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「配達」とは
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再配達の連絡を受けて、それを届けた帰り、雨が降ってきた。
予報では曇りだったのだが、降水確率は10%だったので、嘘ではない。
しかしこの季節の雨はなかなかにきつい。
11月のため、昼間は晴れていて、暖かいのだが、日が落ちてくるにつれ気温は下がり、
更には雨が降ったことにより手が氷のように冷たくなり、かじかんで感覚がなくなる。
軍手をすればまだマシになるが、ものによっては滑るし、ないほうが効率的に動ける。
キンキンに冷えた荷物を次々と配達し、ようやく本日最後の荷物となった。
ここは近くに車を止められる場所がなく、近くの道に停めるしかない。
車を停め、極力荷物が濡れないよう庇いながら走って届け先まで向かった。
一軒家のため、インターホンを押し、屋根がない場所で雨に濡れながら待った。
しばらくしても返答がないため、もう一度押し、配達です、と大声で叫んだが無言だったため、不在票を入れ引き返そうとしたその時、ドアががちゃっと空いた。
さっさと出ろ、という不満を必死に隠し、できる限りの笑顔を作り、配達です、と言おうとした瞬間飛んできた言葉は配達に対しての礼ではなかった。
「ちょっと!遅いわよ!時間指定したじゃない!」
確かにこの客は時間を指定していたが、それは午前中であり、もちろん一度行った。
たまにいるのだ。時間指定したのになんでその時間にこないのか、と。
「午前中にお伺いして、いらっしゃらなかったので、不在票をこちらにお入れしてます」
「そんなもの受け取ってないわよ!」
「え?ええ、ですからこちらのポストに入れました」
そういい、ポストに手を伸ばした瞬間、隣の家まで聞こえるのではないかというほどの奇声を発した。
「ちょっと!!!そんな手で触らないでよ!!!」
…俺らは病原菌かなにかか?
不服そうに郵便受けを見て、そこには色んなチラシがぐちゃぐちゃに入っていた。
そして、たった今入れたものとはまた別に、午前中の時間が刻まれた不在票が出てきた。
「そちらに一度目に配達した時間帯が記載されております」
と、補足説明(まあ9割皮肉の意味も込め)すると、
「ちゃんと家にいたわよ!!チャイム鳴らしたの!?これ手書きでごまかしてるんじゃないの?!」
ここまで意味不明なことがよく言えるなと逆に関心する。
「時間の記載に関しては機械にて行っているので、問題ありません、
何度か押しましたが、ご不在のようだったので…。こちらに監視カメラをご確認いただければ大丈夫だと思いますよ」
客はいいだろうが、俺は屋根のないところで、これ以上雨をかぶりたくなかったし、
早く帰りたかったので、さっさと説明をし、荷物を渡した。
「こちら荷物になります、ハンコかサインをお願いします」
そしてやはり不満そうに荷物を奪い取るように俺の手から受け取った。
「ちょっと!濡れているじゃない!!ねえ!!」
帰れなかった。
「…すみません、雨が降っているもので…」
「傘をさすなり、なんなりすればいいじゃない!中のものが濡れていたらどうするのよ!どう責任取るのよ!」
「すみません、少しでも早くお荷物を必要としているかと思い、急いだ次第で…」
「言い訳しているんじゃないわよ!」
「はい、ですから次回よりどれだけ遅くなっても丁寧に運ぶように致しますね」
そう笑顔で返すと、さらに不満げな表情をし、なにも言わずものすごい勢いでドアを閉めた。
結局はこういう人間はただ不満を言いたいだけなのだ。
それにいちいち謝って、対処してたらきりがない。
結局サインはもらえなかったが、なくても問題はないのでよいのだが、さすがに最後のほうにこういう客がくると精神的に疲れる。
こういう日は早く帰って、趣味に没頭するのが一番だ。
明日の休みを楽しみに足取り軽く車で帰っているところに、明日同僚が体調不良のため、
休みがなくなった旨の報告により、まるで泥沼を歩いているかのような気分に変わりながら家に帰った。
てきとーにシャワーを浴び、てきとーに飯を食い、いつの間にか寝ており、朝になり、
昨日とはうって変わって晴天の中、仕事をした。
そして、いつも通り理不尽な客の相手をし、へとへとになりながら、やっと休みの明日を胸中に足取り重く帰路についた。
1Lの小さなアパートは男の一人暮らしにはちょうどよかった。
洗濯機を回し、てきとーに飯を済ませ、狭いベッドにダイブした。
体が鉛のように重く、一生起きられないのではないかと言うほどに疲労している。
精神的にもかなりくる仕事で、趣味の一つや二つないとおそらく耐えられなかっただろう。上半身のみ起き上がり手を伸ばし、ヘッドホンをつけ、目を閉じ、スイッチを入れた。
すると意識が別の場所に移された。
今俺がつけたのは、VRだ。昔はヘッドギアのように顔全体、手足に機械をつけないと使用できなかったが、技術が発展して、イヤホンをつけるだけで、脳に電波を送り、異世界電脳空間に意識を飛ばしてくれる。意識のみなので、身体に影響はない。
まあ言うなれば夢の中で自由に動ける機械ってことだ。
発売したては人気すぎて手に入らなかったが、最近ようやく購入でき、その中の「ハンティング」というゲームにハマっている。これをつければ、名前の通り、狩りもできるし、ゲームもできるし、のんびりお散歩やショッピング、メールだってできる。それに身体を動かさないので、寝たままでできる。まあ意識としては起きているので、睡眠をとったことにはならないが、明日は休みなのだ、気兼ねなくできる。
この世界を楽しむ事が趣味の一つであり、そして最近はもう一つ楽しみができた。
それはー
「あ、おはようございます!くまくまさん!…いや、こんばんわ!かな?」
くまくまとはこのゲーム内でのニックネームだ。本名でやってる奴もいるし、俺のように違う名前でプレイするやつもいる。
言ってしまえば性別も声も変えられるから気兼ねなく喋れる。まあ俺は性別はそのままだから、知ってるやつに会ったらバレるかもしれないが、見た目がまったく違うのでその可能性は低い。このゲームは様々なアカウントが自分でカスタムでき、おれは名前から、熊のぬいぐるみのアバターを使用している。そして、今話しかけてくれた目の前の子は、今は死語の「ロリータ」というやつだ。花がいっぱいついたワンピースにうさ耳という、ど定番といえばど定番だが、今じゃもうほとんどいない見た目だ。
それだけにわかりやすいが。
「お、ちよちよさん、こんばんわ、もう夜ですよ。お疲れ様です」
「今日も遅いログインでしたねえ、お疲れ様です!」
「まじで、ほんっとに辞めてえっすわ、この仕事。…まあ次の仕事が見つからないから本当には辞められないけど……」
「あ、例によってまたクズなお客さんに当たったんですか?」
「てか、人間にはクズしかいない」
和やかに悪口を言うのがここでの定番になっている。
ちよちよさんとは2年ほどの付き合いだ。
このゲームを始めたばかりの頃、操作にまだ慣れておらず、一人でテンパっていた頃に話しかけてくれたのがこの人だ。
男か女か、はたまた地球人じゃない可能性もあるが、そんなことこのゲーム内じゃ関係ない。そんなことを気にするものはこんな所にはいない。
「わかりますう、私も今日くっそウゼェ客がいて、荷物顔面に投げつけたかったですもん!」
「投げつければよかったのに」
半分冗談で半分本気で笑いながら言った。
彼女(このゲーム内で)も同じ配達業で働いているらしい。(その時点で女性というのは可能性として低いが)
「ほんとですね!代わりに車の中で蹴っときました!変形しない程度に」
てへぺろと舌を出していえばなんでも許されると思っている、その通りだ。
「ナイス」
親指でグッとナイスな表現をした。
「てか、最近の客、まあだいたいは地球人なんですけど、配達してもらえるのが当然って顔してません?こっちが苦労してるのなんて、まったく分かってないくせに!」
全面的に同意だし、この意見を否定するやつがいたら決闘を申し込みたい。
このゲーム内ならデスは何度もできるため、お互いに同意の上なら戦闘できるのだ。しかも中々に殴った感があり(実際に壁を殴ってみたら中々にストレス解消になった)その感覚も人気の一つなのだ。
「まじでそれっすわ。だいたい不在にする事が多いってわかってるなら、宅配ボックスくらい用意してほしいっすね。盗まれる可能性があるとかいいますが、わざわざ見えない何かを盗むなんて、リスク高いこと今時しませんよ」
「ねえ!しかも、エレベーターない所で、最上階まで行って、重い飲み物持っていったのにいなくて、ボックスないから置き配できないの、ほんっっっっとにむかつきますううう」
シュッシュっと殴るモーションをし、怒りの表現をしていた。
「…あ、私ばっかり愚痴ってしまってすみません…」
普通の人ならこれだけ愚痴を聞けば嫌になると思うが、自分も同じ気持ちなのでむしろ聞いていて納得しかないし、ここまで同じ話ができることに心地よさを感じていた。
「くまくまさんは明日も仕事ですか?」
「いえ、明日はひっさしぶりの休みなのでひたすらに家でのんべんだらりとするつもりです」
「お、私と同じですね!よかったら明日狩にいきません?」
「お、いいですね!何時くらいがいいですか?」
「…んー朝は寝たいので15時くらいからでどうでしょう」
さすがちよちよさん、朝は寝たいし、頭が働くのがそのくらいの時間ということまで一緒なのだ。現実ではほとんど友達がいないし、ゲーム内でもそんなにフレンドもいないが、その中でいえば親友といっても過言ではないほどに一緒にいて落ち着く人?だ。
「じゃあまた明日!お疲れ様でした」
「お疲れ様です!」
現実世界の天井に切り替わり、一息ついた。目を瞑るとすぐに意識が手放され、相当に疲れていたのだとわかった。
彼女?が現実世界にいればいいのに、何度そう思ったことか。バーチャルな世界が日常的になった今、ゲーム内で戦った全く知らない相手が近所に住んでいた、なんてザラにある話だ。実はすぐ近くにいたり?なんて考えていたら、気づいたら昼になっていた。
のろのろと起き上がり、シャワーを浴びて目を覚まし、エネルギーを摂取してバーチャルの世界に移動するまえに、携帯を見るとメールが来ていたことに気づいた。
そこにはちよちよさんから、仕事が入ってしまったため、今日の約束がダメになった内容が書かれていた。
この配達業という業界は、基本的に担当のエリアが決まっており、担当のものが休むと、基本的には変わりがいない。
そのため、他の地域を担当している人たちが手分けして手伝うのだ。デスク仕事と違って簡単に変わりが見つからない。
人を入れればいいというが、じゃあ普段はどうすればいいという話になってしまう。歩合制というのは、配達の物が増えれば金額も増えるが、減れば少なくなるのが必然だ。ギリギリで回さざるを得ないのがこの業界の難しいところだ。
残念だが、しょうがないとは思う。
自分もよくあることなので。
せっかくシャワーを浴びて目も覚めてしまった為、外出することにした。休みの日に買い出しをしないと、普段は時間が無さすぎる。まあたまには、のんびり何も考えずに外に出ることも大事だ。仕事の事を考えずに陽の光を浴びるというのは気持ちがいい。
予報では曇りだったのだが、降水確率は10%だったので、嘘ではない。
しかしこの季節の雨はなかなかにきつい。
11月のため、昼間は晴れていて、暖かいのだが、日が落ちてくるにつれ気温は下がり、
更には雨が降ったことにより手が氷のように冷たくなり、かじかんで感覚がなくなる。
軍手をすればまだマシになるが、ものによっては滑るし、ないほうが効率的に動ける。
キンキンに冷えた荷物を次々と配達し、ようやく本日最後の荷物となった。
ここは近くに車を止められる場所がなく、近くの道に停めるしかない。
車を停め、極力荷物が濡れないよう庇いながら走って届け先まで向かった。
一軒家のため、インターホンを押し、屋根がない場所で雨に濡れながら待った。
しばらくしても返答がないため、もう一度押し、配達です、と大声で叫んだが無言だったため、不在票を入れ引き返そうとしたその時、ドアががちゃっと空いた。
さっさと出ろ、という不満を必死に隠し、できる限りの笑顔を作り、配達です、と言おうとした瞬間飛んできた言葉は配達に対しての礼ではなかった。
「ちょっと!遅いわよ!時間指定したじゃない!」
確かにこの客は時間を指定していたが、それは午前中であり、もちろん一度行った。
たまにいるのだ。時間指定したのになんでその時間にこないのか、と。
「午前中にお伺いして、いらっしゃらなかったので、不在票をこちらにお入れしてます」
「そんなもの受け取ってないわよ!」
「え?ええ、ですからこちらのポストに入れました」
そういい、ポストに手を伸ばした瞬間、隣の家まで聞こえるのではないかというほどの奇声を発した。
「ちょっと!!!そんな手で触らないでよ!!!」
…俺らは病原菌かなにかか?
不服そうに郵便受けを見て、そこには色んなチラシがぐちゃぐちゃに入っていた。
そして、たった今入れたものとはまた別に、午前中の時間が刻まれた不在票が出てきた。
「そちらに一度目に配達した時間帯が記載されております」
と、補足説明(まあ9割皮肉の意味も込め)すると、
「ちゃんと家にいたわよ!!チャイム鳴らしたの!?これ手書きでごまかしてるんじゃないの?!」
ここまで意味不明なことがよく言えるなと逆に関心する。
「時間の記載に関しては機械にて行っているので、問題ありません、
何度か押しましたが、ご不在のようだったので…。こちらに監視カメラをご確認いただければ大丈夫だと思いますよ」
客はいいだろうが、俺は屋根のないところで、これ以上雨をかぶりたくなかったし、
早く帰りたかったので、さっさと説明をし、荷物を渡した。
「こちら荷物になります、ハンコかサインをお願いします」
そしてやはり不満そうに荷物を奪い取るように俺の手から受け取った。
「ちょっと!濡れているじゃない!!ねえ!!」
帰れなかった。
「…すみません、雨が降っているもので…」
「傘をさすなり、なんなりすればいいじゃない!中のものが濡れていたらどうするのよ!どう責任取るのよ!」
「すみません、少しでも早くお荷物を必要としているかと思い、急いだ次第で…」
「言い訳しているんじゃないわよ!」
「はい、ですから次回よりどれだけ遅くなっても丁寧に運ぶように致しますね」
そう笑顔で返すと、さらに不満げな表情をし、なにも言わずものすごい勢いでドアを閉めた。
結局はこういう人間はただ不満を言いたいだけなのだ。
それにいちいち謝って、対処してたらきりがない。
結局サインはもらえなかったが、なくても問題はないのでよいのだが、さすがに最後のほうにこういう客がくると精神的に疲れる。
こういう日は早く帰って、趣味に没頭するのが一番だ。
明日の休みを楽しみに足取り軽く車で帰っているところに、明日同僚が体調不良のため、
休みがなくなった旨の報告により、まるで泥沼を歩いているかのような気分に変わりながら家に帰った。
てきとーにシャワーを浴び、てきとーに飯を食い、いつの間にか寝ており、朝になり、
昨日とはうって変わって晴天の中、仕事をした。
そして、いつも通り理不尽な客の相手をし、へとへとになりながら、やっと休みの明日を胸中に足取り重く帰路についた。
1Lの小さなアパートは男の一人暮らしにはちょうどよかった。
洗濯機を回し、てきとーに飯を済ませ、狭いベッドにダイブした。
体が鉛のように重く、一生起きられないのではないかと言うほどに疲労している。
精神的にもかなりくる仕事で、趣味の一つや二つないとおそらく耐えられなかっただろう。上半身のみ起き上がり手を伸ばし、ヘッドホンをつけ、目を閉じ、スイッチを入れた。
すると意識が別の場所に移された。
今俺がつけたのは、VRだ。昔はヘッドギアのように顔全体、手足に機械をつけないと使用できなかったが、技術が発展して、イヤホンをつけるだけで、脳に電波を送り、異世界電脳空間に意識を飛ばしてくれる。意識のみなので、身体に影響はない。
まあ言うなれば夢の中で自由に動ける機械ってことだ。
発売したては人気すぎて手に入らなかったが、最近ようやく購入でき、その中の「ハンティング」というゲームにハマっている。これをつければ、名前の通り、狩りもできるし、ゲームもできるし、のんびりお散歩やショッピング、メールだってできる。それに身体を動かさないので、寝たままでできる。まあ意識としては起きているので、睡眠をとったことにはならないが、明日は休みなのだ、気兼ねなくできる。
この世界を楽しむ事が趣味の一つであり、そして最近はもう一つ楽しみができた。
それはー
「あ、おはようございます!くまくまさん!…いや、こんばんわ!かな?」
くまくまとはこのゲーム内でのニックネームだ。本名でやってる奴もいるし、俺のように違う名前でプレイするやつもいる。
言ってしまえば性別も声も変えられるから気兼ねなく喋れる。まあ俺は性別はそのままだから、知ってるやつに会ったらバレるかもしれないが、見た目がまったく違うのでその可能性は低い。このゲームは様々なアカウントが自分でカスタムでき、おれは名前から、熊のぬいぐるみのアバターを使用している。そして、今話しかけてくれた目の前の子は、今は死語の「ロリータ」というやつだ。花がいっぱいついたワンピースにうさ耳という、ど定番といえばど定番だが、今じゃもうほとんどいない見た目だ。
それだけにわかりやすいが。
「お、ちよちよさん、こんばんわ、もう夜ですよ。お疲れ様です」
「今日も遅いログインでしたねえ、お疲れ様です!」
「まじで、ほんっとに辞めてえっすわ、この仕事。…まあ次の仕事が見つからないから本当には辞められないけど……」
「あ、例によってまたクズなお客さんに当たったんですか?」
「てか、人間にはクズしかいない」
和やかに悪口を言うのがここでの定番になっている。
ちよちよさんとは2年ほどの付き合いだ。
このゲームを始めたばかりの頃、操作にまだ慣れておらず、一人でテンパっていた頃に話しかけてくれたのがこの人だ。
男か女か、はたまた地球人じゃない可能性もあるが、そんなことこのゲーム内じゃ関係ない。そんなことを気にするものはこんな所にはいない。
「わかりますう、私も今日くっそウゼェ客がいて、荷物顔面に投げつけたかったですもん!」
「投げつければよかったのに」
半分冗談で半分本気で笑いながら言った。
彼女(このゲーム内で)も同じ配達業で働いているらしい。(その時点で女性というのは可能性として低いが)
「ほんとですね!代わりに車の中で蹴っときました!変形しない程度に」
てへぺろと舌を出していえばなんでも許されると思っている、その通りだ。
「ナイス」
親指でグッとナイスな表現をした。
「てか、最近の客、まあだいたいは地球人なんですけど、配達してもらえるのが当然って顔してません?こっちが苦労してるのなんて、まったく分かってないくせに!」
全面的に同意だし、この意見を否定するやつがいたら決闘を申し込みたい。
このゲーム内ならデスは何度もできるため、お互いに同意の上なら戦闘できるのだ。しかも中々に殴った感があり(実際に壁を殴ってみたら中々にストレス解消になった)その感覚も人気の一つなのだ。
「まじでそれっすわ。だいたい不在にする事が多いってわかってるなら、宅配ボックスくらい用意してほしいっすね。盗まれる可能性があるとかいいますが、わざわざ見えない何かを盗むなんて、リスク高いこと今時しませんよ」
「ねえ!しかも、エレベーターない所で、最上階まで行って、重い飲み物持っていったのにいなくて、ボックスないから置き配できないの、ほんっっっっとにむかつきますううう」
シュッシュっと殴るモーションをし、怒りの表現をしていた。
「…あ、私ばっかり愚痴ってしまってすみません…」
普通の人ならこれだけ愚痴を聞けば嫌になると思うが、自分も同じ気持ちなのでむしろ聞いていて納得しかないし、ここまで同じ話ができることに心地よさを感じていた。
「くまくまさんは明日も仕事ですか?」
「いえ、明日はひっさしぶりの休みなのでひたすらに家でのんべんだらりとするつもりです」
「お、私と同じですね!よかったら明日狩にいきません?」
「お、いいですね!何時くらいがいいですか?」
「…んー朝は寝たいので15時くらいからでどうでしょう」
さすがちよちよさん、朝は寝たいし、頭が働くのがそのくらいの時間ということまで一緒なのだ。現実ではほとんど友達がいないし、ゲーム内でもそんなにフレンドもいないが、その中でいえば親友といっても過言ではないほどに一緒にいて落ち着く人?だ。
「じゃあまた明日!お疲れ様でした」
「お疲れ様です!」
現実世界の天井に切り替わり、一息ついた。目を瞑るとすぐに意識が手放され、相当に疲れていたのだとわかった。
彼女?が現実世界にいればいいのに、何度そう思ったことか。バーチャルな世界が日常的になった今、ゲーム内で戦った全く知らない相手が近所に住んでいた、なんてザラにある話だ。実はすぐ近くにいたり?なんて考えていたら、気づいたら昼になっていた。
のろのろと起き上がり、シャワーを浴びて目を覚まし、エネルギーを摂取してバーチャルの世界に移動するまえに、携帯を見るとメールが来ていたことに気づいた。
そこにはちよちよさんから、仕事が入ってしまったため、今日の約束がダメになった内容が書かれていた。
この配達業という業界は、基本的に担当のエリアが決まっており、担当のものが休むと、基本的には変わりがいない。
そのため、他の地域を担当している人たちが手分けして手伝うのだ。デスク仕事と違って簡単に変わりが見つからない。
人を入れればいいというが、じゃあ普段はどうすればいいという話になってしまう。歩合制というのは、配達の物が増えれば金額も増えるが、減れば少なくなるのが必然だ。ギリギリで回さざるを得ないのがこの業界の難しいところだ。
残念だが、しょうがないとは思う。
自分もよくあることなので。
せっかくシャワーを浴びて目も覚めてしまった為、外出することにした。休みの日に買い出しをしないと、普段は時間が無さすぎる。まあたまには、のんびり何も考えずに外に出ることも大事だ。仕事の事を考えずに陽の光を浴びるというのは気持ちがいい。
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