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69.簡単ではない
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俺は威圧感が滲み出るジョセフを見て顔を青くして固まった。
ジョセフはカフェで俺をミシェルから助けてくれた…なのに俺は今、ミシェルと手を握り合ってるんだから怒っても致し方ない。
ミシェルもジョセフの不機嫌なオーラがわかってるのか俺と同じように顔を青くさせて、震えている。
「ジョ、ジョセフ…あの…」
恐る恐る声をかけてたが何も言わない。ジョセフの後ろに立っていたお兄様に助けを求めるように視線を向けるが、いつもは甘やかしてくれるお兄様が苦笑して首を横に振った。
少し離れたところに豊も居た。たぶん人が来ないように見張りを兼ねているんだろうけど、俺と目が合うと顔が馬鹿って言ってるような呆れた顔をしていた。
思わず顔を逸らして俯いてしまったが好意を無下にしたんだ。怒られる覚悟はあるけど、ちゃんと理由だけは説明しようと顔を上げた時、ミシェルが震える声を出した。
「ジョセフィード殿下、アンジェリカさんは何も悪くありません…酷いことしたわたくしを励まし、優しくしてくださったのですわ。…わたくしはいかなる罰もお受けします」
「ミシェル様!?ジョセフ、私が悪いのは分かっています。助けてもらったのに、逆に泥を塗るようなことをしました…でもミシェル様にも理由があるんじゃないかっておもって…」
「……はあ…」
ジョセフのため息に流石に愛想を尽かされたんじゃないかとビクリと肩を揺らした。
恐る恐るジョセフを見上げると、ジョセフは苦笑していた。
「このお人好しめ……自分を虐めていた者を庇うなんて…まあアンジェらしいけどな」
「……怒って……ない?」
見上げる俺の頭を軽くなでて微笑んだジョセフを見てホッと息を付く。
まだ不安げなミシェルに大丈夫と微笑んでから、俺はミシェルに聞いた事をみんなに話した。
最初はジッと聞いていたが、最後の方はジョセフは顔を顰め、お兄様は憂いた顔をしていた。
「確かに、ミシェル嬢が生まれた時から、何度も当時の王であった祖父に俺の妃にとイグナシオン侯爵が言っていたと聞いた事がある。当時はシアが第一候補だったから取り合わなかったようだが…。イグナシオン侯爵は先代の王、俺の祖父が王の時に若くして大臣に抜擢されたのだが、強引に物事を進めることが多くて、王が父に代わってから、古株の大臣たちから苦情が度々出ていたらしいが、そんな事になっていたとは…」
ミシェルの話をあっさり信じてくれた事にミシェルは少しポカンとしている。
「殿下……信じてくださるのですか?」
「ミシェル嬢を信じたのではなく、貴女を信じるアンジェを信じているのですよ」
ジョセフの言葉にミシェルに悪いが嬉しくなった。好きな人に信じてもらえることがこんなに嬉しいなんて…
「ミシェル嬢の兄ケレイブは文官として王宮に努めているが、真面目で仕事もできることから前から気にしていたのだが……先日見かけた時に顔に痣があって本人は転んでぶつけたと言っていたが、その時の痣がイグナシオン侯爵から殴られたものだったのだな。もっとケレイブに聞き出しておけばミシェル嬢にあのような態度を取らずにすんだかもしれない。申し訳無いことをした」
「ジョ、ジョセフィード殿下が謝ることではありませんわ……わたくしが蒔いた種でございます。それに殿下のおっしゃる通りでしたから……身分だけ見ていたわたくしに王太子妃になど許されぬことでございます」
ミシェルは俺とジョセフに頭を下げた。
「ジョセフに被害があったわけじゃないですし、もう私も気にしておりませんから……」
ちらりとジョセフを見上げると、軽く頷いてミシェルに「顔を上げろ」と言ってくれた。
おずおずと顔を上げたミシェルに微笑むと彼女は少し顔を緩めた。
「でも、ミシェル様が私と仲良くしてたら、取り巻きの令嬢達が何かしてきたりしないでしょうか……カフェで何人かには見られてしまいました」
「そこは大丈夫。ジョセフが箝口令を敷いていたからね」
眉を下げた俺に、ふふっと笑いながらお兄様が教えてくれる。
ジョセフを見ると「アンジェが追いかけていった時に、なんとなくこうなる気がしたからな」と少し視線を反らした。
俺の思考が読まれてましたか…ちょっと恥ずかしい。
「人の口に戸は立てられないからな、すぐに漏れるだろう。ミシェル嬢の取り巻き達はあっさり手のひらを返して何か言ってくるかもしれない。肩身の狭い思いはするかもしれないけが、俺の婚約者で、公爵の令嬢のシアと仲の良いアンジェがミシェル嬢の側にいれば逆に手出しはしにくくなるはずだ……だが、侯爵家の問題を解決しなければ何も変わらない」
大臣であるイグナシオン侯爵を断罪するならば、それなりの理由がいる。
それに、当主の侯爵が罪に問われれば、イグナシオン家は危うくなってミシェルやミシェルの兄ケレイブさんもお母さんも巻き込まれる。
俺だけじゃあイグナシオン侯爵家の問題を解決出来るとは思っちゃいなかったけど、思った以上に複雑だ。
ジョセフやお兄様の協力は得らることになったのは大きいけど2人にとっても簡単なことじゃない。
俺にも出来ることはあるのだろうか…グッと手を握りしめた。
ジョセフはカフェで俺をミシェルから助けてくれた…なのに俺は今、ミシェルと手を握り合ってるんだから怒っても致し方ない。
ミシェルもジョセフの不機嫌なオーラがわかってるのか俺と同じように顔を青くさせて、震えている。
「ジョ、ジョセフ…あの…」
恐る恐る声をかけてたが何も言わない。ジョセフの後ろに立っていたお兄様に助けを求めるように視線を向けるが、いつもは甘やかしてくれるお兄様が苦笑して首を横に振った。
少し離れたところに豊も居た。たぶん人が来ないように見張りを兼ねているんだろうけど、俺と目が合うと顔が馬鹿って言ってるような呆れた顔をしていた。
思わず顔を逸らして俯いてしまったが好意を無下にしたんだ。怒られる覚悟はあるけど、ちゃんと理由だけは説明しようと顔を上げた時、ミシェルが震える声を出した。
「ジョセフィード殿下、アンジェリカさんは何も悪くありません…酷いことしたわたくしを励まし、優しくしてくださったのですわ。…わたくしはいかなる罰もお受けします」
「ミシェル様!?ジョセフ、私が悪いのは分かっています。助けてもらったのに、逆に泥を塗るようなことをしました…でもミシェル様にも理由があるんじゃないかっておもって…」
「……はあ…」
ジョセフのため息に流石に愛想を尽かされたんじゃないかとビクリと肩を揺らした。
恐る恐るジョセフを見上げると、ジョセフは苦笑していた。
「このお人好しめ……自分を虐めていた者を庇うなんて…まあアンジェらしいけどな」
「……怒って……ない?」
見上げる俺の頭を軽くなでて微笑んだジョセフを見てホッと息を付く。
まだ不安げなミシェルに大丈夫と微笑んでから、俺はミシェルに聞いた事をみんなに話した。
最初はジッと聞いていたが、最後の方はジョセフは顔を顰め、お兄様は憂いた顔をしていた。
「確かに、ミシェル嬢が生まれた時から、何度も当時の王であった祖父に俺の妃にとイグナシオン侯爵が言っていたと聞いた事がある。当時はシアが第一候補だったから取り合わなかったようだが…。イグナシオン侯爵は先代の王、俺の祖父が王の時に若くして大臣に抜擢されたのだが、強引に物事を進めることが多くて、王が父に代わってから、古株の大臣たちから苦情が度々出ていたらしいが、そんな事になっていたとは…」
ミシェルの話をあっさり信じてくれた事にミシェルは少しポカンとしている。
「殿下……信じてくださるのですか?」
「ミシェル嬢を信じたのではなく、貴女を信じるアンジェを信じているのですよ」
ジョセフの言葉にミシェルに悪いが嬉しくなった。好きな人に信じてもらえることがこんなに嬉しいなんて…
「ミシェル嬢の兄ケレイブは文官として王宮に努めているが、真面目で仕事もできることから前から気にしていたのだが……先日見かけた時に顔に痣があって本人は転んでぶつけたと言っていたが、その時の痣がイグナシオン侯爵から殴られたものだったのだな。もっとケレイブに聞き出しておけばミシェル嬢にあのような態度を取らずにすんだかもしれない。申し訳無いことをした」
「ジョ、ジョセフィード殿下が謝ることではありませんわ……わたくしが蒔いた種でございます。それに殿下のおっしゃる通りでしたから……身分だけ見ていたわたくしに王太子妃になど許されぬことでございます」
ミシェルは俺とジョセフに頭を下げた。
「ジョセフに被害があったわけじゃないですし、もう私も気にしておりませんから……」
ちらりとジョセフを見上げると、軽く頷いてミシェルに「顔を上げろ」と言ってくれた。
おずおずと顔を上げたミシェルに微笑むと彼女は少し顔を緩めた。
「でも、ミシェル様が私と仲良くしてたら、取り巻きの令嬢達が何かしてきたりしないでしょうか……カフェで何人かには見られてしまいました」
「そこは大丈夫。ジョセフが箝口令を敷いていたからね」
眉を下げた俺に、ふふっと笑いながらお兄様が教えてくれる。
ジョセフを見ると「アンジェが追いかけていった時に、なんとなくこうなる気がしたからな」と少し視線を反らした。
俺の思考が読まれてましたか…ちょっと恥ずかしい。
「人の口に戸は立てられないからな、すぐに漏れるだろう。ミシェル嬢の取り巻き達はあっさり手のひらを返して何か言ってくるかもしれない。肩身の狭い思いはするかもしれないけが、俺の婚約者で、公爵の令嬢のシアと仲の良いアンジェがミシェル嬢の側にいれば逆に手出しはしにくくなるはずだ……だが、侯爵家の問題を解決しなければ何も変わらない」
大臣であるイグナシオン侯爵を断罪するならば、それなりの理由がいる。
それに、当主の侯爵が罪に問われれば、イグナシオン家は危うくなってミシェルやミシェルの兄ケレイブさんもお母さんも巻き込まれる。
俺だけじゃあイグナシオン侯爵家の問題を解決出来るとは思っちゃいなかったけど、思った以上に複雑だ。
ジョセフやお兄様の協力は得らることになったのは大きいけど2人にとっても簡単なことじゃない。
俺にも出来ることはあるのだろうか…グッと手を握りしめた。
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