【完結】冷酷陛下はぬいぐるみ皇妃を手放せない~溺愛のツボはウサギの姿?それとも人間(中身)の私?~

りんりん

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3章 ポショットにはぬいぐるみ。陛下! 大丈夫ですか

3、涙味のキャロットクッキー

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レイン様と公務を共にしたおかげで、私はある
事件に遭遇した。
なんと大貴族が自身が経営している孤児院の孤児を虐待していたのだ。
その事に気がついたのは問題の孤児院への慰問がきっかけだった。
一人の少女が、
「陛下のウサギちゃんはとっても可愛いのね。いーな。ルビンも欲しいな」
と視察をしていたレイン様の前に突然飛びだしてきたのだ。
その瞬間レイン様をとりまく護衛騎士達が緊張した面持ちに変わる。
「ばっかじゃない。あんな小さな女の子に何ができるっていうのよ」
私はフンと鼻をならすと、ポショットの中から両手を少女の方へ伸ばした。
とたんに目をキラキラと輝かす少女。
女の子の年は妹のパンちゃんぐらいだったと思う。
そのせいであの子と妹が重なって見えた。
「レイン。私、あの子のところへ行きたい」
私は目でレイン様に合図をおくる。
「そんなにこのぬいぐるみが気に入ったのなら、似たようなウサギをあとで贈ってあげよう。もちろん、他の皆にも
ぬいぐるみをプレゼントする」
さっしの良いレイン様は膝を曲げて少女と視線をあわすと、ポショットから私を少女に手渡す。
「わああ。真っ白でフワフワしている。このウサちゃん、目に虹を浮かべているのね。すっごく可愛いな」
女の子は花がほころぶように笑った。
けれど私をなでる女の子の手はあまりにカサカサで、
腕にはところどころ青いアザができていたのだ。
何かがおかしい。
少女に抱かれた私は直感したのだ。
「レイン。あの孤児院はなんとなく嫌な感じがしたわ。
子供達が皆、新しい服を着ていたのも変でしょ。
まるで慰問の為に着替えさせられたみたい。
それに子供達の笑顔もつくり笑いみたいで、妙に不自然だったわ」
「なるほど。そう言われればそんな気もするが、正直俺はそこまで見抜けなかった」
皇城の部屋に戻るやいなや違和感を口にすると、レイン様はすぐに信頼できる部下に調査をさせた。
するととんでもない事実が明るみになる。
孤児院の経営者である大貴族リント公爵が、帝国から孤児達に支給された税金を何年にもわたって着服していたのだ。
リント公爵は民や貴族達の信頼もあつい。
この事が公表されると国民の受けるショックはかなりのものだろう。
そう考えたレイン様は事実をふせて、他の理由でリント公爵を降格させた。
「すっかリント公爵を信じていた俺はまだまだ甘いな。
今回はウサ公、お前の手柄だ」
騒ぎがおさまってから、レイン様から私に大量のキャロットクッキーが贈られた。
皇室ご用達のお菓子店で焼かれたそれは今まで食べた事がない位おいしくて、口にしたとたんホロリとしてしまう。
「いつかパンちゃんにも食べさせてあげたいな」
初めて食べる高価なクッキーはちょっとだけ涙の味がしたのだ。

そうこうするうちにまた数日が過ぎる。
私は自分の身体の行方が心配でたまらなくて、思い切ってレイン様に尋ねてみた。
「研究所に保管されている私の身体はあれからどうなったのかしら?」
「実は俺も気になっていたんだ。劣勢遺伝のせいでお前が俺の害になるなら、身体は破棄した方がいいのだろうか」
「なんですって! そんなおそろしい事、たとえ冗談でも口にしないで欲しいわ。
身体がなくなると私はずーとぬいぐるみのままで暮らさないといけないのよ。それは困るわ」
両手でキャロットクッキーを持ちカリカリとかじっていたけれど、ピタリと動きをとめる。
「なにが困るんだ? 今だって楽しそうにクッキーをほおばっていただろう。
魂だけになったお前は悪いヤツではなさそうだし、ぬいぐるみのままなら一生そばに置いて可愛がってやるぞ」
レイン様はそう言うと、私に顔を寄せて頬にチュッとキスを落とす。
「もうー! そうやって話をはぐらかすのはやめてちょうだい!」
「まあ。そう怒るな。今からエドワルド所長の所へ連れていってやるから」
顔を真赤にしてテーブルの上でピョンピョンはねている私にレイン様は目を細めると、いつものポショットの中へしまった。
「それなら早くそう言ってよね」
ポショットの中からチョコッと顔をだした私はレイン様の動きにあわせてポカポカと揺れる。
きっとレイン様は気がついてないだろう。
「魂だけになったお前は悪いヤツではなさそうだし……」
さっきのレイン様のこの言葉に私が感動して泣きそうになった事を。
そして「ぬいぐるみのままなら一生そばに置いて可愛がってやるぞ」
と言われた時は思わず「そうして下さい!」と叫びそうになった事にも。
そんな自分が恥ずかしくて、さっきは余計にプンプンすねてしまったの。
やっぱり私は人形なんかじゃない。女の子の気持をもった生身の人間なのだ。
なんて事を色々考えているとレイン様の足がピタリと止まる。
どうやら皇城の庭園の最奥にある科学研究所についたようだ。
けど一体どこから入るのだろう。研究所には入口らしき物が見当たらない。
不思議そうに首を傾けていると、レイン様が片手をツタがからむ建物にかざした。
するとうっそうとしたツタが一瞬で消えて、出入り口のような扉が現れる。
さすが最先端技術を次々を生み出す研究所だ。
セキュリティ対策も進んでいる。
「おい。エドワルド。あれから皇妃の件はどうなった?」
手慣れた様子で入り口をくぐり、レイン様は一度も迷わずに所長室へたどりついた。
「これは皇帝陛下様。お待ちしておりました」
きっとどこかに取り付けているカメラから監視していたのだろう。
レイン様が部屋のノブに手をかけようとすると、扉が開いてエドワルドプリント所長が顔をのぞかせた。
「エドワルド。急な訪問で悪いが、皇妃の事が気になってな。様子を聞きにきた。
悪いが俺も忙しいんだ。わかった事だけを教えてくれないか」
レイン様はすすめられた椅子を拒否して、たったままで所長に顔を向かる。
「わかりました。
では結論だけ述べさせていただきます。
皇妃様の劣性遺伝の正体は最先端科学でつくられたプログラムでした」
「プログラムだと?
目的は俺の命か?」
「その通りです。
なので皇妃様をお側に置くのは非常に危険です。幸い意識が戻らないのですから、それを理由に廃位か離縁して遠ざけた方が賢明かと思います。そして次回は私情を殺して、帝国の為になる皇妃をお選び下さい」
「その言葉に嘘はないか?」
「勿論です」
2人はお互いを探るような険しい視線を絡ませたまま、しばらく押し黙る。
そして私はひどい頭痛に襲われていた。
「私にプログラムが……。
嘘よ。そんな事。もし本当なら一体だれが……」
小さな頭はパニックに状態だ。
モヤモヤイライラしたはてに、いつしか意識を手放していた。



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