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偏食男子とヴァンパイア/吸血表現、甘々
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しおりを挟むついに、アリスが『おかわり』を強請ってきたのだ。
「もう一度でも味わったら二度と抜け出せない気がしてずっと我慢してた。けど誰にもお前を取られたくなくて……」
「ア、リス」
「頼む、もう限界だ……お前が欲しい」
最近、夜になるとふらりと行方をくらましていたアリスが突然夜中に部屋に押しかけてきてそう言った。室内は薄暗く、アリスの表情は見えない。
寝ている誉也を起こしてまで言ったアリスの声にはいつものような自信はどこにも感じられず、誉也は彼の名前をぽつりと溢すことしか出来なかった。
アリスが覆い被さるように乗り上げるとベッドが二人分の体重を受けてぎしりと軋む。
距離が近くなったことで漸くアリスの顔が見えるようになった。アリスの顔が苦しそうに歪む。以前『食事』をされてから十日程経ったのだ、その間本当に一度も『食事』していないのなら栄養失調か何かで倒れてしまってもおかしくない状況ではあった。
アリスの頬は少しやつれ、目の下に隈のような物も見える。アリスが微弱ながら震えているのを布団越しに感じた誉也の胸がきゅっと痛み、その存在を主張した。
今にも消えてしまいそうなくらい儚く弱ってしまったアリスの姿は、誉也に罪悪感を感じさせるには十分だった。
何も言わず静かに目を閉じた誉也の顔に、影が掛かる。すぐに首筋に牙が宛がわれ、ぷつりと皮膚が貫かれる感覚に誉也が身震いした。
「っ、ン、はぁ、っ……」
血液が引っ張られ体温が上昇する。あの時は感じなかったはずの快感が痛みに混じって誉也を襲う。早く終わってくれ、と内心思う誉也の願いも虚しく、飢餓状態のアリスは極上の『食事』を前に我を忘れ貪りついて離れない。
「ぁ、っん……アリ、ス、ぁぁ、ッ!」
ジュルジュルとはしたない水音を立ててアリスが吸い上げるたび、甘い痺れが突き抜ける誉也の身体はびくんと跳ねた。いつの間にか両手首をシーツに縫い付けられるように掴み押し付けられており、誉也は逃げ出せない。否、それがなくとも逃げ出そうとはしなかっただろう。誉也の頭の中はアリスに対する罪悪感と快楽でいっぱいで、抵抗することや逃げることの選択肢は初めから存在すらしていなかった。
痛いくらいに勃起した熱杭が、ぴったりと合わさったアリスの身体に擦れて気持ちいい。ちょうど重なった位置にあるアリスの熱杭も固く滾っており、欲望に負けた誉也は動きづらい中、必死に腰をくねくねと動かして一人自慰にふけっていた。
「ン、ぁあッ、も、イく、ッ! アリスっ、イく、ッ、ぁああッ!」
絶頂と『食事』で意識が朦朧としてきた誉也の頭が軽く白んで霞む。血液を失いすぎてるのかもしれない、とぼやけた頭の隅で誉也は他人事のようにそう思った。
尚もアリスの『食事』はまだまだ終わりを見せない。一度イって敏感になった誉也の身体を『食事』の快楽が断続的に襲う。確かに気持ちいいが性的に触れられていないことでじわじわと生殺しにされていた誉也はだんだんと気持ちいいことしか考えられなくなってきていた。
アリスはただ『食事』をしているだけなのに、はしたなく欲望を追い求める自分がどこか汚く誉也にはそう思えた。
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