女嫌いの王子は婚約者の素顔を知らない(改稿版)

荷居人(にいと)

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3章婚約者9歳、王子12歳

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翌日したことと言えば、学園生活そのものを知るということ。この先、会うことがあるかもわからない貴族の娘、子息たちや平民との関わり合いも大事なことだ。

平等を掲げる学園だからこそできること。学園から離れればそこはもう身分を弁えた社会でしかない。

それはともかく学園生活一日目、授業は仕方ないとはいえ、城で習う方がペースも早ければ内容も濃い。聞かずしても問題はないと思えるほどには簡単だった。恐らくスフィアもそうだろう。それでも真面目にノートをとるなどはしているので俺もそれに習う。

わかるから真面目に受けないでは、他の生徒からすれば不真面目な王太子と思われる可能性もあり、それはあまりよくない。

見る限り授業態度が悪いなどはない。とはいえ、それは俺がいるからとなれば話は別だが。

休憩時間は学園で平等とはいえ、話しかけてくるものはスフィア以外いなかった。昨日のルブライト男爵家三男エレハンは隣の教室らしく、普通なら実技以外で向こうから来ない限り関わりはない。しかし、スフィアが興味を持つなら昼の長い休憩で昼食を誘うついでにとは思ったが、それはいいと断られた。

「午後は実技ですから」

それもそうかと納得する。スフィアはエレハン本人ではなく、エレハンの剣に興味があるということだ。ならば、実技で見ればいい話。昼食時間も視線を感じてはいたものの、やはり話しかけてくるものはいなかった。

意外にこのクラスがただ大人しい、もしくは慎重なのだろう。その点を考えれば1年思ったより過ごしやすいかもしれないとは思った。女が視界に入るくらいなんてことはない。好意を押し付け、それを拒否しようが近寄ってくる女が俺は特に嫌いだ。香水やなんやら鼻につくものやじゃらじゃらと装飾品をつけ、金を無駄に使うものもまた同じくらいに嫌いだが。

国の金回りを考えればいいことだが、その無駄にあるお金の使い道をもっと考えないのかと呆れることさえある。領地を携える貴族なら尚のこと。自分を着飾り、周囲を見ない女ばかり目にしてきたからこそ幼い時から女が嫌になったのだ。

スフィアに会う前ならば、母がそうでないことが唯一の救いだった。それこそ母も俺が嫌う女そのものだったなら、女が視界に入っただけで消し去りたい気持ちになったに違いない。例えやり過ぎて王位継承権を剥奪され、牢に入れられようとも。

まあそんな例えはともかく、実技の時間は隣のクラスと一緒だ。まあ予想していたとはいえ、隣のクラスのものは俺の嫌いなタイプがいたみたいだ。それは女ばかりではない。

「これはこれは王太子殿下」

「学園の習わしは守るつもりだ。ある程度でも構わない、平等に接しろ」

「仰せのままに」

にやにやと媚びへつらうように笑うこのような男がエレハンの次に話しかけてこようとは。どちらにしろ、子供内とはいえこういうものがいるのは予測していた。エレハンはともかく、もっと早くに来ると予測していただけに実技で嫌な予感はしていたが。

実技は基本、剣を学ぶ場。女子は護身術程度に、男子は本格的にというのがこの学園。貴族だろうが護衛ばかりに頼ってはいけないという心身共に鍛えようとするこの学園を好き嫌いするものもいるくらいには珍しい実技だ。

男子はともかく、護身術とはいえ令嬢までもが剣を習うのはこの学園だけだろう。平民の女子すらありえないくらいだ。初等部で既に剣の基本を学び、中等部は男女に分かれてそれぞれのやり方で組んでは木刀で剣試合をする。

中等部の実技教師はそれを見て悪い癖などあれば指摘をしにいったり、やり過ぎた危険な行為を見定め止める役割らしい。それなりに実技の教師の人数がいる分、非効率だが安全のためであり、学園のやり方ならば仕方ないだろう。

ちなみに女子はスフィアが何か言ったのか、戸惑いながらも女子全員がスフィアにかかっていっているが簡単に剣だけをはね除けていっている。もはや護身術の意味を知っているか問いたい。

「で?俺の相手はお前か」

昨日はともかく、学園生活は平等に習って素でいくつもりだ。それを理解するくらいの頭は相手にあったようで、向こうが剣代わりの木刀を構える。

男子では一対一での決闘方式、連携を学ぶために数人対数人などそれぞれのやり方で剣試合をしているのがわかる。こいつは俺と一対一で剣を構えたいと言うことだ。

ただの媚びへつらいじゃないということか。スフィアには勝てないと諦めても、自分の剣が弱いとまで言うつもりはない。

「これでも剣は二番目に強いんですよ」

つまり、強さのアピールということか。一番はあのエレハンか。でなければ、スフィアが気にするとは思えない。

「数字にこだわる時点でたかがしれるな」

そう言いながらも油断はせずに先手を打って出る。周囲は自分達の剣試合でこちらを見てはいないだろう。王太子として既に任されている書類仕事もあり、剣ばかりに勤しんでいられないとはいえ怠けてきたつもりはない。

「く………っ」

余程自信でもあったか、防御ばかりに徹する目の前の男に容赦なく剣を打ち込んでいく。攻撃には踏み込めないが、塞ぐことができるだけに剣の実力に嘘はないようだ。カンカンカンと木刀同士が打ち鳴らす音。

相手が疲れが出てきたのかようやく隙を見せた。

そこに狙いを定めて突けば、相手の手から木刀が離される。一瞬の隙によって勝負は着いた。

「体力がないな」

「は……っはは、さすがは王太子殿下で」

ひきつった笑いには悔しさが見てとれる。二番であることに自信をつけた時点で己の限界を見定めたようなもの。この中等部で二番目なら、今後このまま行けばその内さらに下へと落ちるに違いない。

俺はスフィアを越すことこそは諦めたが、あれは別格と考え、それ以外より上であることを常に頭に置いて励んでいる。とはいえ、騎士団長や他の騎士たちに簡単に追い付くと思うほど傲慢なわけではない。

そういった人たちを目標にして励んでいっているのだ。

それは勉学もまた同じ。その場合の対象は教師であったり、宰相であったりするがどれにしても目標を作って上を目指すことでより知識を、力を手に入れられる。そうすることで未来の王に相応しくなっていくというのが俺の考え。理想論かもしれないが、結局のところ理想も目的もなくして立派な王になどなれるはずもないのだから、俺は俺の信じた道を行くだけだ。
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