継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
32 / 186
その他

番外編 〜 ネロウディアスの模型展示会2 〜 ノア7歳

しおりを挟む


ネロウディアス皇帝視点


「素晴らしいデス皇女殿下! ここまでまとまった企画書が書けるなんて、今から将来が楽しみデース!」

ベル商会から派遣された、このちょっと癖のある話し方をする女性は、エレール・モア・ティッシューという、ティッシュー男爵家の夫人らしい。何でも外国から嫁いで来たそうで、若くして(30代)ベル商会の管理職にまで上り詰めた優秀なイベントプランナーなのだとか。

イベントプランナーが何かはよくわからぬが、ディバイン公爵夫人が、この夫人に任せれば大丈夫だと太鼓判を押す者なので、朕も安心して見ていられるのだ。

「アイデアはお父様が、数字の面ではお母様が助言をくださったので、お父様とお母様のお陰です」

我が娘ながら、謙虚で良い子なのだ!!
照れながら話す姿も可愛いのだぞ。

「それでも、皇女様自身が企画し、まとめ上げたものデス。素晴らしいデースネ!」

うむうむ。そうであろう。朕の娘はすごいのだ!

「ありがとうございます」

エリザは将来ベル商会で働きたいと言っていたから、今回の事は良い経験になるだろう。
レーテもきっと、それを思って提案したのだな。やはり朕のレーテは優しく聡明な聖母なのだ!

「それで、今回の組立式模型の展示会は、かなり大規模になりそうデスが、ここまで数字も出していますし、会場を先に押さえておくべきではないかと思いマース」
「では、規模は企画書から変える必要はないのでしょうか」
「はい! 問題ありまセン! こちらの企画書は大きな変更なく進める事が可能デース」
「良かったぁ!」

朕をチラリと見る娘に、うむと頷く。

「ただ、ここに書いてある会場候補の皇城は、一般参加の方が気軽に来られないので却下デス」

な、何だと!? それでは、朕の参加が難しくなるではないか!?

「そこをどうにか皇城には出来ぬのか!?」
「無理デスネ~」
「!?」

朕が楽しみにしている模型の展示会が……っ、いや、どこであろうと必ず参加してやるのだ! 愛娘の企画した、大好きな模型の展示会、朕は諦めぬぞ!!

「う~ん……あっ、確か“おもちゃの宝箱”帝都支店が先日庶民街にも出来ましたよね!」

エリザが思いついたようにティッシュー夫人に問いかける。

「はい。庶民の皆様にも大変ご好評いただいておりマース」
「確か、元商家のお邸を丸ごとおもちゃ屋にしたと聞いています。それなら、空きスペースもあるのではないかと思うのです!」

そうなのか? 初めて知ったのだ。

「なるほど、おもちゃの宝箱でしたら一般の方も参加しやすいデース。実はディバイン公爵夫人は、イベントスペースというものを庶民街の支店に作られているのデス。そちらが使用出来るか、確認しておきマース!」

さすが朕の愛娘なのだ! すぐに会場候補を出すとは、レーテに似たのだな。

うんうん頷いていると、いつの間にか打ち合わせが終わり、二人はお別れの挨拶をしていた。

「では、よろしくお願いします!」
「またご連絡いたしマース」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それから三ヶ月後、朕が待ちに待った組立式模型の展示会前日───

三ヶ月前から大々的に告知していた甲斐もあってか、出展者が相当数集まり、もはや今日が本番ではないかと言わんばかりの熱気に包まれている。

ディバイン公爵夫人が、塗装、組立の作業ブースを作ってくれた事で、ギリギリまで出展する作品を作り込もうとする者たちでブースは溢れているし、会場は会場で、作品を新素材のケースの中に入れたはいいが、角度で悩んでいる者も多数見受けられた。

勿論朕も、自らの大作を持ってきているのだが、出展ブースはクジで決まるので、ドキドキでクジを引く列に並んでいる所なのだ。

「おおっ、ジェラルド国王! そなたも参加していたのか!」

そこで偶々出会ったのが、リッシュグルス国の国王だった。

「ネロウディアス皇帝陛下! もちろんですっ、こんな楽しそうな集まりに顔を出さないわけありません! 僕の渾身の作品を持って来たので、早く陳列したくてウズウズしています!」

お互いお忍びで来ている為、一般貴族のような格好をしているが、ジェラルド王を護衛している者は顔を半分マスクで隠しているので、余計目立って全く忍べておらぬ……。少し怖いのだ。

……ん? この者はどこかで……、

「もしや、ユニヴァ殿か!?」

ジェラルド王の兄の、ユニヴァ殿ではないかとつい声を上げてしまう。すると、

「ネロウディアス皇帝陛下、申し訳ありませんが、少し声を抑えていただけますと助かります」
「うぬ?! すまぬのだ。しかし、兄弟で我が国へお忍びとは、国は大丈夫なのか?」
「問題ありません。身代わり……ゴホンッ、優秀な部下もおりますので、上手くやっております」

今身代わりって聞こえたが!?

「そ、そうなのか……。ユニヴァ殿は作品の出展はするのだろうか?」

あえてマスクには触れず、作品について質問してみると、「私は弟の付き添いですから、出展する気はありませんし、弟の作品に勝てる腕も持ってはいませんので。大体弟の作品以外に興味もありません」と即答されたのだ。

「そ、そうか……」

じゃあ何しに来たんだ。とはさすがに言えなかったのだ。


しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...