【第一部完結】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。

マツヤマユタカ

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67 メラルダ侯爵夫人

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「まあ、これはこれはジトー侯爵。ようこそお越しくださいました」

 実に耳障りな気色の悪い猫なで声で登場したのは、メラルダ侯爵夫人であった。

 自邸だというのに紫色の華美なロングドレスを着込み、その上におびただしいほどの宝石をちりばめた黒いビロードのベストを羽織っている。

 右手には何かド派手な鳥の羽から出来たであろう扇子を持ち、ひらひらと自らの顔を仰いでいた。

 その見るからに悪趣味の塊のような存在に、俺は一瞬で嫌悪感をもよおした。

 すると俺の目の前に立つジトー侯爵が、仕方なさげに返答をした。

「急にキーファーの顔が見たくなったものでね。迷惑かと思ったのだが、寄らせてもらったよ」

 言葉遣いそのものは丁寧だったが、その実、心はまったく籠もっていないと俺には思われた。

 間違いなくジトー侯爵も、嫌っているな。

 見ると、キーファー侯爵も顔を夫人から背けている。

 その顔はよく見ると、実に忌々しそうだ。

 もしかすると、この場で一番夫人を嫌っているのは、キーファー侯爵なんじゃないか。

「まあ、何をおっしゃいますやら。ジトー侯爵のご訪問でございましたら、いつ何時、いらしていただいて構いませんことよ」

 メラルダ侯爵夫人はそう言って、けたたましく笑った。

 何だろう。実に癇に障る。

 この人って、不愉快製造器なんじゃなかろうか。

 言葉も仕草も、その存在そのものも、全てが不愉快極まる。

 それに、さっきから一度も俺の方を見ない。

 いや、キーファー侯爵のこともまったく見ていない。

 見ているのは、終始ジトー侯爵だけだ。

 それも、何か値踏みをするような目つきでずっと見ている。

 これも不愉快に思う原因の一つだ。

 当然のことながら、そんな視線を浴びているジトー侯爵はたまったものじゃないだろうな。

 すると、突然ジトー侯爵が思い出したように俺を紹介しようとした。

「ああ、そうだ。紹介するのを忘れていた。こちらはアリオン=レイス。今わたしのところで勉強していてね。実に利発な子だよ」

 ジトー侯爵はメラルダ侯爵夫人の視線を交わすためか、俺の方を見て言った。

 だが当のメラルダ侯爵夫人は、それでも俺を一瞬たりとも見ず、ジトー侯爵を見続けていた。

 ここまで来ると凄いかも。

 普通、一瞬くらいは見るよな。

 だがメラルダは、俺を一顧だにしなかった。

 ひたすら気にせず、ジトー侯爵を見ながら言った。

「まあ、それはそれは。ジトー侯爵のお眼鏡にかなったのでしたら、さぞや利発なのでしょうねえ」

 相変わらずの癇に障る言い方で、メラルダが言った。

 するとジトー侯爵が肩をすぼめながら返した。

「わたし自身は、ご存じのように遊び人で大したことはないが、彼は実に優秀な子だよ」

 だがメラルダ夫人は俺にまったく興味がないため、すかさずこう言ったのだった。

「何をおっしゃいますやら。ジトー侯爵は謙遜がお好きなようで」

 とにかく俺の話題は話したくないらしい。

 まあ別にいいけどね。

 すると横合いから、急にキーファー侯爵が割って入った。

 よほどこの上っ面の挨拶に嫌気が差したのだろう、キーファー侯爵は早々とこの会見を終わらせようとした。

「兄さん、どうやらご用件はないようですね。ではわたしはこの辺で失礼させてもらいますよ」

 するとすかさずメラルダ侯爵夫人が言う。

「あら、貴方。ずいぶんとお疲れのようですね」

 しかしその視線はやはりジトー侯爵に向いており、一瞬たりともキーファー侯爵には向けなかった。

 いや、ほんと、ここまで来ると凄いと思う。
 
 普通、チラッとくらいは見るって。

「ああ、疲れた。後はお前が相手をしてくれ」

 キーファー侯爵も、まったくメラルダ侯爵夫人を見なかった。

 こうなるとどっちもどっちだ。

 こんなところだけ夫婦で意気投合かよ。

「ええ、わかりました。どうぞごゆっくりおやすみなさい。貴方」

 メラルダ侯爵夫人はあごをツンと上げ、少しだけ口元をほころばせて、まったく暖かみのない声音でもって言った。

 結局、最後までこの夫婦は視線を合わせなかった。

 キーファー侯爵はその後ジトー侯爵にも、もちろん俺にも視線を送ることなく静かに退出した。

 ジトー侯爵は少しだけ何か言いたげにしたものの、かける言葉が見つからなかったのか、結局無言であった。

 そしてこの応接間には、三人だけとなった。

 その時、俺は激しい悪寒に襲われた。

 ぶるっと本当に身体が震えた。

 どうやら俺はこの短い時間に、このメラルダという侯爵夫人を心底嫌いになったらしい。

 俺はそのことをはっきりと自覚し、今までの人生でもっとも好ましくない人物と相対することとなったのだった。
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