愛した人を悪役にした俺は

荷居人(にいと)

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しかし、理解をしようとしてできるものでもない。さらには頭を冷やす間もなく事件は起きる。

「陛下、皇后様が消えました」

「………は?」

俺の代わりに仕事をしていてくれた宰相のカーンが何食わぬ顔で部屋に入ってきて告げた言葉。すぐにその言葉の意味が理解できずに出る間抜けな声。

俺を支えて使用人を二人ほど拝借したが、それでもエミィの傍の使用人はいたわけで、医師もいたはずなのにエミィが消えるとはどういうことなのか?訳がわからなかった。だが、伝えた相手が宰相のカーンとなると冗談が言えないやつなだけにそのままの意味以外に受け取れはしない。

「陛下、皇后様が消えました」

思考していれば聞こえなかったのか?と相も変わらず表情も声量すらも変えず同じ言葉を繰り返す。もう少し慌てろと言いたいが、だからこそ頼りにもなるわけで………

「いや………いや、どういう意味だ!?」

あまりの訳のわからなさに大声が出る。ようやく事態を遅くも理解したらしたで頭の中は混乱の渦。何があればこの短い間にエミィが消えるというのか。

「意味も何もそのままの意味ですが」

何を言っている?とばかりに告げるカーンにいっそ苛立ちが沸いてくる。

「そういうことじゃない!何故エミィが消えるんだ!?誰もいなかったのか!?」

「………さあ?」

「っ!バカにしているのか………?」

俺の疑問に答えないカーンはあくまでいつも通りといった態度で知らぬ存ぜぬといった態度。こんなあからさまな生意気な態度のカーンは初めてで苛立ち以上に戸惑いを感じる。何かが、おかしいと。

「私に話すより探しに行っては?皇后様を離したくはないのでしょう?どうせ認識されないでしょうが」

「ち………っすぐにエミィを探しに行く!手の空いているものは全員捜索に当たれ!」

この時冷静とは言えない俺は疑問にも思わなかった。俺がエミィに認識されてないことはつい先程わかったことで、エミィが消えたことを伝えに来た上でその場にいなかったカーンが知る暇はなかっただろうことに。

「本当に愚かで……可哀想な方ですね」

そんな俺だからカーンを部屋から追い出すことも忘れ、部屋を飛び出した後にカーンがひとり呟いたことに気づくこともなくエミィを探しに出た。

エミィへの後悔、次々と襲いかかる絶望感と混乱。それに呑み込まれ最後に残るのは、せめて見えるところにエミィがいてくれればそれでいいという単純な感情。

最初に探したのはエミィのいた部屋。しかし、カーンの言葉通りエミィは部屋から消えていてより強まる気持ち。

「エミィ………エミィ………エミィ…………っどこに………!」

もはやエミィのことで最初から最後まで頭が一杯だった俺には、カーンの怪しい言動に気づくことなどできるはずもなかったのだった。
















ー作者よりコメントー
あけましておめでとうございます。今年初の更新は楽しんでいただけましたでしょうか?

また、誕生日に多くの祝いの言葉ありがとうございました!皆様のおかげでよい年、よい誕生日を迎えられました。

皆様もよい年を迎えられましたか?

今年もどうぞよろしくお願いします!

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