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第1章 ふたつ名の令嬢と龍の託宣

第4話 氷結の王子

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 王妃が去った私室で、ハインリヒ王子はいらだつように大きく息を吐いた。

(あの人はいつまでたっても苦手だ……)

 正論ではなく感情でものを言う人だとわかってはいるのだが、振り回されている感が否めない。
 
 先ほども先ぶれもなく突然やってきたか思うと、明日の茶会に必ず出席するよう言ってきたのだ。予定されていた公務の数々は、いつの間にやら全てが変更されていた。

 イジドーラ王妃は父王の後妻で、ハインリヒの実の母親ではない。

 実母である前王妃が亡くなったのはハインリヒが物心つく前だったので、イジドーラはいわば育ての母だ。そうはいっても、言うほど世話してもらった記憶もないのだが。

 とはいえ、それなりに愛情を注いでもらっていることは、知っているし、感謝もしている。
 悪い人ではないのだ。厄介ではあるが……。

 早急に婚約者を見つけなくてはいけないことは、自分も重々承知している。しかし、どうしろというのだ。適当に見繕うことなどできるはずもないのに。
 
 父であるディートリヒ王は触れればわかると言った。では、触れられない自分はどうしたらいいのか。
 
 ……堂々巡りである。

 明日は、王妃のお茶会に出なければならない。
 
 また大勢の令嬢たちに囲まれるのかと思うと、ハインリヒは苛立ちをかくそうともせず、再び大きく息を吐いた。
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