(タイトル変更予定あり)前世悪役令嬢だった私が前世の婚約者に溺愛されています

6章もうひとつの悪役令嬢～ダーリン･ハッピーニ編～

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結婚の適齢期すら過ぎてもダリィはどこまでも一途で、結婚適齢期を過ぎてから私は少しずつハッピーニの記憶も解放しつつあった。だからといって酷い目に合わせた人がいることがなくなるわけじゃない。

「ねぇ」

「ん？」

「………謝りたいの」

「謝りたい？」

何をとばかりにダリィが首を傾げる。今更だろうと謝りたい。それは私のせいで巻き込んだ人々に。

今になってやっと自覚できたのだ。この記憶は終わったことであり、ハッピーニの人生に関係ないと。

ダリィや今の両親たちが必死に私に呼び掛けてくれたおかげだったと素直に思う。前世にここまで私を想ってくれる人たちはいなかったから。

でもその想いは決してアイ私ではないとわかっていた。ハッピーニの記憶を思い出していく度にそう感じて仕方ない。ハッピーニはアイ私と違って愛されてきたのだと羨ましく感じたほどだ。生まれ変わりであるというのに。

今の自分を羨ましく思うなんて変な話だろう。けれどもアイの記憶がそう感じさせてならない。

とにもかくにもアイの記憶に振り回されてハッピーニの人生をダメにしてはいけない。この人生に悪役令嬢はいらないのだから。

ひとりで死ぬ人生はアイだけでいい。そう思ったからこそ前世と同じようにいじめてしまった人たちに謝りたい。

嫌われる必要なんて今はないのだから。

謝りたい人物を言えばダリィも今の両親も了承してくれた。好きにするようにと。その手配もしてくれた。

私のために動いてくれる人たちに心がとても温かくなるような気がした。謝罪した人たちも寧ろ容姿のことをこそこそ言ったりして悪かったと逆に謝られたりもして、アイの時も真摯に向き合えば何か変わっていたんだろうか？なんて考えさせられる。

だからつい考えてしまう。アイの話をダリィたちにすればアイであった私を救ってくれるのではないかと。

救うという言葉は変かもしれない。ただ、アイの傷を癒してくれるのではないかと期待してしまう。人の優しさと想いに触れてしまったばかりに。

ハッピーニであるからこそだというのに、アイ私すらも丸ごと愛してくれるのではないかと期待してしまう。愛されることを諦めた私にハッピーニの人生は新たなる希望をもたらしてくれた。

しかし、現実は残酷でまたしても私は死の病を患うこととなった。まるでそれは希望を打ち砕くように、アイ私に命をかけた試練を与えるかのように。

そんな出来事に私はハッピーニとハッピーニを愛する人たちに謝っても謝りきれないそんな気持ちになった。アイ私のせいでハッピーニの人生まで台無しにしてしまうと。

死の病を告げられた日、私は見張りすらも追い出してひとり泣き叫んだ。生まれ変わっても尚、不幸しか呼ばない自分の存在に対して。