【完結】冷酷陛下はぬいぐるみ皇妃を手放せない~溺愛のツボはウサギの姿?それとも人間(中身)の私?~

りんりん

文字の大きさ
28 / 38
4章 深まる2人の絆

2, 聖獣との契約

しおりを挟む
「ごめんなさい、レイン。
私が嫁いできたせいで、たいへんな事になっちゃって」
金箔で縁どられた丸テーブルに立って耳をたれる。
「謝るな。遅かれ早かれこうなった。
ウサ公はただのきっかけに過ぎない」
自室に戻ったレイン様は正装のマントを脱ぎすて、
動きやすい部屋着に着替えると、私の頭を優しくなでる。
「ウサ公こそ疲れただろう。
ベッドに運んでやるから、休んでいろ」
レイン様はそう言うと、私を横たわさせる。
そして、
「おやすみ」
と私の額にキスを落とす。
そのキスは今までのような軽い「チュ」じゃない。
じっくりと長い。愛情がたっぷりこもったようなキスだった。
「ダメよ。レイン。
こんな所を誰かに見られたら、また変人扱いされるわよ。
これ以上私を大事にしないでちょうだい」
「それはできない。
ガオー王国で俺は自分に誓ったんだ。
自分の気持ちに正直になる、とな。
ガオーでウサ公に話そうとしたのはこの事なんだ」
「え! そうなの?」
「ああ。そうだ。だから2度と廃位の件を口にするな。これは命令ではなくて、俺からの
心からの願いだ」
レイン様はとろけるような優しい眼差しを向ける。
「心からのお願いですか?
こんな役立たずなウサ公に」
「役立たずなんかじゃない。
お前がぬいぐるにになって、俺の部屋で暮らしだしただろ。
初めはイライラしたが、しばらくして気がついた。
部屋に戻るのが待ち遠しくなっていた事に。
それはウサ公。
じゃなくて、キャンディラビット。貴方がいるからだった」
「私といるのが楽しいってこと?」
「ああ、そうだ。
貴方は心になんの策力も秘めていない。純粋無垢な見たままの女性だ。
それがわかったからだろう。
貴方と話をしたり、からかったりする時間が俺の癒しになっていた。
知ってのとおり、俺の周囲はいつも複雑だからな」
「レイン。
そんな風に私の事を思っていてくれてたなんて、幸せだわ。
たとえそれがぬいぐるみの姿の私に向けられた気持ちだとしても」
「それは誤解だ。
俺を癒してくれたのはぬいぐるみじゃない。
その中にいる貴方だから」
「ありがとうレイン。
その言葉を聞いて、どれだけ私が舞い上がっているかわからないでしょう」
「礼を言うのは俺の方だ。
ガオーで魔獣に襲われた俺を結界で守ってくれたのは、貴方だろ?」
「どうしてそう思うの?」
「俺は魔法は使えない。だとしたらポショットの中で俺を助けようと必死で
もがいていた貴方しかいないだろう?
だから『ぬいぐるみに宿っているのは皇妃の愛』というのは嘘じゃない」
今まで聞いた事がないような優しい声はあまりに心地よい。
いつしか私はまどろみ始めていた。
ウトウトしていたら、どこかで見覚えのあるウサギが目の前に現れる。
「おい。ワシとの約束を忘れたわけじゃないだろな」
「約束って? ごめんなさい、貴方はどなただったかしら?」
とまどいながら、相手の頭からつま先に視線をうつす。
七色に光る身体。
虹色の瞳。
「思い出したわ。ガオー王国でレインを救ってくれた恩人ね。
帰国したらしたで、色々な事がありすぎてすっかり記憶が抜け落ちていたわ。
本当にごめんなさいね」
老ウサギに両手を合わせて何度も頭を下げる。
「もう良いわい」
「確か貴方の言う事をなんでも聞く約束だったわね。
どうぞご自由にして下さい。
ただ残されたレインが気がかりなの。
できたらレインの無事を見届けてからじゃだめかしら?」
「そんなにあの男の事が好きなのか?」
「好きって言葉じゃ物足りないほどよ」
「愛してるのか?」
「わからない。けど自分の命よりレインの命の方が大事なのは間違いないわ」
「それはアイツがバルバド帝国の皇帝陛下じゃからか?」
「違うわ。私の前ではレインはただの一人の人間だったもの」
「そうか。どうやらお前は真実の愛を知ったようじゃな。
それなら話しははやい。やはり今からワシの言う事を聞いてもらおう」
「いますぐ私の魂を食べたいのね?」
「忘れたのか? ワシは聖獣じゃぞ。そんな野蛮な事はせん。
たまにそう言う冗談は言うがのう」
「なら私は何をすればいいのかしら?」
「ワシと契約を交わすのじゃ」
「聖獣と契約を交わせるのは選ばれた人じゃないとできないはずよ」
思いがけない老ウサギの申し出に驚いてピョンとはねる。
「真実の愛を知ったお前はその選ばれた人だ。
聖女としてレイン以外の人間も愛するのじゃ。
ただし。以前の聖女のように闇落ちしたら、お前を永遠にこの世から葬る。
わかったな」
老ウサギは厳しい眼差しを私に向けた。
貧乏伯爵家の平凡な娘。
キャンディラビットが聖女になる! きっとこれは夢をみているのよ。
呆然と突っ立っていたら、老ウサギがいえ、聖獣が呪文のような言葉をとなえながら、
空中に飛び上がった。
するとキラキラと光る綺麗な雨粒が私の頭の上から降ってくる。
「聖水の儀式は終了した。
これでキャンディラビットと聖獣ラビとの契約が成立したわい」
老ウサギは天井を仰ぎ見て声高らかに笑うと、スウッと私の身体の中に流れこんでいった。
「たいへん。これは夢なんかじゃないわ」
私は自分の右手首に現れた星形のアザに目を丸くする。
驚いているとアリーナの声で目をさます。
「皇帝陛下の大事なウサギさんの為に私がつくりました。
どうかお使いくださいませ」
アリーナがおぞおずと差し出したのは、黒い毛糸で編んだプレートだ。
「毛糸のプレートなんて役に立つわけないでしょ」
「お言葉ですがルーカス様。
この毛糸は魔法の糸なんです」
「そうか。アリーナ。ならその魔法の糸はどこで手に入れたんだ」
「ダン騎士団地長。私がお城に上がる時、父から託されました。私の父は酒呑みのだらしない人ですが、娘に嘘をつくとは思っていません」
「案外、アリーナは純情なんだな」
ダンの声につられるようにルーカス様が笑い声をたてる。
どうやら私がウトウトしている間にレイン様の部屋で、ダン騎士団長達と作戦会議が行われていたようだ。
「アリーナ。貴方の気持ちに感謝するわ」
私は心の中でそう言うと黙ってアリーナを見上げた。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。

コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。 だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。 それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。 ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。 これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。

半世紀の契約

篠原皐月
恋愛
 それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。  一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く

恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。 だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。 しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。 こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは…… ※完結まで毎日投稿します ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中

天才すぎて追放された薬師令嬢は、番のお薬を作っちゃったようです――運命、上書きしちゃいましょ!

灯息めてら
恋愛
令嬢ミーニェの趣味は魔法薬調合。しかし、その才能に嫉妬した妹に魔法薬が危険だと摘発され、国外追放されてしまう。行き場を失ったミーニェは隣国騎士団長シュレツと出会う。妹の運命の番になることを拒否したいと言う彼に、ミーニェは告げる。――『番』上書きのお薬ですか? 作れますよ? 天才薬師ミーニェは、騎士団長シュレツと番になる薬を用意し、妹との運命を上書きする。シュレツは彼女の才能に惚れ込み、薬師かつ番として、彼女を連れ帰るのだが――待っていたのは波乱万丈、破天荒な日々!?

【完結】溺愛される意味が分かりません!?

もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢 ルルーシュア=メライーブス 王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。 学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。 趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。 有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。 正直、意味が分からない。 さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか? ☆カダール王国シリーズ 短編☆

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

処理中です...