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集団痴漢電車

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※集団痴漢/車内モブレ





もうすっかり暗くなった夜空を眺めながら、瞬平しゅんぺいは肩からずり落ちそうになる重いエナメルバックを担ぎなおした。

 高校二年に上がり所属するサッカー部のレギュラーにも選ばれた瞬平は、毎日誰よりも遅くまで練習をして下校する日々を送っている。今日もグラウンドの整備も片付けも自ら行い一番最後に部室から出たのだが、本人も気付かぬうちにいつもよりも長く居残りしていたらしい。ドアに備え付けられた小窓から見える空は真っ暗だ。

 瞬平はスマホで時刻を確認すると、静かに目を閉じて溜息を吐いた。門限の八時を少し過ぎている、今日もきっと厳しい父親に叱られるだろう。部活動を軽視し勉学に努めなさいと口を酸っぱくして言う父親の姿が容易に瞬平の目に浮かぶ。
 だが瞬平の心を憂鬱にさせているのはそれだけではない。帰宅ラッシュと夜の通勤ラッシュがちょうど重なり、瞬平が乗車した駅から二つ先の駅でどっと人の波が押し寄せその身体がドアに押し付けられたのだ。
 咄嗟に脚の間にエナメルバックを置いたところまでは良い判断だったが、思ったより混雑しているせいで若干お尻を突き出すような体勢になっている。窮屈さに気を取られてそのことに気付いていない瞬平は、両腕の肘から先を小窓にべったりとつけて顔が着かないようにするのに必死な様子だ。
 頭を腕の内側に守るように入れ、肩と肩が触れ合うほどの距離の近さはどうにも慣れない、と瞬平は顔を歪める。パーソナルスペースに他人が侵入すること、他人に触れられることが昔から大の苦手だった瞬平にとって苦痛である時間があと三十分も続くということに、瞬平は早く終われと内心祈りやり過ごすことしか出来なかった。

 混雑が始まってから一駅ほど過ぎた頃、それは突如として始まった。
 軽く突き出た瞬平のお尻を妙な感触が襲う。初めは混雑しているから手が当たっただけだろう、と気にしていなかった瞬平だったが、サッカーで鍛えたぷりぷりの感触を味わうように大きな手が尻朶を鷲掴んだことで、それが故意の痴漢なのだと漸く気付いた。

「……っ、ぁ」

 痛いくらいに掴む力や尻朶を覆うほど大きなサイズの手が、自分を痴漢しているのが男性だと瞬平に知らしめる。こうなってしまってから自分の体勢が痴漢にお尻を差し出すような恥ずかしい恰好であることを理解した瞬平は、熟れた林檎のように耳まで真っ赤へ染め上げる。
 瞬平の反応に気を良くしたのか、痴漢の手は更に大胆さを増し瞬平の尻朶を強く左右に掴み広げた。穴が強引に暴かれる感覚に気持ち悪さを感じて瞬平は眉を顰めて唇を強く噛んだ。怒りや悔しさ、恐怖や羞恥……沢山の感情が一気に押し寄せてきて瞬平の身体がぷるぷると震える。どうして俺がこんな目に――。瞬平の気持ちを見透かすように痴漢男が瞬平の耳元でうっとりと囁いた。

「いつも瞬平君を見ていたんだ……やっぱり本物の君は想像より何倍も可愛い……」
「ひぃっ! な、何言って……」

 脳みそに直撃するような低く甘い声が瞬平の耳の奥まで届くと、甘い痺れが瞬平の身体に走りぎゅっと心拍が上昇した。痴漢男の声は思っていたよりも若く不快ではなかったことに瞬平は軽く驚きを覚え、動揺した。何故名前を知っているのか? という疑問は動揺の海に消えていく。瞬平の隙を感じ取った痴漢男は、すぐさま尻朶から脇腹を通るように両手を這わせて行き、そのいやらしい手は少し汗ばんだ胸元へと行き着くとツンと主張する二つの突起をシャツの上から摘み上げた。
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