すると宣言されて、どうしようもなく嫌な気持ちになった。
俺は断ったのに、どうしてそんなことを言われなくちゃいけないんだ?

その日のうちに父様に絶対に嫌だと伝えた。
エリーゼ王女と結婚するくらいなら、俺はどこの家も継がないと言った。
父様は少し考えていたが、大丈夫と言ってくれた。
エリーゼ王女は魔力が無いから、俺やジョルノと結婚するのは難しいと。
魔力ってよくわからないけど、エリーゼ王女にはないらしい。
だけど安心したのは数日だけで、その後もエリーゼ王女は突然現れて、
毎回結婚しろと言ってきた。こいつは人の話を聞かないのか?




そんな時に隣国の王家からお客様が来ると言われた。
初めて会った隣国の王女に、時間が止まったように感じた。


銀色だ。
俺と同じ、銀色だ。


ふわふわの銀色の髪、大きな目をめいっぱい開けて、こっちを見てる。
やっと同じものに出会えた嬉しさで、挨拶もできなかった。
アンジェリカ王女も何も言わない。

どちらからともなく近づいて、お互いに手を出して、両手でつないだ。
ぶわっと温かさが伝わってくる。
身体中に広がるような温かさに、今まで足らなかったものが埋まるのを感じる。
今までさみしかった。やっと会えた。

後で聞いたらアンジェも同じだったって。
やっと出会えた、もう一人の自分。
隣国に帰したくなくて、ずっと手をつないでいた。
二度と離すもんか。アンジェは、俺だけのものだ。



アンジェがうちでの生活に慣れてきたころ、
しばらく来なかったから忘れていたエリーゼ王女が来た。
突然アンジェに体当たりしたせいで、俺の手が離れた。
アンジェが痛そうな顔してる。何するんだ!

アンジェだけは誰にも傷つけさせない。
王女だからって何か命令する気なら、俺はアンジェと隣国に行く。
大事なものは一つだ。アンジェがいるなら、どこにだって行ける。

泣きながら帰って行ったエリーゼ王女を見ても、胸は痛まなかった。
アンジェの手足にあざができていた。
謝られても許す気なんてない。

その夜、父様に聞かれ、あったことをそのまま説明した。
そしてアンジェと結婚させてほしいと頼んだ。
俺はアンジェが隣国に帰るなら、一緒に隣国に行く。
オーガスト公爵家を継げと言うなら継ぐ。
ルールニー王国を大事にする気持ちなんて、少しも持てなかった。
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