愛した人を悪役にした俺は

荷居人(にいと)

文字の大きさ
12 / 12

12~エミィ視点~

しおりを挟む
それからそれではまだだめだと生きていたお姫様を使うことにした。本の通りにするために利用した処刑されるはずだったお姫様。

何故か前世の弟であるリューク……いえ、今はカーン宰相がひそかに生かしていたけれど。確かにあれを殺せとは言ってないし、カーンはもしかせずとも本通り処刑することで私も死ぬんじゃないかと怖くなったのかもしれない。

あの子は前世から私に従順で、優しい弟だったから。でもおかげでひとつの過去を終わらせるきっかけをつくれるかもしれないと私は考えた。

だから私はカーンの協力で部屋から抜け出し、あのルーラという女性をこちらに来るよう仕向けてもらった。

「な、なんで、ここに………」

「…………」

無言でにっこりと笑ってやれば何故か怯えた様子を見せるお姫様。もっと強気の方に思えたけど人質どころか殺されかねない状況がそうさせるのかもしれない。

「ね、ねぇ、助けてよ……私ちゃんとあなたの言う通りにしたわ、だから」

「最初から死ぬ運命なのだから、諦めなさい」

私が知らないとでも思ったのだろうか。協力を飛び越えて立場を逆転させる気でいたことを。まあそんな欲深い人だと理解していたから頼んだわけだけど。陛下の浮気相手として。

「………っ!ふざけないでよ!協力したら私を人質から解放するって………」

「あら……信じたの?」

知ってる、信じるどころか利用されまいと逆に私たちを利用しようとしていたことを。口約束を信じるお馬鹿さん、自分が陛下を落として人質どころか皇后になれると夢見た愚か者。

人形陛下のお相手にはぴったりな人形姫。今だってあなたは私のお人形玩具にしか見えない。

「この…………っ」

「………っ」

ほら、こんなに簡単に殺意を抱いてくれるんだから。なんて扱いやすいお人形さん。

「きゃああああああっ」

あらかじめカーンに用意させていたメイドが私の代わりに叫び声をあげてくれる。しかし、その悲鳴も気にかける様子はなく殺意を滾らせるお姫様のなんと醜いことか。その醜さのおかげで私と陛下の過去を打ち砕いていってくれるのだと思えば感謝しかないけれど。

「貴女が……!貴女のせいで………っ!」

私が仕向けずともきっと貴女は同じことをしていただろうに。本当に醜い子。まあその未来は変わってしまっているのだから確かに私のせいではあるかもしれないけど。

その後は予定通り陛下は無事私を助けた。

そして私と二人っきりとなり、懺悔をするように泣いた。

「ごめん……ごめんな、エミィ。俺はどうしてもお前を諦めきれない」

ああ、まだ人形のままなのか。まだ私でないエミィを諦めてないのかとこれぐらいではだめだと思ってはいても内心がっくりとしながら私は次の段階に進むことにした。

早く過去のエミィではなく、今の私を陛下が見るようになる日を願いながら。
しおりを挟む
感想 50

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(50件)

おゆう
2022.02.24 おゆう

個人的に浮気のボーダーラインは肉体関係ですね。それを超えちゃえば復縁は有り得ない派です。ただし、それは魅了などによって自分の意志ではない場合に限って。シラフの男は浮気した時点でアウトですね(笑)。

2022.02.24 荷居人(にいと)

肉体関係は完全にアウトですね(笑)

それで復縁はいい未来は見れませんよねえ……

解除
砂狐
2021.03.04 砂狐

すみません、エミィが気持ち悪くてギブアップします。執筆最後まで頑張って下さい。

2021.03.04 荷居人(にいと)

まあ、確かにヒロインらしからぬ感じはありますよね。ここまで読んでいただきありがとうございました。

解除
田沢みん
2021.03.02 田沢みん

なるほど。
全てはお姉様の作戦どおり。
陛下がカーンに嫉妬してどう動くんでしょうね。

2021.03.02 荷居人(にいと)

もはやカーン被害者の巻………

解除

あなたにおすすめの小説

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

身代わりーダイヤモンドのように

Rj
恋愛
恋人のライアンには想い人がいる。その想い人に似ているから私を恋人にした。身代わりは本物にはなれない。 恋人のミッシェルが身代わりではいられないと自分のもとを去っていった。彼女の心に好きという言葉がとどかない。 お互い好きあっていたが破れた恋の話。 一話完結でしたが二話を加え全三話になりました。(6/24変更)

【完結】旦那に愛人がいると知ってから

よどら文鳥
恋愛
 私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。  だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。  それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。  だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。 「……あの女、誰……!?」  この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。  だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。 ※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。

幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。

喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。 学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。 しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。 挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。 パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。 そうしてついに恐れていた事態が起きた。 レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。

愛する義兄に憎まれています

ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。 義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。 許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。 2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。 ふわっと設定でサクっと終わります。 他サイトにも投稿。

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。