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3章 ポショットにはぬいぐるみ。陛下! 大丈夫ですか
1, 陛下、大丈夫ですか!?
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ウサギになってはやくも一月が過ぎる。
これまで何度も色々な事を試みて、人間に戻ろうとしたけれどダメだった。
しかたなく、今はぬいぐるみとしてレイン様の部屋にいる。
でもね。
ぬいぐるみの生活はなにかと不便よ。中でも一番困るのは人間のように軽々と歩きまわれないこと。
レイン様の部屋の中を移動するのだって、まるで修行のように困難だ。
身体を左右に揺らせながら、ヨチヨチとふかふかの絨毯の上を歩いていると必ずどこかでドテンと転んでしまうのだから。
必死で起き上がろうと手足をバタバタさせてもがいても、なかなかうまくいかない。
結局目的の場所までコロコロと転がってゆく。
ある朝、
「あーあ。早く人間に戻りたいー!!」
テーブルの上に立って声を上げていると、身支度を整えたレイン様に頭をつかまれた。
「でかけるぞ。
朝から鼻歌なんかうたって、お前は気楽でいいな」
「あれは鼻歌なんかじゃありません。私の心の声ですよ」
私はムスッとして長い耳をたれる。
不機嫌なのは誤解されただけじゃない。
人間の時は貴方呼びされていたのに、ぬいぐるみになってからはお前と呼ばれているのも不満なのだ。
どちらも中身はキャンディラビットに変わりはないのに。
「うん?
耳が折れているな。なにか不満があるのか?」
レイン様は私の様子に気がついたみたいだ。
頭を低くしてウサギの顔をのぞきこむ。
と同時に私は思わずギュツと目を閉じてしまった。
だってあまりにレイン様が眩しすぎるから。
襟元や袖口が金糸で縁どられた濃紺の大礼服の胸元には、最高位の勲章が煌めいている。
その上からはおった純白の毛皮のマント。
今から貴族会議に出席するその姿はザエンペラーそのものだ。
そんなレイン様を前にした私はブルプルと頭を左右に振るのが精一杯だった。
「そうか。なら早くここに入れ」
レイン様は肩から斜めにぶら下げたポショットの口を大きく開いて、指さしする。
「え? 貴族会議に私を連れてゆくのですか?
それはちょっとマズイのでは?」
「どうしてだ?
お前を部屋に一匹で置いていく方がよほどマズイと思うが」
「うん?」
「言っておくが俺はお前を信じてはいない。
俺がいない間に部屋に爆弾をしかけるんじゃないかと疑っているんだ」
目をパチパチさせて首を傾ける私に、レイン様は不愛想な声をだす。
「なら、いいけど。
恥をかくのは陛下だと思いますけどね」
レイン様の言いぐさにカチンときた私はそう言うと、一気にポショットの中にピョーンとはねた。
これからどうなっても知らないからね。
そのままレイン様は貴族会議室へと向かった。
皇室の紋章入りの重厚な扉が開き、レイン様が会議室の中へ進むにつれて、すでにいた貴族議員たちが一斉にどよめく。
「陛下はご正気なのか! ウサギのぬいぐるみをぶら下げて貴族会議にのぞむなどあり得ないじゃろう」
「ついに血迷ったか。レインファンバルバド。これでお前もおわりだな」
「マジかよ! 嘘だろ!」
あちこちから聞こえる声を私の長い耳がもれなくキャッチする。
どうやら、ぬいぐるみになっても耳のいいのは変わらなかったみたいだ。
てか、人間の姿の時より感度は上がっている。
「よーし。一言たりとも聞き逃さないわ」
変な正義感がメラメラと胸で燃えあがった。
私はポショットの中から身をのりだすと、長い耳をクルクル大きく回す。
と同時にあちこちで失笑がおこる。
「皆様。ご静粛に!」
レイン様が一段高い所に置かれた玉座に着席すると、宰相が声を張り上げる。
黒髪の宰相はたしかレイン派でも皇太后派でもなかったはずだ。
「さっそくですが本題に入らせてもらいます」
宰相はレイン様と軽く目で合図をかわすと、静まりかえった議員達へ呼びかけた。
「皆様に急遽集まっていただいたのは、先日の皇帝陛下暗殺未遂の件についてです」
「暗殺未遂だって!?
あれは皇妃の魔法の暴走ではないのですか?」
「皇帝陛下の配慮により表向きはそう発表しておりますが、真実は定かではありませぬ。
実は内密に陸軍大臣、帝国科学研究所に調査を委託しておりました。
そしてその結果がでたのです」
「「「「「おおおおおおおおお」」」」」
レイン様と対峙するように座っていた威厳ある面々が地鳴りのようにうなる。
「現在わが帝国の外交はどの隣国との良好な関係を作り上げている。
調査の結果、皇帝陛下の暗殺を企んだのが異国である事は極めて低い」
堂々たる体格の陸軍大臣が胸をそり堂々と宣言した。
ポショットからこっそりレイン様を見上げると、レイン様は満足そうにうなずいていたが私の視線に気がつくと、
大きな手で私の頭をおさえつける。
もうう。
「では次。
帝国科学研究所エドワルドプリント所長殿」
「私ども科学研究所は皇妃様のお身体に科学では解明できない、怪しい何かが潜んでいるのを確認しました。
かつてウサギ族に堕落した聖女がいたと聞き及びましたが、皇妃様もそういう劣勢遺伝をお持ちなのでは
ないでしょうか。
そしてそれは皇妃様の意志にかかわらず、皇妃様の行動を操る。
なので今回の事件はやはり皇妃様の魔法の暴走という事で良い、と結論づけた次第でございます」
エドワルド様が知的なサファイアのような瞳で周囲を見渡した。
すると皆が同意したように首を縦にふる。
もちろん私はそうじゃない。
「エドワルド様。ひどすぎるわ!」
ポショットの中で手足をバタバタさせてもがいていたのだ。
このままじゃあ、私はきっと魔女扱いだわ。
十字架に張り付けられて、火炙りにされてもおかしくない。
ダメよ。ダメ。そんなの絶対ダメだって!
これまで何度も色々な事を試みて、人間に戻ろうとしたけれどダメだった。
しかたなく、今はぬいぐるみとしてレイン様の部屋にいる。
でもね。
ぬいぐるみの生活はなにかと不便よ。中でも一番困るのは人間のように軽々と歩きまわれないこと。
レイン様の部屋の中を移動するのだって、まるで修行のように困難だ。
身体を左右に揺らせながら、ヨチヨチとふかふかの絨毯の上を歩いていると必ずどこかでドテンと転んでしまうのだから。
必死で起き上がろうと手足をバタバタさせてもがいても、なかなかうまくいかない。
結局目的の場所までコロコロと転がってゆく。
ある朝、
「あーあ。早く人間に戻りたいー!!」
テーブルの上に立って声を上げていると、身支度を整えたレイン様に頭をつかまれた。
「でかけるぞ。
朝から鼻歌なんかうたって、お前は気楽でいいな」
「あれは鼻歌なんかじゃありません。私の心の声ですよ」
私はムスッとして長い耳をたれる。
不機嫌なのは誤解されただけじゃない。
人間の時は貴方呼びされていたのに、ぬいぐるみになってからはお前と呼ばれているのも不満なのだ。
どちらも中身はキャンディラビットに変わりはないのに。
「うん?
耳が折れているな。なにか不満があるのか?」
レイン様は私の様子に気がついたみたいだ。
頭を低くしてウサギの顔をのぞきこむ。
と同時に私は思わずギュツと目を閉じてしまった。
だってあまりにレイン様が眩しすぎるから。
襟元や袖口が金糸で縁どられた濃紺の大礼服の胸元には、最高位の勲章が煌めいている。
その上からはおった純白の毛皮のマント。
今から貴族会議に出席するその姿はザエンペラーそのものだ。
そんなレイン様を前にした私はブルプルと頭を左右に振るのが精一杯だった。
「そうか。なら早くここに入れ」
レイン様は肩から斜めにぶら下げたポショットの口を大きく開いて、指さしする。
「え? 貴族会議に私を連れてゆくのですか?
それはちょっとマズイのでは?」
「どうしてだ?
お前を部屋に一匹で置いていく方がよほどマズイと思うが」
「うん?」
「言っておくが俺はお前を信じてはいない。
俺がいない間に部屋に爆弾をしかけるんじゃないかと疑っているんだ」
目をパチパチさせて首を傾ける私に、レイン様は不愛想な声をだす。
「なら、いいけど。
恥をかくのは陛下だと思いますけどね」
レイン様の言いぐさにカチンときた私はそう言うと、一気にポショットの中にピョーンとはねた。
これからどうなっても知らないからね。
そのままレイン様は貴族会議室へと向かった。
皇室の紋章入りの重厚な扉が開き、レイン様が会議室の中へ進むにつれて、すでにいた貴族議員たちが一斉にどよめく。
「陛下はご正気なのか! ウサギのぬいぐるみをぶら下げて貴族会議にのぞむなどあり得ないじゃろう」
「ついに血迷ったか。レインファンバルバド。これでお前もおわりだな」
「マジかよ! 嘘だろ!」
あちこちから聞こえる声を私の長い耳がもれなくキャッチする。
どうやら、ぬいぐるみになっても耳のいいのは変わらなかったみたいだ。
てか、人間の姿の時より感度は上がっている。
「よーし。一言たりとも聞き逃さないわ」
変な正義感がメラメラと胸で燃えあがった。
私はポショットの中から身をのりだすと、長い耳をクルクル大きく回す。
と同時にあちこちで失笑がおこる。
「皆様。ご静粛に!」
レイン様が一段高い所に置かれた玉座に着席すると、宰相が声を張り上げる。
黒髪の宰相はたしかレイン派でも皇太后派でもなかったはずだ。
「さっそくですが本題に入らせてもらいます」
宰相はレイン様と軽く目で合図をかわすと、静まりかえった議員達へ呼びかけた。
「皆様に急遽集まっていただいたのは、先日の皇帝陛下暗殺未遂の件についてです」
「暗殺未遂だって!?
あれは皇妃の魔法の暴走ではないのですか?」
「皇帝陛下の配慮により表向きはそう発表しておりますが、真実は定かではありませぬ。
実は内密に陸軍大臣、帝国科学研究所に調査を委託しておりました。
そしてその結果がでたのです」
「「「「「おおおおおおおおお」」」」」
レイン様と対峙するように座っていた威厳ある面々が地鳴りのようにうなる。
「現在わが帝国の外交はどの隣国との良好な関係を作り上げている。
調査の結果、皇帝陛下の暗殺を企んだのが異国である事は極めて低い」
堂々たる体格の陸軍大臣が胸をそり堂々と宣言した。
ポショットからこっそりレイン様を見上げると、レイン様は満足そうにうなずいていたが私の視線に気がつくと、
大きな手で私の頭をおさえつける。
もうう。
「では次。
帝国科学研究所エドワルドプリント所長殿」
「私ども科学研究所は皇妃様のお身体に科学では解明できない、怪しい何かが潜んでいるのを確認しました。
かつてウサギ族に堕落した聖女がいたと聞き及びましたが、皇妃様もそういう劣勢遺伝をお持ちなのでは
ないでしょうか。
そしてそれは皇妃様の意志にかかわらず、皇妃様の行動を操る。
なので今回の事件はやはり皇妃様の魔法の暴走という事で良い、と結論づけた次第でございます」
エドワルド様が知的なサファイアのような瞳で周囲を見渡した。
すると皆が同意したように首を縦にふる。
もちろん私はそうじゃない。
「エドワルド様。ひどすぎるわ!」
ポショットの中で手足をバタバタさせてもがいていたのだ。
このままじゃあ、私はきっと魔女扱いだわ。
十字架に張り付けられて、火炙りにされてもおかしくない。
ダメよ。ダメ。そんなの絶対ダメだって!
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