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22.避けられてる?
避けられてる?
いや、でも、レオナルド様は魔物の討伐や訓練に忙しくしていて、前からそんなに会ってないから、これが通常?
レオナルド様本人に、わたくしの力作「花祭りのレオナルド様」の絵を見られてしまったらしい。
本人に無許可で描いていたその絵は部屋に十枚も並べてあった。(その他の絵はクローゼットの中にしまっていたから見られていないけど)
カインとミリーもドン引きする枚数だ。
気持ち悪いストーカーだと思われてもおかしくない。
って言うか、確実に危ない奴だと思われたはずだ。
レオナルド様と一体どんな顔をして会えばいいのかと悩んでいたというのに、数日経っても会わない。
治療院に行く時に会うかなと思っていたけれど、怪我をした兵士が来ただけで、レオナルド様のお顔を見ることはなかった。
ふぅー
「お嬢様ったらそんな物憂気なため息をついて。またレオナルド様のこと考えていたんですか?」
ミリーが気分転換にとハーブティーを淹れてくれる。
「だって、あれから何日も経つのに全く会えないのよ。避けられてるとしか思えないわ」
ソファに置かれていたクッションを抱え込んで顔を埋めた。
「まあ、あれはちょっと引きますからね」
遠慮のないミリーの言葉に気持ちがより一層ズーンと沈む。
「そうは言っても避けられてると決まったわけではありませんし、気に病みすぎるのはよくないですよ。気分を落ち着けるハーブティーを淹れたんで飲んでみてください」
あまりにも沈んでしまったわたくしを見て、しまったと思ったのか、自分用に町で買ってきたらしい人気の焼き菓子を出してくれた。
遠慮なくマドレーヌとクッキーをパクパクと食べて、温かいハーブティーを飲むと、少し元気が出てくる。
「レオナルド様がどう思ってるかなんて気にしても仕方ないわよね。元々レオナルド様は推しなんであって、どうこうなろうと思っていたわけじゃないし」
花祭りに一緒に出かけたりしたから、前より身近に感じて少しでも好かれたいなんて思ってしまっていたけれど、元々王子であるギルバートに衆人環視の場で婚約破棄されたような傷物令嬢なんだから今更気にしても仕方ないわ。
気分転換に庭園でも散歩させてもらおうと思い立つ。
「ちょっと散歩でもしてくるわ」
コルストル辺境伯家の庭園は王都にある屋敷の庭のような華やかさはない。
どちらかと言えば、自然と共存している素朴な感じの庭だ。
庭の奥には畑もあって、いざって言う時の食料になるようになっている。
白い花が風に揺れているのが見えて、吸い寄せられるようにそちらへ向かう。
フリルが何枚にも重なったような花びらに見覚えがある。
「これ、花祭りの時の…」
隣には黄色の花も咲いている。
ここから摘んできてくれたのね。
ほっこりして、しゃがみ込んで花を見つめる。
「…ジュリア嬢」
後ろを振り返るとレオナルド様が困ったような顔をして、こちらを見ている。
あれだけ会えないことに悩んでいたのに、あっさりとこんなところで顔を合わせることになってしまった。
「あっ…えっと、この間はありがとうございます」
「この間…?」
なんに対して礼を言われたのか、さっぱり分からないのか、首を傾げている。
「治癒魔法を使って倒れた時、部屋まで運んでくださったのはレオナルド様だと聞きましたので」
「ああ、あっそう。うん。もう大丈夫か?」
「ええ、少し寝不足だっただけですから」
「寝不足?」
レオナルド様の眉間に少し皺が寄った。
「あっちょっと趣味に没頭し過ぎてしまって」
さらっと何もなかったことにしようと思っていたのに、レオナルド様の絵を描くことに没頭してしまったのが寝不足の原因だったと焦ってしまう。
「以前は二、三日ほとんど寝ないなんて、日常茶飯事だったんですけどね。ここに来て、ゆっくり過ごすことに身体が慣れちゃったのかしら。あれくらいで倒れちゃうなんて」
言葉を重ねれば重ねるほど、何を言ってるのか分からなくなってくる。
ああ、何言っているんだろう。もう泣きたい。
何とか誤魔化そうとはははと笑ってみる。
「……」
沈黙が痛い。
「…ジュリア嬢は王都でそんな生活を送っていたのか?」
え?なんか怒ってる?
心なしか声に棘を感じる。
「いや、まあ、なかなか仕事が終わらなくて…」
レオナルド様の圧力にどんどん声が小さくなる。
「あのアホ王子」
レオナルド様は小さく何かを呟いたけれど、聞き取れなかった。
なぜかはわからないけど怒らせてしまったのかと俯いていると、頭にポンと手が置かれた。
「ここではのんびりしてたらいいよ。今までの分もね」
頭を優しくぽんぽんとされて、少し顔を上げると、レオナルド様の顔は優しく目が細められていた。
「趣味のためでも無理しないで、ちゃんと睡眠は取るように」
少し笑って言うと、立ち去っていった。
おおおー、レオナルド様のぽんぽん…
ぽんぽん…
わたくしはしばらくその場から動くことができなかった。
いや、でも、レオナルド様は魔物の討伐や訓練に忙しくしていて、前からそんなに会ってないから、これが通常?
レオナルド様本人に、わたくしの力作「花祭りのレオナルド様」の絵を見られてしまったらしい。
本人に無許可で描いていたその絵は部屋に十枚も並べてあった。(その他の絵はクローゼットの中にしまっていたから見られていないけど)
カインとミリーもドン引きする枚数だ。
気持ち悪いストーカーだと思われてもおかしくない。
って言うか、確実に危ない奴だと思われたはずだ。
レオナルド様と一体どんな顔をして会えばいいのかと悩んでいたというのに、数日経っても会わない。
治療院に行く時に会うかなと思っていたけれど、怪我をした兵士が来ただけで、レオナルド様のお顔を見ることはなかった。
ふぅー
「お嬢様ったらそんな物憂気なため息をついて。またレオナルド様のこと考えていたんですか?」
ミリーが気分転換にとハーブティーを淹れてくれる。
「だって、あれから何日も経つのに全く会えないのよ。避けられてるとしか思えないわ」
ソファに置かれていたクッションを抱え込んで顔を埋めた。
「まあ、あれはちょっと引きますからね」
遠慮のないミリーの言葉に気持ちがより一層ズーンと沈む。
「そうは言っても避けられてると決まったわけではありませんし、気に病みすぎるのはよくないですよ。気分を落ち着けるハーブティーを淹れたんで飲んでみてください」
あまりにも沈んでしまったわたくしを見て、しまったと思ったのか、自分用に町で買ってきたらしい人気の焼き菓子を出してくれた。
遠慮なくマドレーヌとクッキーをパクパクと食べて、温かいハーブティーを飲むと、少し元気が出てくる。
「レオナルド様がどう思ってるかなんて気にしても仕方ないわよね。元々レオナルド様は推しなんであって、どうこうなろうと思っていたわけじゃないし」
花祭りに一緒に出かけたりしたから、前より身近に感じて少しでも好かれたいなんて思ってしまっていたけれど、元々王子であるギルバートに衆人環視の場で婚約破棄されたような傷物令嬢なんだから今更気にしても仕方ないわ。
気分転換に庭園でも散歩させてもらおうと思い立つ。
「ちょっと散歩でもしてくるわ」
コルストル辺境伯家の庭園は王都にある屋敷の庭のような華やかさはない。
どちらかと言えば、自然と共存している素朴な感じの庭だ。
庭の奥には畑もあって、いざって言う時の食料になるようになっている。
白い花が風に揺れているのが見えて、吸い寄せられるようにそちらへ向かう。
フリルが何枚にも重なったような花びらに見覚えがある。
「これ、花祭りの時の…」
隣には黄色の花も咲いている。
ここから摘んできてくれたのね。
ほっこりして、しゃがみ込んで花を見つめる。
「…ジュリア嬢」
後ろを振り返るとレオナルド様が困ったような顔をして、こちらを見ている。
あれだけ会えないことに悩んでいたのに、あっさりとこんなところで顔を合わせることになってしまった。
「あっ…えっと、この間はありがとうございます」
「この間…?」
なんに対して礼を言われたのか、さっぱり分からないのか、首を傾げている。
「治癒魔法を使って倒れた時、部屋まで運んでくださったのはレオナルド様だと聞きましたので」
「ああ、あっそう。うん。もう大丈夫か?」
「ええ、少し寝不足だっただけですから」
「寝不足?」
レオナルド様の眉間に少し皺が寄った。
「あっちょっと趣味に没頭し過ぎてしまって」
さらっと何もなかったことにしようと思っていたのに、レオナルド様の絵を描くことに没頭してしまったのが寝不足の原因だったと焦ってしまう。
「以前は二、三日ほとんど寝ないなんて、日常茶飯事だったんですけどね。ここに来て、ゆっくり過ごすことに身体が慣れちゃったのかしら。あれくらいで倒れちゃうなんて」
言葉を重ねれば重ねるほど、何を言ってるのか分からなくなってくる。
ああ、何言っているんだろう。もう泣きたい。
何とか誤魔化そうとはははと笑ってみる。
「……」
沈黙が痛い。
「…ジュリア嬢は王都でそんな生活を送っていたのか?」
え?なんか怒ってる?
心なしか声に棘を感じる。
「いや、まあ、なかなか仕事が終わらなくて…」
レオナルド様の圧力にどんどん声が小さくなる。
「あのアホ王子」
レオナルド様は小さく何かを呟いたけれど、聞き取れなかった。
なぜかはわからないけど怒らせてしまったのかと俯いていると、頭にポンと手が置かれた。
「ここではのんびりしてたらいいよ。今までの分もね」
頭を優しくぽんぽんとされて、少し顔を上げると、レオナルド様の顔は優しく目が細められていた。
「趣味のためでも無理しないで、ちゃんと睡眠は取るように」
少し笑って言うと、立ち去っていった。
おおおー、レオナルド様のぽんぽん…
ぽんぽん…
わたくしはしばらくその場から動くことができなかった。
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