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3章(元)アークス国は占いの国

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アークス国には人気の職業が三つある。ひとつは男性に人気の騎士、もうひとつは女性に人気のお嫁さん(妻、母親等も含む)、さらに男女関係なく人気なのが………ん?お嫁さんは職業じゃない?

しかし、よく考えてほしい。平民であれば家事をこなし、育児をし、毎朝毎晩毎日と動き回っており、貴族であろうと夫を支えるべく行動するのが妻の役割。

その役割を果たせぬような女性がいないとは言わないが………貴族の侍女など同じことをしてお金をもらっているというのに、結婚相手というだけで年中無休の無給で働くだけに立派すぎる職業ではないだろうか?またの名を専業主婦という。

専業主婦の方が職業らしいとはいえ、『お嫁さんになるの!』の方が可愛らしい夢に見えるので専業主婦なんて堅苦しい職業名にしなかっただけである。

と、話が逸れたが、最後三つ目に男女共に人気なのは占い師だ。騎士よりも、お嫁さんよりも占い師になりたいものが多いのには理由がある。

ここ、アークス国は占いの導きにより建国された別名占い国と占いの名士が多く、迷いや悩みを持つ人々の導き手となる占い師はとても重宝されている。もちろん誰でもなれるわけではないが。

その中でも誰もが知る有名な王家に仕える占い師はただひとり。

「公爵様、この度はご婚約おめでとうございます。そしてラヴィン公爵様の婚約者様、初めまして。私、王家の占い師を勤めるサギーシ・ウラナイダーと申します」

ウラナイダーというラストネームは王家に仕える占い師に与えられるラストネームである。貴族位とは別として、公爵位に近い別身分として存在する名だ。

「は、はは初めまして………っネムリン・トワーニと申します」

「今日は突然すまない」

「殿下、王家の方がそう簡単に謝罪なさるものではありませんよ。それに私は王家に仕える身。王家の御方に呼ばれればどこであろうと誰であろうと指示に従って占います」

「頼もしい限りだね。今回はこの二人について占っていただきたい」

「はい、喜んでさせていただきます」

その二人とは言わずもがなルーベルトとネムリンについてである。今回サギーシが呼ばれたのは少し時間を遡り、ルーベルトがネムリンとのデートをどう誘い、どこへ行こうかと考えているときだった。

「ルドルク、俺は今大変なことを忘れていた」

「次は何かな………」

正直聞くのが面倒になってきているルドルク。急にそんな風に言うルーベルトほど嫌な予感を感じずにはいられない。

「ネムリンと俺の相性などの占いをしていない」

「占い?……うん、しといてもいいかもね。サギーシに頼もうか」

なんだそんなことかとルドルクは思った。だが、よくよく考えて思ったのだ。占いで自分が巻き込まれないようにならないかと。もしくは巻き込まれる期間がわかるのであれば、それはそれでそこまで耐えればいいというのがわかるだけで気持ちの持ちようが変わるというものだ。

そして時間を戻して今となる。

「まずは婚約して気になるのは相性でしょう」

「ああ」

「は、はあ………」

ルーベルトは興味津々、ネムリンは正直まだルーベルトについて戸惑いの方が大きいため相性を占ってもらったところでどうしたらと困った様子を見せる。

「そうですね………いいか、悪いかと言われれば微妙です」

「微妙………」

二拓に三拓目が出てどう反応すべきかわからず、ルーベルトはただ復唱するだけに終わる。

「ただトワーニ伯爵令嬢様がいることでラヴィン公爵様の健康運があがるようです」

「健康運?」

恋愛の方面と関係ない運にルーベルトが首を傾げるが、ルドルクにはなんとなくわかった。

「眠れるからじゃないかな」

「なるほど」

ルドルクの言葉にルーベルトは納得した。確かにネムリンのおかげでクマが薄らいだのは事実。頭痛も減り、確かに健康運があがったと言えよう。

「トワーニ伯爵令嬢様はラヴィン公爵様といることで偉業を成し遂げると出ていますね」

「え?」

驚きの声をあげたのはネムリン。乗り気ではないもののアークス国の国民なので占いを信じていないわけではないし、占いをせずに生きてきたわけではない。

だが、ルーベルトといることで成し遂げる偉業とは?訳がわからないと頭を混乱させるのも仕方ないだろう。

「ろくな偉業じゃなさそうな気がするんだけれど………」

「さすがめが………っネムリンだ」

成し遂げる偉業に次こそ嫌な予感がするルドルクと、愛ではなく尊敬の眼差しに近いものをネムリンに向けるルーベルト。

「ルドルク殿下」

「何かな?」

「貴方様のためにも国名を変えた方が良さそうです」

「サギーシ、貴女はルーベルトとネムリン伯爵令嬢について占っているはずなのに何故国の占いに?それに僕のためってどういうことかな?」

「この二人を占うと殿下の未来についても見えてきまして………その国名を変えるだけでこの先この国の平和が築けます」

「国名を変えるだけで?」

「はい、フビン国と」

「うん、却下。その線は越えちゃいけない気がするんだ」

「国の平和のためなら陛下も国名を変えることに賛成だと思うが」

「国名が変わるならお祭りありますかね?」

「好きなのか、祭りが」

「はい!」

「わかった。何が何でもさせる。平和のために国名を変えるよう進言するのを手伝うぞ、ルドルク」

「そうじゃない!そうじゃないんだよ!」

実はお祭り好きなネムリン。そんなわけで、珍しく言葉に詰まることなく目を輝かせルーベルトと顔を合わせて話すネムリンを見ればルーベルトが動かないはずがない。

ルドルクは決して国名を変えることに反対なのではない。変える国名の名に反対なのだ。

反対の意を唱える今のルドルクは知らない。先の未来、一ヶ月も経たずに国名が代わりルドルクは改めてルドルク・フビンという名になることを。
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