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セイの好きなものセイの好きなもの………そう心の中で唱えながら私はセイの観察を開始した。

「えーと…………カミィ?」

「どうしたの?セイ」

「いや、最近やけに僕をじっと見てるなぁと」

「今ね、観察してるの!」

「………僕を?」

「セイ以外に観察する人いないよ?」

「そっか………うん、まあ、カミィが僕だけを見る分には悪い気はしないし……うん」

というわけで本人から許可も頂いたし、それはそれはもう遠慮なくセイを見つめ……いや、観察し続け1ヶ月。

私は決心した。

「私、紙袋を被って生きる!」

「いや、何言ってるかわからない」

「セイは紙袋が好きだから!」

「うーん、余計わからないわ」

そう私はセイを観察し続けて見逃しはしなかった。セイがよく紙袋を見ていることに!普通なら紙袋見たぐらいでと思うだろうけど、私、セイに関してだけは勘がいいから間違いない!

「さっそくどんな紙袋を被るか選ばなきゃ」

「あなた令嬢の自覚ある?」

「私は愛に生きる令嬢よ!」

「その結果が紙袋を被るってのがおかしいのよ」

カッテニィにすごく呆れた眼差しを向けられたけど関係ない。私はこうと決めたら梃子でも動かない頑固者である自覚はあるから。

しかし、紙袋とは色々種類があるもので、セイの好みの紙袋がわからないため、私は連日紙袋を色々被り、セイの好みを改めて調べることにした。

「……カミィ?」

「セイ、どう?」

「う、うん?」

「似合う?」

「あー………カミィ、紙袋が顔についてるよ?」

「いや、どう見てもついてるんじゃなく、被ってるでしょ。カミィ、あなたの婚約者があなたのおかしな行動に私を睨むのも忘れて困惑してるわよ」

「好みの紙袋じゃなかったのね………」

「そういう問題じゃないのよ」

「えっと、カミィはなんでも似合うよ?」

「正気か、紙袋被ってるだけよ?」

「本当!?なら今日はこれで過ごすわ!」

「だから正気?」

セイの好みの紙袋ではなかったようだけれど、紙袋を私から外そうとはしなかったし、やっぱりセイは紙袋が好きなんだろう。なんだか周りからの視線が痛かった気もするけど、なんてことはない。これもセイに喜んでもらうためなのだから。

「セイはどんな紙袋が好き?」

「そうだね……カミィに似合うのはピンクとかどうかな」

「なら明日はピンクの紙袋にするね!」

にこにこと笑うセイは楽しそうだ。ピンクの紙袋を明日被ればさらに喜んでくれるかもしれないとその日の私はうっきうきだった。まさかあんなことになるとは思いもせずに。

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