【完結】従順な俺を壊して

川崎葵

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第五章 落ち着くのは

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「セフレは全部切るから。」

「え?」

「えって、そのこと考えてたんじゃねぇの?」

「そうだけど、いいの?」

「いいのって、逆に嫌だろ。恋人の携帯にセフレの番号入ってるなんて。」

「あ、俺らちゃんと恋人なんだ。」

「え?何それ。違ぇの?」

「うぅん。何か、はっきりしないままここに来ちゃったから。恋人ならいいんだ。」

「それなら、改めて告白してやるよ。俺と、付き合ってくれるか?」

椅子に座っている俺に合わせて座り、そう言って颯斗は手を差し出した。
その手を握り返しつつ、俺は言葉を返す。

「こんな俺で、よければ。」

「もちろん。」

颯斗は嬉しそうに微笑み、握り返した俺の手の甲に軽いキスを落とした。

「柚希が俺の初めての恋人か。もう触ってもキスしても許される関係なんだよな。何かすっげぇ嬉しい。」

颯斗の家と違ってここは椅子が1つしかないため、お風呂のふちに座りながら頬をほころばす。

「颯斗の初めてって貴重な気がする。色々経験豊富だから。」

「そんなことねぇぜ。俺は柚希に出会ってから初めてのことだらけだ。こんなに好きなのもこんなに大事なのも、触りたいのもキスしたいのも抱きしめたいのも、こんなに愛おしいのも初めて。傷つけたくないから我慢をしたのも初めて。こんなに仲良くなりたいと思ったのも、全部が全部、初めてのことばっかりだ。正直ずっと戸惑ってる。今まで思ったこともないことを考えるし、逆に無意識にやってることで傷つけてないか不安になることもある。何か嫌なことがあったら言えよ?俺は普通の生活をしてこなかったから、無意識に傷つけるかもしれねぇから。」

シャワーで体を流しながら答える颯斗は、不安そうに耳を垂らした子犬のようにも見えた。
経験豊富な颯斗が戸惑うことなんてあるのかと思ってしまうが、今の表情を見ていれば嘘では無いことが分かる。

「大丈夫だよ。今のとこは何もない。むしろ優しくされすぎて申し訳なくなるぐらいだよ。」

「それならいい。それぐらいが丁度いい。」

クラブでは付きまとう女の人たちに噛み付きそうな勢いで暴言を吐いた颯斗だが、きっと俺に見せている姿が本来の姿なんだと思う。
クラブで見た環境が全てだとは思わないが、あれが生活の一部だとしたら似たり寄ったりの環境だったことだろう。

自分の欲望に素直で強さ、権力がものを言う世界。
中学生の颯斗があのような場所にいたということを考慮すると、自分のことを鉄壁で守っていなければ直ぐに搾取されていたはずだ。
自分を守るために颯斗は何かを色々犠牲にしてきたのかもしれない。
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