短編官能集

山代裕春

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複雑忌憚

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夜の静けさとは良いものだ、昼は弟妹達が騒いでうるさい茶の間もしんとしている。
本来は寝なければいけない時間だが生憎眠りが浅い体質、冷たいお茶を飲みながらぼんやりする。
長男「はぁぁ…」
不意に足音が聞こえ目の前にあったリモコンを手に取り振り返ると、そこには割とよく似た双子の弟。
次男「またか?」
長男「…」
次男「俺にもお茶くれ」
手に持っていたお茶を差し出すといい音を鳴らしながらその場に座る。
長男「お行儀悪いぞ?」
次男「それで俺が誰かに迷惑かけたか?」
長男「少なくとも私の前では不愉快」
次男「言ってろ」
弟はいつもこんな感じだ、私に対してならまだいいが両親、特に母に当たらないか兄として心配である。
長男「早く寝たら?明日用事あるんでしょう?」
次男「お前が寝たら寝る」
長男「…」
さっさと寝ろとは言えない、言えないだけの理由がある。

カタンッ…

長男「!…」
不意に聞こえる物音、台所からだ。
次男「どうした?」
長男「……いや?」
台所の隣は母の部屋、おそらく行ってるな…
次男「まぁいいや…寝るぞ?」
長男「…先行って?トイレ行ってくるから」
次男「あいよー」

………

妻「はぁ♡!あっ…んぅ♡」
淡く光る部屋、普段の母から想像つかないほどの甘い声、規律よく揺れる身体。
長男(…)
開けた扉からそっと覗き込む不埒な息子が一人、拳を握りしめ青筋を立てる姿はなんとも無様だろうか。
妻「はぁあん♡はっ…おまえさま♡」
求める母の眼、それに応えるようにそいつは母の身体を激しく揺らす。
夫「……菫…」
唇を重ね、絡める腕は離すまいと爪を立て背中に刻みつける。
次男(…)
いつの間にかいた弟、戻りが遅くて心配?してきたんだろう…そして、今私と同じ気持ちを抱いている。
妻「あ♡」
不意に痙攣する母、たがそいつは無慈悲に母の身体を揺さぶり続け悲鳴にも似た喘ぎで母は必死に懇願している。
次男(…)
震える拳…今にも殺さんとする眼…弟は私より自制が効かない。
夫「……」
長男・次男(!?)
不意にこちらを見るそいつ、どうやら気付いていたらしい。
夫「…」
長男・次男「……」
そいつは母を見た後再度こちらに目を向け冷たい笑顔でゆっくりと口を動かす。
夫(み・て・ろ…)

ゾクッ…!

背筋が凍ったと同時に湧き上がる怒りと嫉妬。
妻「ひ♡あっぁ!♡ひ、ひが…あぁあっあ♡」
母から吹き出す透明な何か、瞬間身体は反り返り小刻みに震え出す。
快楽に浸る母の顔、それは子供にとって見たくないものの一つだろう、実に不愉快極まりない。
夫「ありがとう…寝ていいよ?」
優しく囁くそいつの声、母は安心したのかゆっくり目を閉じ小さな寝息を立てる。
長男(…)
次男(殺す…!)
長男(よせすい…!?)
扉越しに向けられるドス黒い殺気、気づくとそいつは扉の近くにいた。
次男(…)
長男(はぁ…)
嫌な汗が出る、脚に力が入らない、瞳孔が開いていくのがわかる。
夫「……死にたいの?」

ドックン!!

音が耳には言った…否入る前から体が動いたのかもしれない、気づけば弟と二人で駆け出し部屋に逃げ込んでいた。
長男・次男「はぁ…はぁ…はぁ!」
へたり込む私とかろうじて立っている弟、異変気付き起きてきた弟妹達に心配されたがなんとか平静を保ち弟妹達を寝かせた。
長男「…」
次男「……」
しばらくの沈黙、言葉を交わさずともわかってしまう。
私の手を引きベッドに潜り込む、今日は離す気はないようだ。
てから感じる微かな震えと熱、私もベットに入り弟を見る。
次男「おやすみ…」
長男「……おやすみ」

早朝…

長女「おっはようございます!」
四男「父!母!おはよう!」
三男「よー…」
朝、母の作る朝食の香りと弟妹達の声で目を覚ます。
母「おはよう皆んな」
いつも通りの母、人数分のお椀を運びこちらを見てくる。
長男「母様…おはようございます…」
母「おはよう水仙…睡蓮は?」
長男「まだ寝ています…ふぁ」
母「どうしました?水仙」
心配そうに見てくる母、おでこに手を当てるが熱なんてありませんよ?
四男「母ー!お腹すいたー!」
母「はいはい…」
弟にせがまれその場を後にする母、私なその光景に複雑な思いを持ってしまう。
夫「ふぁぁ…」

ドクン!

気だるそうなあくび…鼻につく錆の臭い…禍々しい雰囲気…
母「あら…おはよう…ございます…」
夫「おはよう…」
四男「父おはよう!今日はご飯食べるの?」
夫「うーん…」
うつらうつらとしているそいつ、座布団に座りぼんやりしている。
次男「ふぁぁ…」
あ、弟起きてきた。
三男「あ、ねぼすけ兄さんおはよう」
次男「んだとチビ」
夫「おはよう睡蓮」
次男「!……」
弟は目も合わせず定位置に座る。
妻「水仙?」
長男「!…」
妻「食器運ぶの手伝って欲しいの」
長男「!はい、母様」
そうだ、何をモヤモヤしていたのだろう母は母である、それは紛れもない事だ…
夫「どれ、俺も」

ゾク!

振り向くと張り付いた笑顔のそいつ…父によく似ている…らしい。
夫「どった?水仙」
私を心配そうに見る眼、それは本心かはたまた監視か…どちらにせよ、この人は私達の…
長男「…いいえ、義父様」

この家族には決して人には言えない事情がある。
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