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第三章 出会い
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ぼやけた視界は瞬きを何度か繰り返せば、徐々にピントが合って俺と向き合うように座っている人物の顔が見える。
そこには金髪に近い髪色をした、綺麗な顔立ちの男がいた。
「どうして、ここにいるの?」
「偶々通りかかって、声が聞こえたから。さっきよりは意識がはっきりしてきたな。もう大丈夫だから。気分はどうだ?」
「きもちわるい・・・。頭が重たい・・・。」
「そか、亮、そいつは吐いたか?」
「おん。そんな劇薬ではなさそうやで。後頭部殴って、当たり所が良くて気絶したみたいやけど、その後睡眠薬を多めに飲ましたんやと。寝かせりゃそのうちすっきりするやろ。」
「むしろよく目覚めたな。」
「本能的な危機感やろ。安堵したら寝てしまうかもしれんな。」
俺の目の前にいる2人は、一度しか顔を見たことないが、忘れることのない二人だった。
鷹山のトップ火神颯斗と、側近の久我亮。
そんな2人が、今俺の目の前で喋っている。
関わるなと言われたのにと、頭の片隅にそんなことが浮かぶ。
「一応、智のとこに連れて行くか。」
「いやだっ、もうこれ以上はいやだっ、もうやめてっ、」
連れて行くという言葉に俺は酷く恐怖を抱いた。
またどこかに連れて行かれるかもしれない。
また何かされるのかもしれない。
もうこれ以上は嫌だ。こんな思いはもうしたくない。
俺は少しでも自分の身を守ろうと両腕を抱えて小さく縮こまる。
「大丈夫だから。もう終わった。怖がらなくていい。もう終わったから。」
優しい声音が俺の鼓膜を揺らし、少し体温の高い手のひらが俺の髪を梳いていく。
狂犬と恐れられてる人とは思えないほど、優しさに満ちた触り方だった。
「亮、ナイフ持ってねぇか。」
「あるで。」
さも当然かのようにポッケから折りたたみのナイフを取り出したが、銃刀法違反ではないのだろうか。
何故そのようなものを持ち歩いているのだろうか。
そんな疑問を抱きながら行く末を見守っていると、火神は俺の手首に巻きつけられたロープを切って外してくれた。
両手が自由になり、安堵感が増す。
終わったのだと実感がわく。
すると一気に体が重くなり、重たい頭を支える力もなくなりガクンと頭を垂れる。
その勢いのまま体も倒れそうだったが、腕を掴まれて倒れることはなく、意識は朦朧とし始め、視界がぐらつく。
「もう落ちるな。とりあえず、連れて帰るか。智に連絡入れといて。」
そんな言葉が微かに聞こえる。恐怖はない。
体がふわりと浮いた気がした。
先ほど嗅いだ甘い匂いが鼻腔に広がる。
「あまい、においがする・・・。」
「甘い?俺別に香水付けてねぇけど。」
香水の匂いじゃないんだ。
何の匂いだろうか。
とても落ち着く匂いがする。
「いいにおい・・・。」
そんな言葉を呟いたのか思っただけなのかも分からない現実と夢の境目。
俺の記憶はそこから先はなかった。
そこには金髪に近い髪色をした、綺麗な顔立ちの男がいた。
「どうして、ここにいるの?」
「偶々通りかかって、声が聞こえたから。さっきよりは意識がはっきりしてきたな。もう大丈夫だから。気分はどうだ?」
「きもちわるい・・・。頭が重たい・・・。」
「そか、亮、そいつは吐いたか?」
「おん。そんな劇薬ではなさそうやで。後頭部殴って、当たり所が良くて気絶したみたいやけど、その後睡眠薬を多めに飲ましたんやと。寝かせりゃそのうちすっきりするやろ。」
「むしろよく目覚めたな。」
「本能的な危機感やろ。安堵したら寝てしまうかもしれんな。」
俺の目の前にいる2人は、一度しか顔を見たことないが、忘れることのない二人だった。
鷹山のトップ火神颯斗と、側近の久我亮。
そんな2人が、今俺の目の前で喋っている。
関わるなと言われたのにと、頭の片隅にそんなことが浮かぶ。
「一応、智のとこに連れて行くか。」
「いやだっ、もうこれ以上はいやだっ、もうやめてっ、」
連れて行くという言葉に俺は酷く恐怖を抱いた。
またどこかに連れて行かれるかもしれない。
また何かされるのかもしれない。
もうこれ以上は嫌だ。こんな思いはもうしたくない。
俺は少しでも自分の身を守ろうと両腕を抱えて小さく縮こまる。
「大丈夫だから。もう終わった。怖がらなくていい。もう終わったから。」
優しい声音が俺の鼓膜を揺らし、少し体温の高い手のひらが俺の髪を梳いていく。
狂犬と恐れられてる人とは思えないほど、優しさに満ちた触り方だった。
「亮、ナイフ持ってねぇか。」
「あるで。」
さも当然かのようにポッケから折りたたみのナイフを取り出したが、銃刀法違反ではないのだろうか。
何故そのようなものを持ち歩いているのだろうか。
そんな疑問を抱きながら行く末を見守っていると、火神は俺の手首に巻きつけられたロープを切って外してくれた。
両手が自由になり、安堵感が増す。
終わったのだと実感がわく。
すると一気に体が重くなり、重たい頭を支える力もなくなりガクンと頭を垂れる。
その勢いのまま体も倒れそうだったが、腕を掴まれて倒れることはなく、意識は朦朧とし始め、視界がぐらつく。
「もう落ちるな。とりあえず、連れて帰るか。智に連絡入れといて。」
そんな言葉が微かに聞こえる。恐怖はない。
体がふわりと浮いた気がした。
先ほど嗅いだ甘い匂いが鼻腔に広がる。
「あまい、においがする・・・。」
「甘い?俺別に香水付けてねぇけど。」
香水の匂いじゃないんだ。
何の匂いだろうか。
とても落ち着く匂いがする。
「いいにおい・・・。」
そんな言葉を呟いたのか思っただけなのかも分からない現実と夢の境目。
俺の記憶はそこから先はなかった。
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