私は悪役令嬢、ヒロインを殺した犯人です

荷居人(にいと)

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「君と婚約破棄しようと思う」

それは卒業パーティーの場で言われた。知ってた未来とは違い、どことなく苦しそうに言うこんな時まで優しい優しい私の王子様。優しすぎるがためにひとりを犠牲にした。彼にはそんなつもりなかったのだろうけれど。

「そうですか……ふふ、そうですか」

「何を笑っている……?」

しーんとした会場の中でひとり、私の笑い声だけが聞こえる。だって笑わずにいられるわけがない。人殺しの私を未だ信じようと見る彼があまりにもおかしいもの。

「それだけじゃないでしょう?」

笑いながら首をかしげて聞く。この会場の中なら私に逃げる場所がないように私がいる限り、彼もまた逃げられない。婚約破棄だけでは終わらせない。私はの未来通り、悪役として散りたいのだから。そうすることでようやく私の愛があなたに伝わると信じている。

「レーリィ・ラントールを殺したのは本当に君なのか」

その私の婚約者であり、この国の王子から放たれた言葉に、ざわりと周囲がざわめく。その場には私の父母もいて信じたくないという目を私に向けていた。それもそうだろう。何故ならレーリィ・ラントールはサシャ・ラントールの名を持つ私の実の妹なのだから。

「ええ、そうです。もう調べもついているのでしょう?」

それは不自然なくらいに証拠を残したのだから。聞くだけ無駄だろうに。彼が私をいつまでたっても断罪してくれないから、今日という日が最後のチャンスだと強行に及んだ結果が殺人。それでも今の私はとても清々しい気持ちでいっぱいだ。だって私はこの世で一番ヒロインに成り代わったレーリィ・ラントールが大嫌いだったから。

「誰かに………誰かに嵌められたんじゃないのか?」

「いいえ、私の意思です。私がレーリィをいじめていたのご存じでしょう?」

何故そこまで私を庇おうとするのか……それだけがずっと不可解で仕方がない。本来のヒロインが消えたせいで何かが変わったのだろうか?いや、そんなはずはない。だってヒロインが消えてもヒロインは生まれたのだから。だからレーリィを殺したところでまたヒロインは生まれるのだろう。

ああ………なんと憎らしい世界だろうか。

「……っなぜ、君は………そんなに私が嫌いか?人を……妹を殺して罪を犯すほどに……」

「いいえ、私が嫌いなのは私の姉を奪ったこの世界ゲームです。姉に成り代わったレーリィ世界の意思です」

誰一人として私の言葉を理解する人はいない。できるはずがない。

「君に姉はいない……だろう」

事実、サシャには妹がいても姉がいたことはなかったのだから。
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