【完結】冷酷陛下はぬいぐるみ皇妃を手放せない~溺愛のツボはウサギの姿?それとも人間(中身)の私?~

りんりん

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4章 深まる2人の絆

2, 聖獣との契約

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「ごめんなさい、レイン。
私が嫁いできたせいで、たいへんな事になっちゃって」
金箔で縁どられた丸テーブルに立って耳をたれる。
「謝るな。遅かれ早かれこうなった。
ウサ公はただのきっかけに過ぎない」
自室に戻ったレイン様は正装のマントを脱ぎすて、
動きやすい部屋着に着替えると、私の頭を優しくなでる。
「ウサ公こそ疲れただろう。
ベッドに運んでやるから、休んでいろ」
レイン様はそう言うと、私を横たわさせる。
そして、
「おやすみ」
と私の額にキスを落とす。
そのキスは今までのような軽い「チュ」じゃない。
じっくりと長い。愛情がたっぷりこもったようなキスだった。
「ダメよ。レイン。
こんな所を誰かに見られたら、また変人扱いされるわよ。
これ以上私を大事にしないでちょうだい」
「それはできない。
ガオー王国で俺は自分に誓ったんだ。
自分の気持ちに正直になる、とな。
ガオーでウサ公に話そうとしたのはこの事なんだ」
「え! そうなの?」
「ああ。そうだ。だから2度と廃位の件を口にするな。これは命令ではなくて、俺からの
心からの願いだ」
レイン様はとろけるような優しい眼差しを向ける。
「心からのお願いですか?
こんな役立たずなウサ公に」
「役立たずなんかじゃない。
お前がぬいぐるにになって、俺の部屋で暮らしだしただろ。
初めはイライラしたが、しばらくして気がついた。
部屋に戻るのが待ち遠しくなっていた事に。
それはウサ公。
じゃなくて、キャンディラビット。貴方がいるからだった」
「私といるのが楽しいってこと?」
「ああ、そうだ。
貴方は心になんの策力も秘めていない。純粋無垢な見たままの女性だ。
それがわかったからだろう。
貴方と話をしたり、からかったりする時間が俺の癒しになっていた。
知ってのとおり、俺の周囲はいつも複雑だからな」
「レイン。
そんな風に私の事を思っていてくれてたなんて、幸せだわ。
たとえそれがぬいぐるみの姿の私に向けられた気持ちだとしても」
「それは誤解だ。
俺を癒してくれたのはぬいぐるみじゃない。
その中にいる貴方だから」
「ありがとうレイン。
その言葉を聞いて、どれだけ私が舞い上がっているかわからないでしょう」
「礼を言うのは俺の方だ。
ガオーで魔獣に襲われた俺を結界で守ってくれたのは、貴方だろ?」
「どうしてそう思うの?」
「俺は魔法は使えない。だとしたらポショットの中で俺を助けようと必死で
もがいていた貴方しかいないだろう?
だから『ぬいぐるみに宿っているのは皇妃の愛』というのは嘘じゃない」
今まで聞いた事がないような優しい声はあまりに心地よい。
いつしか私はまどろみ始めていた。
ウトウトしていたら、どこかで見覚えのあるウサギが目の前に現れる。
「おい。ワシとの約束を忘れたわけじゃないだろな」
「約束って? ごめんなさい、貴方はどなただったかしら?」
とまどいながら、相手の頭からつま先に視線をうつす。
七色に光る身体。
虹色の瞳。
「思い出したわ。ガオー王国でレインを救ってくれた恩人ね。
帰国したらしたで、色々な事がありすぎてすっかり記憶が抜け落ちていたわ。
本当にごめんなさいね」
老ウサギに両手を合わせて何度も頭を下げる。
「もう良いわい」
「確か貴方の言う事をなんでも聞く約束だったわね。
どうぞご自由にして下さい。
ただ残されたレインが気がかりなの。
できたらレインの無事を見届けてからじゃだめかしら?」
「そんなにあの男の事が好きなのか?」
「好きって言葉じゃ物足りないほどよ」
「愛してるのか?」
「わからない。けど自分の命よりレインの命の方が大事なのは間違いないわ」
「それはアイツがバルバド帝国の皇帝陛下じゃからか?」
「違うわ。私の前ではレインはただの一人の人間だったもの」
「そうか。どうやらお前は真実の愛を知ったようじゃな。
それなら話しははやい。やはり今からワシの言う事を聞いてもらおう」
「いますぐ私の魂を食べたいのね?」
「忘れたのか? ワシは聖獣じゃぞ。そんな野蛮な事はせん。
たまにそう言う冗談は言うがのう」
「なら私は何をすればいいのかしら?」
「ワシと契約を交わすのじゃ」
「聖獣と契約を交わせるのは選ばれた人じゃないとできないはずよ」
思いがけない老ウサギの申し出に驚いてピョンとはねる。
「真実の愛を知ったお前はその選ばれた人だ。
聖女としてレイン以外の人間も愛するのじゃ。
ただし。以前の聖女のように闇落ちしたら、お前を永遠にこの世から葬る。
わかったな」
老ウサギは厳しい眼差しを私に向けた。
貧乏伯爵家の平凡な娘。
キャンディラビットが聖女になる! きっとこれは夢をみているのよ。
呆然と突っ立っていたら、老ウサギがいえ、聖獣が呪文のような言葉をとなえながら、
空中に飛び上がった。
するとキラキラと光る綺麗な雨粒が私の頭の上から降ってくる。
「聖水の儀式は終了した。
これでキャンディラビットと聖獣ラビとの契約が成立したわい」
老ウサギは天井を仰ぎ見て声高らかに笑うと、スウッと私の身体の中に流れこんでいった。
「たいへん。これは夢なんかじゃないわ」
私は自分の右手首に現れた星形のアザに目を丸くする。
驚いているとアリーナの声で目をさます。
「皇帝陛下の大事なウサギさんの為に私がつくりました。
どうかお使いくださいませ」
アリーナがおぞおずと差し出したのは、黒い毛糸で編んだプレートだ。
「毛糸のプレートなんて役に立つわけないでしょ」
「お言葉ですがルーカス様。
この毛糸は魔法の糸なんです」
「そうか。アリーナ。ならその魔法の糸はどこで手に入れたんだ」
「ダン騎士団地長。私がお城に上がる時、父から託されました。私の父は酒呑みのだらしない人ですが、娘に嘘をつくとは思っていません」
「案外、アリーナは純情なんだな」
ダンの声につられるようにルーカス様が笑い声をたてる。
どうやら私がウトウトしている間にレイン様の部屋で、ダン騎士団長達と作戦会議が行われていたようだ。
「アリーナ。貴方の気持ちに感謝するわ」
私は心の中でそう言うと黙ってアリーナを見上げた。










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