ゆとりある生活を異世界で

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人外との日常

様々に沸き立つ者達

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ワイナール皇国暦286年、6の月



「では、ハリー、ウィリー頼むぞ」

「「はっ!」」

「郊外の馬房で全員軍馬に鞍替えしろ」

「「「「「はっ!」」」」」

「これより、残る我々は厳戒体制に移行する
全部で4つの街関には、それぞれ200人程張り付け
残り全員で御屋敷を護る
敵が見えない以上、辺境へ向かう者達も充分に注意を払う様に」

「「「「「はっ!」」」」」

「よし!俺とウィリーを除く20名、準備は出来たか!」

「「「「「はっ!」」」」」

「手紙は俺かハリーのどちらかが持っている、お前達にも秘密だ!
騎士団長も仰ったが、それでも10人づつで俺たちを油断なく護れ!」

「「「「「はっ!」」」」」

「敵が見えない以上、我々に対し剣を向けようとする者達は全て敵と看做し斬って捨てる
それが例え東街区内外であっても躊躇する事は許さん!」

「「「「「はっ!」」」」」

「軍用門を出た瞬間から警戒しろ!
先ずは郊外馬房を目指す!総員騎乗!」

「「「「「おおっ!」」」」」









魔世に大振りな竹葉を落としてもらい、水饅頭を載せる
序でに幅広の竹楊枝も創ってもらい水饅頭に添える

「ロウお兄ちゃん!たまごさん、つめたくてプルプルで甘くておいしい♪」
「プルプルおいちー♪」
「本当に!甘藷が玉子の黄身みたいですね♪」
「このプルンプルンした食感は初めて食べましたよ」

「そうか、そうだよね?見た目は殻が無いのに形保ってる生卵だもんね?
まぁでも、気に入ってくれたみたいで良かった」

「ロウ?これはウチの料理人にも教えても良いかしら?」
「あら?御義母様、良いお考えですわね?お茶会に出したら面白そうです」

「構いませんよ?冷やす事以外は難しいのはありませんからね?」

「涼感があって、これからの季節にも良さそうですからねキャリーさん」

「あゝそうか、暑い季節になって行きますからね?
涼感と言えば、中の餡は色々と変えてみたら良いですよ
そうですね…そろそろ大豆は膨らんでくる季節だから青豆で作れるだろうし
旬の果物や木ノ実、野菜を使っても良いかもしれませんね?」

「甘藷や果物とは違い、豆や木ノ実、ましてや野菜は甘味が無いのではありませんか?」

「甘味が無いなら甘味を足してやれば大丈夫です
茹でたり蒸したりして火入れしたのを、潰して少しでもネットリするんだったら蜂蜜や水飴を足してやれば餡になるでしょ?」

「へえ?なるほどね?ロウは本当に物知りね?
そんな書籍が本家にあったかしら?」

「え?ありましたよ~“たぶん”
目が届かない場所に、ひっそりと埃被ってましたよ~“たぶん”
先日、始祖の墓参りした時に始祖が言ってましたよ~“たぶん”」

「「「えっ⁉︎」」」
「ちょっと待ちなさいロウ。
色々と語尾にボソッと言っていたのは、まぁ良いです
ですが、始祖が言っていたとは何ですか?」
「ロウ様はロンデル様とお話しされたのですか?」
「ロンデル様と話しを…」

「ええ、そうですね
会話はしていませんが、墓に魔力を流すと始祖が出てきましたよ」

「「「そんな仕掛けが⁉︎」」」
「これは早くあの人に知らせないと!」
「ええ、私も早く戻らないといけません!」
「えー!あたしはココにいたいー!」
「え?キャロル様も戻らないと…」
「いやー!ココにすみたい!」
「あらあらキャロル?ここはロウの別邸ですから、そんなワガママを言ってはなりませんよ?」
「いや!マヨお姉ちゃんといる!」
「キャロル!マヨはロウ様の従魔なのですからダメです!」

「キャロル?ここは、まだ幼いキャロルが長く居ると我の魔力に当てられて毒になりますから無理ですよ?
この屋敷は我が気合いを入れて創ってますからね
だから、たまに遊びに来るぐらいが丁度良いです

それに我はお姉ちゃんでもお兄ちゃんでもありません
オスでもメスでもありませんから魔世でいいです」

「えーそんなぁ…」

「たまに主人様に連れてきてもらってください
我もキャロルが好きですから遊びにきてくれると嬉しいですよ」

「……うん」

「では急ぎ戻りましょうか!あの人は地下で色々としているでしょう」









「うむうむ、流石に100人づつで1軒造るのは早いな
これだとダンジョンが利用可能になるまでに、掘っ建て以上に立派な物が建ちそうだ」

「しかし団長、もうそろそろ龍の群れが来るのではないですか?
そうしたら事故防止に作業中断するのですよね?」

「うむ、しかしこの場には辺境騎士団200名が揃っている
全員が腰が引ける事は無いと思っているが」

「まぁ、私もそう思いますが…聞いた話では、下位とはいえ1000もの龍が飛来し、同数の龍が地を駆けてくるとか
流石に龍のほうが数でも我々より多いのは…」

「ふむ、確かに10倍もの数は無理に過ぎるかな…」

「ええ、かと思います。
一応は戦陣構築のつもりで見張りは厳にしていますので
見張りからの報告があがり次第、作業中断し退避した方が無難かと思います」

「うむ、確かにな…無駄な怪我人でも出そうものならばロベルト様に叱られてしまうか」

「私はロシナンテ様が怖いですがね、ふふっ…」

「しかし、ロウ様が来られて何やかやと我々の仕事が増えたな」

「有難い事です…今までの辺境騎士団は訓練訓練、たまの警備、そして訓練訓練で膿んでおりましたからね
発散出来るし、街の住人にも少しは良いカッコを見せれました
騎士団員の皆の目が活き活きとしてきましたよ」

「フッフッフッ…まだまだだ、これからはダンジョンを訓練に使っていいらしいからな?どうなる事か…」

「どうなる事か、とは?」

「うむ、ロベルト様がロウ様から言われたらしいのだがな?
戦争や鎮圧など大多数を相手にするのは、我々騎士団が抜群に強いのだが
ダンジョンの様に狭い場所で、少人数で少数の敵を相手にするのは冒険者に劣るらしい
だから先ずは生き延びるという事を最優先にする様にとの言だ」

「まさか⁉︎我らは専属の軍人ですよ?」

「うむ、俺もそう言ったんだがな?
敵を知らず、己を知らぬ者は怖くはないとさ」

「どう言う意味なのでしょうか?」

「うむ、敵の力量を見極め自分達の力量を見る。そこで勝てると思えば戦う、勝てる自信が無ければ退く
だがな?我々騎士団は名誉や矜持が邪魔をして負けると解ってても戦う」

「確かに…」

「自分達が負けると理解している敵に勝つのは簡単だそうだ
それ故に、生き残る為にあらゆる手段を使う冒険者の方が怖いらしい
まぁ、冒険者には名誉などなく1番大事なのは命、次が金だからな?
逃げる時は一目散に逃げるだろうし、その時の敵を調べて勝てる手段を見つけて再戦する、らしい
ロベルト様の受け売りだ、ククッ…」

「ぐうの音も出ませんな…我々騎士は乾坤一擲、華々しく戦い、力及ばずは潔ぎよく散る…が染み付いていますからね」

「そうだ、だからこそロウ様はダンジョンを用意したから
所謂いわゆる騎士根性を叩き直せとの仰せらしい
簡単に死ぬ様な騎士は不経済だとな
騎士が騎士たるべく維持する為には、騎士1人に年間で金貨が3枚から4枚必要らしいぞ?最低でもだ
おれも最初に聞いた時は驚いた…」

「そんなにも⁉︎それは確かに…
全くもって、ごもっともですね…簡単に死なれたら大損です
しかし、一朝一夕には行きませんね…」

「だろうな?だからダンジョンが開けば、俺が率先して入り
ヤバイ敵がいたら率先して逃げる」

「団長⁉︎」

「必要な事だよ」









コロージュン辺境伯の御膝元、辺境伯の威光が照らすコウトー
そんな街にも澱みえた吹き溜まりは出来る
そして、それは街門から遠い外壁沿い

そんな場所を数多あまたの冒険者が駆け回っている

「やめろ!離せ!何なんだよ!」
「何なんだはお前じゃないか、何故逃げる」
「何もしてねーのに追っ掛けてくるからだ!」


「おうおう、元気がいいじゃないか?」
「クソったれ!何で獣人が取り締まりしてんだよ!」
「ああ?俺は取り締まりじゃねぇぞ?」
「じゃあ何で俺を抑え込んでんだよ!」


「何だよ!何でニヤニヤしながら取り囲んでんだよ!」
「いやぁ、逃げられると面倒でな?」
「はあ?何が面倒なんだよ!」


「あら?あんた中々いい体してんじゃない?あたしらと良い事しないかい?」
「…ぐっ…がっ……」
「リッリ、あんたの腕が首にキマってんじゃないの
それじゃあ返事は出来ないよ…」


「なあ?おまえ、こんな場所でくすぶってていいのか?
俺たちを手伝わねぇか?」
「はあ?俺はナイフぐらいしか持った事ねぇんだ!
冒険者の手伝いなんか出来ねぇよ!」
「なに、大丈夫だ。そんな難しいこた頼まねぇよ
荷を運ぶだけで良いんだ、給金も出すぜ?」
「荷運びだ?ヤバイもんか?」
「全然ヤバくねぇぞ?荷車とかが使えねーから、俺たちが獲った素材や宝を運ぶだけだ」
「…本当か?」
「あゝホントホント、嘘は吐いてねぇよ?日当で銅貨50枚でどうだ?」
「え?そんなにくれるのか?」
「あゝホントだ、ただし仕事が済んでからだぞ?冒険者組合まで帰ってきたら、その場で支払う」
「あゝ、ヤる!いつだ?」
「う~ん、そうだな?たぶんだが6日後か7日後ぐらいか?
その日に街端まで来るよ、ここら辺りに屯ってんだろ?」
「あゝ大体はこの辺りにいる、居なかったらその辺のヤツらにベラムは?って聞いてくれりゃいい」
「そうかベラム、頼んだぜ?俺はマイニオだ」
「あゝこっちこそ頼むよマイニオ」

俄かに、あちらこちらでゴミ拾い…もとい、リサイクルが始まっていた








“グオオォォォォン”
鳥居の上空を中位龍が9頭、吼えながら旋回し
その上には下位龍900頭が渦を巻く
そして、鳥居の前では竜人形態のアナヴァタプタが騎士達に向かい
「済まぬが通るぞ」
と、鳥居へ入っていく
それを合図に1000頭の下位龍が上空から次から次へと鳥居に突入していき、最後に中位龍が鳥居に消えていった



「なんというド迫力…作業中断は正解であったな…」

「ええ、足の震えが止まりません…」




「ほう?これが我らに充てがわれた階層か?まるで外界ではないか…
良いのう…マヨよ、ありがたく僕龍しもべどもを住まわせてもらう」
アナヴァタプタと僕龍は鳥居から直接、専用の階層にきていた

『アナヴァタプタの僕龍は飛龍ばかりですから
少々暴れても乱舞しても大丈夫な様に創りました』

「うむうむ、ありがたい。感謝するぞマヨ」
龍体に戻ったアナヴァタプタが目を細め、満足そうに頷く
その眼前には、どこまでも続くかの様な蒼穹
視線を落とせば、高さが100mはあろうかという程の急峻な渓谷がどこまでも続く
「これは我らが住んでおった山より遥かに住み心地が良さそうだ」
アナヴァタプタが背後に飛びながら控える下位龍を睥睨し
“グオオォォォォー”
一吼えすると下位龍が喜び勇んで思い思いの方向へ飛び去った
次に中位龍達を見回し
「お前達も好きにせよ、たまに我も寛ぎに来よう
あゝ、声しか聞こえぬがマヨに無礼を働くなよ
簡単に滅されてしまうでな」

「「「「「はっ!」」」」」
「「「「「マヨ様、これから我等龍達を宜しく頼む」」」」」

『はい、わかりました
ですが、貴方達龍達は気兼ねなく好きな様に暮らしなさい
貴方達から漏れ出す魔力は、我の糧になります
主人様が言うところのウィンウィンwin-winです』

「ふむ、ロウは共存共栄とも言っておったな
なかなかに面白き言葉よ」










“ゴワンゴワン”と分厚い鉄扉てっぴが叩かれ
「あなた?こちらですか?」
とキホーテが扉を少し開き中を覗き込む

「ん?おおキホーテ、如何したのだ?地下に来るなど珍しい事もあるものだな
確かマヨの処へ行っていたのではないか?」
机に向かい書き物をしていたロシナンテが振り返りつつ、左眼にはめていたモノクルを外す

キホーテは鉄扉をいとも簡単に開き室内へ入る
鉄扉にはミスリルとの合金で作ってあり、少し魔力を流すだけで鳥の羽根の様に軽くなる仕様だ
晩年のロンデルが辺境に来た時、屋敷内に細工を施した様だった

「早速使っていますね?そのロウが創った魔道具の具合は如何ですか?」
キホーテが美しい金細工が施されたモノクルを指差す

「うむ、良いぞ。いや凄くいい!だが、これは魔道具では無いらしいぞ?」

「あら?そうなのですか?」

「あゝ、レンズは普通のガラスらしいな?
歳を取ると誰しも目の力が衰え近くが見え難くなるのだとか、特に若い頃から遠目が利いていた者がな」

「あらまぁ?そうなのですか?
でしたら私も危ないですわね?」

「うむ、キホーテも若い頃より遠目が利いておったのう」

「私の魔法は風系ですから当然でもありますね
広範囲魔法は遠くを見渡せる目が必要ですから」

「うむうむ…しかし、儂が魔導書を読むのが辛くなってきたと言ったら
ロウが突然『利き眼はどちらですか?』と聞いてきた時は面食らったわ。ククク…
まさか利き腕の様に、眼にもよく使う方があるなぞ考えた事も無かったからな」

「まあ?本当に…」
キホーテがコロコロ笑う

「さて、如何したのかね?お前が地下まで来るとは何かあったのか?
慌ててはいない様子だが?」

「ええ、緊急事態ではありませんが…
ロウから聞いた事なのですが、あなたは始祖の墓に魔力を流した事がありますか?」

「始祖の墓に、そんな無作法はした事が無いぞ⁉︎」

「それがそう無作法では無い様ですよ?
ロウが言うには、始祖の元の世界の言葉で魔力を流せと書いてあったとか
あの石碑の奥に始祖が創った核があって、その核に魔力が流れる事によって始祖が顕れるそうです」

「なにぃ⁉︎あの石碑に色々書いてあったのはそう言う事だったのか⁉︎」
“ガタッ!”っと、思わずロシナンテが立ち上がる

「ええ、ワラシが大喜びだったそうよ?うふふふふ…」

「ワラシが⁉︎むう…そうか、ワラシは始祖が生み出したのであったな?当然だろう…」
ロシナンテが再びドッカリと椅子に座る
「しかし、あの石碑にその様な仕掛けがあったとは…
まぁ、始祖達、五英雄にしか解らぬ文字ならば仕方無しか」

「ええ、そうですね?
で、いつ御参りに行きますか?」

「む…出来るならば今直ぐに出立したいところだが…
間も無く、ダンジョンが開くし
何よりも、儂はロウから宿題を出されておるでな」

「オホホホホ…楽しそうですわね?あなた?」

「うむ、齢50にして童子の如くワクワクしておるよ」

「本当に、目がキラキラして童子みたい」

「ワッハッハッハッハ!」
「ウフフフフフ…」






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