10 / 47
第十話・元カノ?
しおりを挟む
その噂話をショップへと持ち込んできたのは、昼休憩を終えたばかりの大庭詩織だった。根っからの地元民ということもあり、詩織は他のテナントにも昔からの知り合いが多い。社員食堂でたまたま会ったという同級生の香澄は、アジアン雑貨ばかりを扱う店の副店長らしい。
穂香も何度か見かけたことがあるが、いつもロングのチャイナドレスを着ていて、なかなか目立つ美人さんだ。
「香澄から聞かれたんですけど、うちのオーナーって『ルーチェ』のオーナーと最近まで付き合ってたって本当ですか?」
『ルーチェ』というのは、穂香達の店『セラーデ』の通路を挟んで斜め向かいにあるアパレルショップのこと。オーナー自らが韓国で仕入れて来たレディース商品ばかりを扱うセレクトショップ。『セラーデ』よりは少し上、三十代からのキャリアウーマン向け商品が多い。
「ああ、可能性はありそうだよね。確か、向こうのオーナーとは幼馴染じゃなかったっけ? 本店同士も近いし」
「あ、そう言えばそうでしたね。『ルーチェ』のオープンにはうちのオーナーが結構協力してあげたって聞いたことあります」
「そうそう、お互いがそれぞれの会社の役員になってるし、親の代からの付き合いっぽいね。ハトコとか、何かそういう遠縁じゃなかったっけ?」
平日の昼間ということもあって客足も少なく、閑散とした店内で弥生と詩織がヒソヒソと噂話に花を咲かせる。同じフロアにはレディース商品を取り扱う店が集中しているから、ショップを越えてその手の話が回ってくるのはとても早い。きっと他の店でも大きく話題にされているんだろう。
特に川岸はあの端正な顔立ちから他店スタッフからも人気がある。そのせいでちょっとしたことでも噂になりやすい。だから一緒に住んでいるなんてことが知れたら一瞬で館内大騒ぎになるのが目に見えている。穂香はこっそりと冷や汗を拭った。
——絶対、バレないようにしなきゃ……
島什器のカットソーを畳み直しながら、二人の話は黙って聞くだけに留める。オーナーの元カノって聞いて最初は少しドキッとしたけれど、穂香はよく考えてから首を捻った。
――あれっ、『ルーチェ』のオーナーって確か……
顔見知りの百七十センチ近い長身の女性のことを頭に浮かべる。『ルーチェ』のオーナーである山崎留美のことは、その身長で七センチはあるヒールを履いていたから、初めて会った時はイベントに借り出されたモデルさんだと勘違いしてしまった。化粧映えのするはっきりした顔立ちの美人で、とても表情の豊かな女性だ。
確かにあの背丈だと、並みの男性ではつり合いが取れない。川岸くらいの身長がないと男性側が萎縮してしまってもおかしくはない。
「オーナーも留美ちゃんって下の名前で呼んでるくらいだし、あり得なくもないんじゃない?」
「えー、でも、お似合い過ぎて逆に面白くないですよね」
長身の美男美女のカップル。たまに並んで歩いている姿を目にすることはあったが、確かにそれは異次元の光景だった。
川岸のマンションに居候し始めてから随分経つが、昔の交際相手のことを話すほどは打ち解けてはいない。どちらかと言うと、互いに意識しないよう平静を保って生活している。特に川岸の方は穂香のことを一従業員としか思っていないみたいだったし、穂香だって彼のマンションを追い出されても困るから、ただの居候に徹していた。今更、ネットカフェに戻るのは勘弁したい。
でも、会話は少なくても、一緒に住んでいれば何となく自然と分かることもある。例えばそう、彼を捨てて家を出ていった元婚約者が可愛い雑貨が好きで、料理が得意だということなど。
だから、穂香は弥生達の会話に首を傾げてしまう。少し前に別れたという元カノがどうしても斜め向かいの店のオーナーとは思えないのだ。川岸の部屋に残されている雑貨類と山崎オーナーとが全く結びつかない。
――山崎オーナーって、昨日も一階でお惣菜を買ってたよね……?
シフトが早番の時に一階の食品売り場で食材を買って帰ることがあるが、割と高頻度で『ルーチェ』のオーナーのことを見かける。いつも出来合いの総菜コーナーで難しい顔をしてパックを品定めしていて、ちらっと覗き見たカゴの中に加工前の食材が入っていたためしがない。だから、どう考えたって彼女は料理を全くしない人だ。
もちろん、弥生達と同じように川岸達の関係はとても気になるが、二人が元恋人というのは無いなと結論付ける。どちらかと言うと、山崎オーナーは元カノとは真逆のタイプだとしか思えない。
「あ、ほら。噂をすれば――」
弥生が好奇心丸出しの声で、通路の先を顎で示す。詩織と一緒に首を伸ばして店先を覗いてみると、オーナー二人が仲良く並んでこちらへと向かってくるところだった。どちらも手に資料を持ちながら話し合っているところを見ると、今日は店長やオーナーが参加するテナント会議の日だったらしい。何か難しい顔で議論しているから、また面倒なイベントをモール側から提案されたのだろう。
「――自店イベントの翌週にまたイベントって、本当に勘弁して欲しいよね。ここって各テナントのこと、何も把握してないわっ」
「来年からは年間のイベント計画をもっと詳細に出して貰うよう、次の会議で提案するしかないな」
「日程が決まってない計画書なんて、何の意味も無いわよね……」
キレ気味に声を荒げて文句を言う山崎を、川岸が「まあまあ」と宥めている。その様子は確かに仲が良さそうで、二人はお互いに心を許し合っているという雰囲気だが、色恋とはまた別だ。性別を超えた古くからの友達という感じで、なぜこの二人が噂になったのかが不思議なくらいだ。気は合うけど恋愛には発展しないタイプの関係にしか見えない。
同じことを詩織も弥生も感じたらしく、「なーんだ」と少し詰まらなそうな表情で商品整理へと戻っていった。フロア内で回っている噂話だって、きっとすぐに自然消滅してしまうんだろう。
穂香も何度か見かけたことがあるが、いつもロングのチャイナドレスを着ていて、なかなか目立つ美人さんだ。
「香澄から聞かれたんですけど、うちのオーナーって『ルーチェ』のオーナーと最近まで付き合ってたって本当ですか?」
『ルーチェ』というのは、穂香達の店『セラーデ』の通路を挟んで斜め向かいにあるアパレルショップのこと。オーナー自らが韓国で仕入れて来たレディース商品ばかりを扱うセレクトショップ。『セラーデ』よりは少し上、三十代からのキャリアウーマン向け商品が多い。
「ああ、可能性はありそうだよね。確か、向こうのオーナーとは幼馴染じゃなかったっけ? 本店同士も近いし」
「あ、そう言えばそうでしたね。『ルーチェ』のオープンにはうちのオーナーが結構協力してあげたって聞いたことあります」
「そうそう、お互いがそれぞれの会社の役員になってるし、親の代からの付き合いっぽいね。ハトコとか、何かそういう遠縁じゃなかったっけ?」
平日の昼間ということもあって客足も少なく、閑散とした店内で弥生と詩織がヒソヒソと噂話に花を咲かせる。同じフロアにはレディース商品を取り扱う店が集中しているから、ショップを越えてその手の話が回ってくるのはとても早い。きっと他の店でも大きく話題にされているんだろう。
特に川岸はあの端正な顔立ちから他店スタッフからも人気がある。そのせいでちょっとしたことでも噂になりやすい。だから一緒に住んでいるなんてことが知れたら一瞬で館内大騒ぎになるのが目に見えている。穂香はこっそりと冷や汗を拭った。
——絶対、バレないようにしなきゃ……
島什器のカットソーを畳み直しながら、二人の話は黙って聞くだけに留める。オーナーの元カノって聞いて最初は少しドキッとしたけれど、穂香はよく考えてから首を捻った。
――あれっ、『ルーチェ』のオーナーって確か……
顔見知りの百七十センチ近い長身の女性のことを頭に浮かべる。『ルーチェ』のオーナーである山崎留美のことは、その身長で七センチはあるヒールを履いていたから、初めて会った時はイベントに借り出されたモデルさんだと勘違いしてしまった。化粧映えのするはっきりした顔立ちの美人で、とても表情の豊かな女性だ。
確かにあの背丈だと、並みの男性ではつり合いが取れない。川岸くらいの身長がないと男性側が萎縮してしまってもおかしくはない。
「オーナーも留美ちゃんって下の名前で呼んでるくらいだし、あり得なくもないんじゃない?」
「えー、でも、お似合い過ぎて逆に面白くないですよね」
長身の美男美女のカップル。たまに並んで歩いている姿を目にすることはあったが、確かにそれは異次元の光景だった。
川岸のマンションに居候し始めてから随分経つが、昔の交際相手のことを話すほどは打ち解けてはいない。どちらかと言うと、互いに意識しないよう平静を保って生活している。特に川岸の方は穂香のことを一従業員としか思っていないみたいだったし、穂香だって彼のマンションを追い出されても困るから、ただの居候に徹していた。今更、ネットカフェに戻るのは勘弁したい。
でも、会話は少なくても、一緒に住んでいれば何となく自然と分かることもある。例えばそう、彼を捨てて家を出ていった元婚約者が可愛い雑貨が好きで、料理が得意だということなど。
だから、穂香は弥生達の会話に首を傾げてしまう。少し前に別れたという元カノがどうしても斜め向かいの店のオーナーとは思えないのだ。川岸の部屋に残されている雑貨類と山崎オーナーとが全く結びつかない。
――山崎オーナーって、昨日も一階でお惣菜を買ってたよね……?
シフトが早番の時に一階の食品売り場で食材を買って帰ることがあるが、割と高頻度で『ルーチェ』のオーナーのことを見かける。いつも出来合いの総菜コーナーで難しい顔をしてパックを品定めしていて、ちらっと覗き見たカゴの中に加工前の食材が入っていたためしがない。だから、どう考えたって彼女は料理を全くしない人だ。
もちろん、弥生達と同じように川岸達の関係はとても気になるが、二人が元恋人というのは無いなと結論付ける。どちらかと言うと、山崎オーナーは元カノとは真逆のタイプだとしか思えない。
「あ、ほら。噂をすれば――」
弥生が好奇心丸出しの声で、通路の先を顎で示す。詩織と一緒に首を伸ばして店先を覗いてみると、オーナー二人が仲良く並んでこちらへと向かってくるところだった。どちらも手に資料を持ちながら話し合っているところを見ると、今日は店長やオーナーが参加するテナント会議の日だったらしい。何か難しい顔で議論しているから、また面倒なイベントをモール側から提案されたのだろう。
「――自店イベントの翌週にまたイベントって、本当に勘弁して欲しいよね。ここって各テナントのこと、何も把握してないわっ」
「来年からは年間のイベント計画をもっと詳細に出して貰うよう、次の会議で提案するしかないな」
「日程が決まってない計画書なんて、何の意味も無いわよね……」
キレ気味に声を荒げて文句を言う山崎を、川岸が「まあまあ」と宥めている。その様子は確かに仲が良さそうで、二人はお互いに心を許し合っているという雰囲気だが、色恋とはまた別だ。性別を超えた古くからの友達という感じで、なぜこの二人が噂になったのかが不思議なくらいだ。気は合うけど恋愛には発展しないタイプの関係にしか見えない。
同じことを詩織も弥生も感じたらしく、「なーんだ」と少し詰まらなそうな表情で商品整理へと戻っていった。フロア内で回っている噂話だって、きっとすぐに自然消滅してしまうんだろう。
53
あなたにおすすめの小説
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました
藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。
そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。
ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。
その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。
仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。
会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。
これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~
泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の
元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳
×
敏腕だけど冷徹と噂されている
俺様部長 木沢彰吾34歳
ある朝、花梨が出社すると
異動の辞令が張り出されていた。
異動先は木沢部長率いる
〝ブランディング戦略部〟
なんでこんな時期に……
あまりの〝異例〟の辞令に
戸惑いを隠せない花梨。
しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!
花梨の前途多難な日々が、今始まる……
***
元気いっぱい、はりきりガール花梨と
ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。
社長に拾われた貧困女子、契約なのに溺愛されてます―現代シンデレラの逆転劇―
砂原紗藍
恋愛
――これは、CEOに愛された貧困女子、現代版シンデレラのラブストーリー。
両親を亡くし、継母と義姉の冷遇から逃れて家を出た深月カヤは、メイドカフェとお弁当屋のダブルワークで必死に生きる二十一歳。
日々を支えるのは、愛するペットのシマリス・シンちゃんだけだった。
ある深夜、酔客に絡まれたカヤを救ったのは、名前も知らないのに不思議と安心できる男性。
数日後、偶然バイト先のお弁当屋で再会したその男性は、若くして大企業を率いる社長・桐島柊也だった。
生活も心もぎりぎりまで追い詰められたカヤに、柊也からの突然の提案は――
「期間限定で、俺の恋人にならないか」
逃げ場を求めるカヤと、何かを抱える柊也。思惑の違う二人は、契約という形で同じ屋根の下で暮らし始める。
過保護な優しさ、困ったときに現れる温もりに、カヤの胸には小さな灯がともりはじめる。
だが、契約の先にある“本当の理由”はまだ霧の中。
落とした小さなガラスのヘアピンが導くのは——灰かぶり姫だった彼女の、新しい運命。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる