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28.王都帰還
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レオナルド様もパーティーに参加することになったので、帰りはコルストル辺境伯家の大きな馬車に同乗させてもらうことになった。
レナード様とナターリア様の「帰りを待っている」というお言葉に甘えて、多くの荷物はコルストル辺境伯のお城に置いて来た。
行きの馬車とは違って揺れないので、随分楽に移動できた。
…のだけれど、ミリーが気を利かしたのか、行きの馬車酔いに懲りたのか、今回は御者の隣に座っている。
カインとコルストル辺境伯からの護衛の二人は馬で並走しているので、馬車の中はレオナルド様と二人きり。
たまに流し目をするのは色気がただ漏れで、最早凶器なのでは?
今まで、少し堅苦しくて距離を感じるくらいだったのに、いきなり距離を詰めてくるので、何度鼻血を吹きそうになったことか!
身体は楽なはずなのに、目の前で優しげに微笑んでいるレオナルド様にドキドキし通しで、モントレート侯爵家に到着する頃にはぐったりとしてしまっていた。
侯爵家に到着すると、お父様、お母様、弟のアンドレがで迎えてくれた。
「ああ、よく来てくれた。この度は娘がお世話になったな」
挨拶もそこそこにお父様とレオナルド様は二人で部屋に篭ってしまった。
「コルストル辺境伯のところは楽しかったみたいね。すっかり健康的になって、昔のジュリアに戻ったみたいね」
お母様はわたくしの頬をそっと撫でて、安心したように微笑んだ。
「姉上はキレイになったね。髪の毛もツヤツヤ」
アンドレは嬉しそうに纏わりついてくる。
ギルバートの婚約者だった時は、なかなか一緒にいる時間も作れなかった。
ありがたいことに、それでもこうやって懐いてくれる。
「アンドレは少し見ない間にまた大きくなったみたい」
まだ九歳のアンドレの身長は少し見ない間に大きくなっている。
「パーティーはレオナルドさんにエスコートして頂くのよね?」
小さかったアンドレが随分大きくなったわねと母親のような目で見ていると、お母様が弾んだような声で言った。
「ええ、うん。そうなの」
レオナルド様にドレスを贈ってもらって、パーティーのエスコートもしてもらうことは手紙で伝えていたのだ。
お母様の生暖かい視線に照れて頬が熱くなる。
「よかったわね」
ふふふと上品に笑うお母様だけれど、一瞬目が鋭くなった。
(あれと婚約破棄できてほんとよかったわね)と副音声が聞こえてくるような気がする。
お母様、穏やかな顔してたけど、実は随分お怒りだったらしい。
お父様とレオナルド様が部屋から出てくると、既にわたくしとレオナルド様の婚約が整っていた。
レナード様はお父様の旧友で、婚約の打診はわたくしがコルストル辺境伯に身を寄せ始めてすぐに来ていたのだと言う。
今回、レオナルド様はレナード様からその為の書類を待たされていたらしい。
とても仕事が早い。
素敵です。
ふっふふふ。ふっふふ。
レオナルド様と婚約!
わたくしがレオナルド様の婚約者!
こんな日が来るなんて!
浮かれているわたくしは元婚約者のことなど記憶の彼方にやってしまった。
侯爵邸に泊まっていけばいいと誘ったのだけれど、今はまだギルバートに色々勘付かれるのは避けたいので、ホテルに宿泊すると固辞されてしまった。
残念です。
その日は涙を飲んで、レオナルド様を見送った。
贈って頂いたドレスはレオナルド様の瞳の色と同じ翡翠色で、黒い花の刺繍とレースがあしらわれている。
特急で仕上げてもらったとは思えないほど素敵なドレスだ。
パーティー当日、朝から磨かれまくって、ミリーがヘアメイクを施してくれた。
鏡に映るわたくしは今までで一番キレイに仕上がっていると思う。
「お嬢様、お綺麗です。きっとレオナルド様もメロメロですよ」
ミリーがニコニコしてそんなことを言ってくれる。
今まではどんなにキレイなドレスを着ても肌も髪の毛もコンディションが最悪だった。
鏡を見るのが憂鬱になるくらいに。
今日はウキウキが止まらない。
浮き立つ気持ちを抑えつつ、迎えに来てくれたレオナルド様の前にドキドキしながら立つ。
あまりにも無言が続くので、伏せていた目を上げると、少し目を見開いてこちらを見ているレオナルド様と目が合った。
「ああ、綺麗だな。よく似合ってるよ」
少し赤い顔をしながらも褒めてくれるレオナルド様は黒の衣装でいつにも増して凛々しさが際立っている。
黒色の中で紫色のポケットチーフがアクセントになっている。
これはもちろんわたくしの瞳の色とお揃いだ!
「ありがとうございます。レオナルド様も素敵です」
眩しいくらいです。
「お嬢、鼻血に気をつけて」
うっとりとしていたところに後ろからカインが小声で囁いてくる。
折角いい気分だったのに、一気に現実に引き戻された。
余計なことを言うカインをひと睨みして、差し出されたレオナルド様の手を取る。
「娘のことをよろしく頼む」
「わたしたちもこの後出発するわ。後で会いましょう」
心配そうなお父様とお母様に見送られながら、レオナルド様と馬車に乗り込んだ。
いよいよ王太子殿下の生誕を祝うパーティーの本当の趣旨が明らかになる。
それがわたくしとは関係がないことを切に祈る。
レナード様とナターリア様の「帰りを待っている」というお言葉に甘えて、多くの荷物はコルストル辺境伯のお城に置いて来た。
行きの馬車とは違って揺れないので、随分楽に移動できた。
…のだけれど、ミリーが気を利かしたのか、行きの馬車酔いに懲りたのか、今回は御者の隣に座っている。
カインとコルストル辺境伯からの護衛の二人は馬で並走しているので、馬車の中はレオナルド様と二人きり。
たまに流し目をするのは色気がただ漏れで、最早凶器なのでは?
今まで、少し堅苦しくて距離を感じるくらいだったのに、いきなり距離を詰めてくるので、何度鼻血を吹きそうになったことか!
身体は楽なはずなのに、目の前で優しげに微笑んでいるレオナルド様にドキドキし通しで、モントレート侯爵家に到着する頃にはぐったりとしてしまっていた。
侯爵家に到着すると、お父様、お母様、弟のアンドレがで迎えてくれた。
「ああ、よく来てくれた。この度は娘がお世話になったな」
挨拶もそこそこにお父様とレオナルド様は二人で部屋に篭ってしまった。
「コルストル辺境伯のところは楽しかったみたいね。すっかり健康的になって、昔のジュリアに戻ったみたいね」
お母様はわたくしの頬をそっと撫でて、安心したように微笑んだ。
「姉上はキレイになったね。髪の毛もツヤツヤ」
アンドレは嬉しそうに纏わりついてくる。
ギルバートの婚約者だった時は、なかなか一緒にいる時間も作れなかった。
ありがたいことに、それでもこうやって懐いてくれる。
「アンドレは少し見ない間にまた大きくなったみたい」
まだ九歳のアンドレの身長は少し見ない間に大きくなっている。
「パーティーはレオナルドさんにエスコートして頂くのよね?」
小さかったアンドレが随分大きくなったわねと母親のような目で見ていると、お母様が弾んだような声で言った。
「ええ、うん。そうなの」
レオナルド様にドレスを贈ってもらって、パーティーのエスコートもしてもらうことは手紙で伝えていたのだ。
お母様の生暖かい視線に照れて頬が熱くなる。
「よかったわね」
ふふふと上品に笑うお母様だけれど、一瞬目が鋭くなった。
(あれと婚約破棄できてほんとよかったわね)と副音声が聞こえてくるような気がする。
お母様、穏やかな顔してたけど、実は随分お怒りだったらしい。
お父様とレオナルド様が部屋から出てくると、既にわたくしとレオナルド様の婚約が整っていた。
レナード様はお父様の旧友で、婚約の打診はわたくしがコルストル辺境伯に身を寄せ始めてすぐに来ていたのだと言う。
今回、レオナルド様はレナード様からその為の書類を待たされていたらしい。
とても仕事が早い。
素敵です。
ふっふふふ。ふっふふ。
レオナルド様と婚約!
わたくしがレオナルド様の婚約者!
こんな日が来るなんて!
浮かれているわたくしは元婚約者のことなど記憶の彼方にやってしまった。
侯爵邸に泊まっていけばいいと誘ったのだけれど、今はまだギルバートに色々勘付かれるのは避けたいので、ホテルに宿泊すると固辞されてしまった。
残念です。
その日は涙を飲んで、レオナルド様を見送った。
贈って頂いたドレスはレオナルド様の瞳の色と同じ翡翠色で、黒い花の刺繍とレースがあしらわれている。
特急で仕上げてもらったとは思えないほど素敵なドレスだ。
パーティー当日、朝から磨かれまくって、ミリーがヘアメイクを施してくれた。
鏡に映るわたくしは今までで一番キレイに仕上がっていると思う。
「お嬢様、お綺麗です。きっとレオナルド様もメロメロですよ」
ミリーがニコニコしてそんなことを言ってくれる。
今まではどんなにキレイなドレスを着ても肌も髪の毛もコンディションが最悪だった。
鏡を見るのが憂鬱になるくらいに。
今日はウキウキが止まらない。
浮き立つ気持ちを抑えつつ、迎えに来てくれたレオナルド様の前にドキドキしながら立つ。
あまりにも無言が続くので、伏せていた目を上げると、少し目を見開いてこちらを見ているレオナルド様と目が合った。
「ああ、綺麗だな。よく似合ってるよ」
少し赤い顔をしながらも褒めてくれるレオナルド様は黒の衣装でいつにも増して凛々しさが際立っている。
黒色の中で紫色のポケットチーフがアクセントになっている。
これはもちろんわたくしの瞳の色とお揃いだ!
「ありがとうございます。レオナルド様も素敵です」
眩しいくらいです。
「お嬢、鼻血に気をつけて」
うっとりとしていたところに後ろからカインが小声で囁いてくる。
折角いい気分だったのに、一気に現実に引き戻された。
余計なことを言うカインをひと睨みして、差し出されたレオナルド様の手を取る。
「娘のことをよろしく頼む」
「わたしたちもこの後出発するわ。後で会いましょう」
心配そうなお父様とお母様に見送られながら、レオナルド様と馬車に乗り込んだ。
いよいよ王太子殿下の生誕を祝うパーティーの本当の趣旨が明らかになる。
それがわたくしとは関係がないことを切に祈る。
応援ありがとうございます!
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