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04 魔法。
しおりを挟む夜になると、亜豆ちゃんが本当に来てくれた。一緒に夕食を取ろうと、ベッドの上に乗った。どうやら同じ世界から来たもの同士仲良くしたいみたい。それとも私に気を遣ってくれているのか。どちらにしても美少女に懐かれて、悪い気はしなかった。
「魔物と戦うって過酷だと思うけれど……どう? 魔法を覚えるの楽しい?」
「え? うーん。楽しいと言えば、やっぱり楽しいかな。あっち側にない不思議なものだし、最初光を生み出した時はもう感激しちゃった!」
「いいな! 見せて!」
亜豆ちゃんに心境を心配しつつも、ぶっちゃけて訊いてみれば、笑顔で答えてくれる。よかった。魔法を楽しんでいるみたいだ。
食べている最中だけれど、亜豆ちゃんは掌を私に見せてくれた。亜豆ちゃんは見つめていただけなのに、ポォっと白い光がそこに現れる。
「わ、すごい!」
「簡単な魔法は覚えたんだ。魔導書を読むだけで簡単な魔法を使えるようになるの。それを基礎魔法って呼ぶんだって」
「私にも出来るかな」
「じゃあ持ってくるよ!」
「ありがとう天使!」
「天使?」
本を読むだけで習得出来るなら、安静にしながら読みたい。
お願いしたら、食事を終えたあとに何冊か持ってきてくれた。リースさんが。聖女様には持って来させられないと、買って出たらしい。国の救世主である亜豆ちゃんは、偉い人だということは頭に入れておかなくては。
「魔力を消耗しますと疲労で倒れてしまいかねないので、今日は一つの魔法だけにしてくださいませ」
リースさんに、そう釘をさされた。
驚いたのは聖女亜豆ちゃん。「そうなの!? 私何個も連続で習得したけど倒れなかった!」とのこと。それはやはり聖女の魔力が通常よりも多いということだろう。
「じゃあ一つにします」
記念すべく初魔法は何にしようか、ルンルンでページを捲った。
文字が読めると確認してから疑問に思ったのは、この世界の言葉がわかるということだ。どうやら異世界の聖女と意思の疎通が出来るように、召喚魔法にオプションをつけていたということだろう。と勝手に解釈した。
「火をつける魔法もあるよ。あ、さっきの光を出す魔法はこれ。水を出す魔法だってあるんだよ。あ、これこれ」と亜豆ちゃんが見るページになにかと指差して叩いた。それを全てスルーして、最初の魔法選びをする。やがて聞いていないとわかった亜豆ちゃんは、大人しくなった。
でも二冊目に手をかけると、亜豆ちゃんが「あ」と漏らす。
「それはちょっと難しいやつだって」
「そうなの? 私には無理かな」
「どうだろう」
亜豆ちゃんには、判断できないと首を傾げられた。首を傾げる姿、可愛い。相変わらず羨ましい色白の肌をしてお人形さんみたい。あ、私の方が今白かったんだった。
鏡を見たら、今にも死にそうな人だという印象を受けた。亜豆ちゃんが泣いてしまうものわかった。真っ白な髪と真っ白な顔で寝たきり起きなくなったら、自分のせいで死んでしまうと考えてもおかしくない。当の本人は魔法でテンション上がっているから気にしないで本当。
「あ、これがいいな」
「なになに? 重力自在魔法?」
「これ読めばいいんだよね」
タイトルは亜豆ちゃんが口にした通り、重力自在魔法。その名の通り、重力を操る魔法だと書いてある。ただし魔力が少ないものは使うべからず。とまで書いてあるけれど、それは見なかったことにして、呪文の方を見る。二ページ近くあるその呪文さえ読み上げれば、習得が可能らしい。
私が読み始めれば、説明文を見た亜豆ちゃんが「魔力が少ないと使えないんじゃないの」と漏らした。でも読んじゃう。とりあえず最後まで読み上げたけれど、何か起きた様子はない。異変もなし。
「念じて使うんだよ」
亜豆ちゃんが教えてくれた通り、私は念じた。身体よ浮き上がれ。
すると、ふわっとした感覚に襲われ、ベッドに座っていた身体が浮き上がった。感激していたのもつかの間、天蓋にぶつかって落っこちる。でも嬉しくて、お腹を抱えて笑った。
「すごい花奈ちゃん!」
「あー楽しい」
拍手して喜んでくれるけれど、亜豆ちゃんの方はもうたくさんの魔法を習得しているのだろう。羨ましい。でも私は楽しい。
「それでは、ここまでです」
また魔法を習得しないようにと、リースさんが本を片付けてしまった。もう一つだけ、とおねだりする暇もない。厳しい。
「じゃあまた明日ね、花奈ちゃん」
「今日もお疲れ様、亜豆ちゃん。また明日ね」
聖女として頑張ったであろう亜豆ちゃんを労う。そうすればとびっきりの笑顔を見せてくれた。おやすみ、と見送って部屋に一人になる。明かりも消されて暗い部屋。大人しく眠るつもりはなかった。
ニッと笑みを溢して、もう一度念じる。今度は天蓋にぶつからないように力まないようにした。ふわりと身体が浮くと、どこか不安な気持ちになる。地に足がついていなければ、不安にもなるだろう。それに負けずに浮いたままの状態をキープした。天蓋に手がつく距離。ふわふわふわふわ、だんだん不安が薄れてただ楽しさを感じた。
けれども、グラリと眩暈を覚えた途端にベッドに落ちる。これが魔力が消耗して疲労した状態なのだろう。
うわーと耐えていれば、すぐに治った。なんだ。立ちくらみと変わらないじゃないか。
私はニコニコしながら、ちゃんと休むことにした。また明日。魔法のある一日になるのだと楽しみに眠った。
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