配達人は人間である!

しろくま

文字の大きさ
2 / 7

地球人と異世界人

しおりを挟む
重い台車を持ち、そびえ立つビルの60階建ての59階の個人宅にたどり着いた。
ピンポーン
「・・・・・・・・・・」
ピンポーン
「・・・・・・・・・・」
誰も出ないので、不在票を入れ、エレベーターで半分くらい下ったところで電話がなった。
嫌な予感しかしないので出たくなかったが、出るしかないので、真顔で元気よくでた。
「はい、●●配達、鈴木ですー」
「あ、すいませーん、●●ですけどお、今お風呂入っててえ、出られませんでしたあ、もう一回来てもらえますう?」
「………かしこまりましたー、すぐに伺いますー」
限界まで愛想をよくした声で返事をし、ぶつっと電話が切れ、携帯を地面に叩きつけたいのを我慢し、先ほどの部屋に行き、お風呂上りのシャンプーの香りを漂わせ、今度はすんなり出てきた住人のサインをもらい、荷物を渡した
無言で荷物を受け取り、機嫌が悪そうに受け取り、ドアを閉めた。
ここがマンションでなければ叫び倒しているところだ。
次の荷物を持ち、30階にあるお宅へと向かい、チャイムを鳴らす。
すると、ぱたぱたと音を鳴らし、滑らかなタコ足を器用に使い、ドアを開けた。
「はいはーい」
ガチャ
「どうもー、配達ですー」
「あらあら、どうもねー熱い中大変だったでしょ、中で涼んでいって?」
「大変ありがたいんですが、すみません、まだ仕事が…」
とても魅力的なお誘いだが、残念だ。
「あらあら、大変ね…、あじゃあちょっと待ってて」
そういい、長い手(足?)を伸ばし、奥の冷蔵庫からコーラを取り、くれた。
「これ飲んで頑張って」
「ありがとうございます…!」
過去に重い思いをして運んだであろうコーラを片手に、軽くなった台車を押しエレベーターに乗り込もうとしたら、遠くのほうから「ありがとねー!」と叫び声が聞こえた。
先ほどまで芽生えていた殺意が一瞬で消えた。
単純化と思うだろう。しかし、配達員なんてこんなもんだ。
先ほどのような(ドアを開けた瞬間刺したくなるような)人間もいるし、女神のような人間よりも優しい異世界人もいる。

昨今異世界人と地球人が共存したことにより、人口は増加した。
それに伴い、様々な企業が働き方改革を行い、色んな職業が減ったり増えたりした。
その中で「配達」はおおまかに、陸、海、空の3つに分類されるようになった。
地上に住むもの、地上何百メートルの樹木にすむもの、海中にすむのも、など、
多種多様な住居が増え、そのニーズにあった配達方法も必要になったわけで。
まあ、ただの人間が空や海を駆け回れるわけがないわけで、
基本的に俺らみたいな普通の人間は狭くて飛べない区画や、地中に住むものたちを対象として物を運ぶ。
給料は昔と変わらず歩合制で、配達分がもらえるため、楽々と空を飛べたりできるやつらが有利かと思われるが実はそうではない。
まあその辺の話をしようとすると長くなるので、ここまでにしとこう。
とりあえず今言いたいのは、地球の技術が発達したからといって地球人の頭まで良くなるわけではないということだ。
客は金を払っているんだから配達してもらえるのが当然と思っていて、時間を指定してるのにその時間にいない、それだけでも意味がわからないのに、「指定した時間にいたのに配達がこなかった」などと意味不明なことをいう。同じ言葉を喋っているのに、理解ができない。
何度もチャイムを押したし、叫んだし、いないことは確認済みなのだ。
当初、異世界人は常識が違うという差別用語が飛び交っていたが、これが地球人の常識だというのなら、俺は今すぐにでも地球人をやめたい。
そんなことを思っていると、腰の子機がなり、配達の連絡がきたので、しかたなく仕事に戻る。
客の希望通りにしてクレームがくる仕事なんて今すぐ辞めたい、常々思っているが、そう簡単に仕事は手放せない。
技術が発展して、なんでも手に入る世の中になっても、それを運ぶという行為に進化はない。職がなくならないのはいいことだが、もう少し常識をあらためてほしい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

処理中です...