聖女のおまけです。

三月べに

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17 探索任務。

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 昨日と同じく荷馬車に揺られて移動をしたのだけれど、景色が違って見える。同じ道を進んでガタンゴトン揺れた。でも青々しく生い茂った森は元気に見え、空も晴天だ。
 気持ちよく感じて、私は背伸びをするのだった。
 ガーゴイルの城に到着。
 昨日と変わらず、半壊の状態だ。
 騎士達もその地の変わりようには、驚いた様子だった。

「流石は聖女様ってところですね」

 リクが感心して呟くものだから、私も自分のことのように誇りに思う。
 聖女が浄化した光景を見たのはこの場で私だけだったから、それはもう美しかったと私は話した。ぬかるんだ地面に足を取られないように、気を付けながら城に近付く。

「水の匂いがする」

 そんな私の後ろを歩くノットが、スンスンと鼻を鳴らした。
 前にも言われたことがあるな。あれはノットが獣人だった故に、幻獣の匂いを嗅ぎ付けたってことなのだろう。水の匂いか。確かにフォーはそんな匂いだ。

「水の幻獣とへーリーさんが作ってくれたケープです」
「なるほど、水の幻獣か」

 納得したノットは、半壊した城を見上げた。
 城というだけあって、半壊しても広々としている。まぁ半壊しているのだし、迷うことはないだろう。十数名しかいない騎士の半分は、外を見張りつつ探索。半分は中に入る。私もだ。

「崩壊に気を付けてください、ハナ様」
「はい。セドリック隊長」

 扉も壊れていたので、セドリックに手を借りてそこを潜った。
 見上げてみれば、吹き抜けになっていて、壁に沿っての螺旋階段に、いくつかの部屋がある。

「ランスロット、リク、ノット。上を調べて来い」
「りょーかい。オレ一番上な。宝は一番上に隠しておくもんだろ」
「どうでしょうかね」
「魔物の臭いが染み付いていやがる」

 それそれが返事らしきものをして、セドリックの指示に従う。
 真っ先に飛び上がったのは、風の魔法で飛んだランスロットだった。ヒューッとあっという間に天辺に行ってしまう。
 次に動いたのは、もふもふ、いや獅子の姿に変わったノットだ。壊れていない壁から壁と飛び移って、上に上がっていく。猫だな、と思う。
 最後にリクがマイペースにも階段を上がって、二階の部屋から調べた。
 私はセドリック達と一階に残る。でも見上げているだけでは暇なので、瓦礫に何かないか、覗いてみる。

「最上階には何もなーい!」

 ランスロットの声が降ってきた。
 今回は、本当に何も収穫出来ずに帰ることになりそうだ。
 つまんないの。と瓦礫の破片を軽く蹴ってみると、その破片が転がった先がおかしいことに気が付いた。瓦礫に埋まってしまっているけれど、穴がある。穴というより、地下に繋がる階段だろう。きっと戸が、瓦礫で壊れたに違いない。

「セドリック隊長。こっち見てもらえますか?」
「?」

 私は上を注意深く見上げていたセドリックを呼んで見てもらった。

「魔法の気配がしますね」

 いつの間にか戻ってきたリクが手を翳して言う。

「魔法? つまり宝がある可能性があるんですか?」

 私は目を見開いて尋ねた。
 そうすれば、ストンと真後ろに何か降る。振り返れば、白銀のもふもふが一面。

「罠の魔法を感知しただけかもしねぇがな」

 ノットである。さりげなくタッチしようとしたら、その手を掴まれて止められた。その掴んだ手も、もふもふ。ご馳走さまです。

「罠があるってことは何かしらあるってことだよなー!」

 荒々しい風と共に着地したランスロットが、嬉々として覗き込む。
 先ずは瓦礫を退かす作業をしないといけない。そう思ったのは私だけらしく、ノットが瓦礫をぶっ飛ばしてしまった。上からまた瓦礫が落下することを危惧して、セドリックが私の頭上を終始気にする。

「誰行く?」

 ランスロットの問いかけに、私は真っ先に手を挙げてセドリックを見た。
 セドリックは地下と私を交互に見てから、やがて肩を竦める。

「では私が先導しますので、ハナ様は後ろに。ランスロット、ノット、リク、ハナ様の後ろをついてこい。残りはここで待つように」
「了解」

 内心でガッツポーズをした。
 探検! 探検! 探検!
 大はしゃぎする私の心の中。
 階段は大体大人が二人分並んで通れそうなくらいの広さしかなかった。
 私達は一列に進んだ。階段を十個ほど降りた瞬間、壁が赤く光った。

「しまった!! ハナ様危なっ」

 振り返ったセドリックが私を掴んだが、手遅れ。
 左右の壁から炎が噴射して、私とセドリックが飲まれる。
 でも炎で火傷を負うことはなかった。水が私達を包んでいたのだ。
 厳密には、水の壁が球体になって私とセドリックを守った。

「おい。無事か?」

 炎がやめば、水の壁に手を突っ込んだノットに肩を掴まれる。
 水の壁は蒸発するように、空気に溶けて消えた。

「はい……」
「ハナ様……今のは?」
「あー多分このケープの魔法が発動したと思います。へーリーさんが、魔法から守る結界魔法だって言っていましたので」

 私はセドリックにそう答える。

「一度きりの罠魔法ですねー」

 振り返ればリクが、壁に手を当てていた。

「お? なら誰も踏み入れてないイコールお宝ありじゃね?」

 笑みのランスロットが、期待を膨らませる。

「しかし、この先も罠魔法がありそうですね。ハナ様は引き返した方がいいでしょう。すみませんが、その魔法のケープを貸していただけないでしょうか?」
「魔導師様の貴重な結界魔法を使うしかないですね」

 ええ、私も進みたい。
 しぶしぶケープを渡そうとリボンを解こうとする。でも解けなかった。

「あれ? 解けません」
「ちょっと失礼します……ああ、これはへーリーアンサス様ではなくては解けない魔法がかけられていますね」

 いつの間に!
 リクが解くことを諦める。

「……」
「……」
「……」
「……」
「……」

 沈黙して、皆で立ち尽くす。

「こうなったら私が先頭を行って、罠を甘んじて受けましょう!」
「だめです! それだけは絶対にだめです!」

 進もうとしたけれど、両壁をドーンと手をついたセドリックに阻まれた。
 両壁ドーンされた……しょぼん。
 騎士でもない私にレディーファーストさせられないということだろう。

「でも地道に魔法解除していったら……夜が更けますよ」

 リクは先を見下ろしてそう言った。かなりの数があるのか、それとも魔法の罠を解除することは時間のかかる行為なのだろうか。罠魔法の解除は、流石に教えてもらっていないので知らない。

「じゃあこうするしかないんじゃない?」

 早く進みたがっているランスロットの提案はこうだった。
 リクが私をおぶり、後ろをノットとランスロットが歩いて私の腕を掴み、さらに後ろをセドリックがケープを掴む。これなら全員が結界に入れるらしい。全員で行けば怖くない態勢。

「リクさん、大丈夫ですか?」
「これくらい……騎士ですから、大丈夫です」

 リクは小柄だから心配だけれど、騎士だから背負えると言い返された。

「大丈夫かよ、リク。代わろうか?」
「……」

 ケラケラと笑うランスロットに、言い返す余裕はないらしいリク。大丈夫だろうか。私も自分はそんなに重くないとは自負しているけれど、一人を背負いながら階段を下るって、鍛えているとはいえどもかなりきついと思う。申し訳ない。
 ちなみに何故リクが先頭になったかというと、一番魔力の感知が優れているからだった。
 頭の上から火の玉が降り注いだが、また水の壁が現れて私達を守ってくれる。水面が揺れるだけで、私達は無傷に済む。
 カッと光って、球体全体が揺れたが、別に何も感じない。

「ずいぶんと仕掛けがありますねー……」
「何があるかなっ!」

 疲れた声を伸ばすリクのあとに、声を弾ませるランスロット。
 水面が揺れる揺れる。落ちてこないことが、不思議でボーと眺めていた。
 こんなにも仕掛けを施すほどの宝が先にあるのかと期待も膨らむけれど、この結界をつつきたい気持ちの方が今は強い。右手を伸ばそうとした。でも腕を掴むノットに止められる。

「指が吹っ飛ぶぞ」

 水の壁の外では、大爆発が起きていた。
 迂闊に水の壁を突き破ってはいけないか。

「はい、到着しました……よ……」

 もう罠がないらしい。
 私を下ろすリクは前方を見て、呆然とした。
 自分の足で立った私も、それを見る。
 そこにあったのは、宝なんかではなかったのだ。


 
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