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第224話 数秒
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──結婚式当日。
結婚式は王宮の大広間で執り行われる。
この日の為、急ピッチで大広間を大々的にウェディング仕様に改装が行われた。
新郎新婦の入場から始まり、着々と結婚式プログラムが進められる。
今回の結婚式の主役であるフォルタニアは、エルフの国で作られた特産品である上質なシルクで編まれた、純白のウェディングドレスとヴェール、そしてブーケで綺麗に着飾っており、その姿はまるで天使のように美しかった。
ちなみにゲスト席には、六魔導士〝剣斎〟エルルカ・アーレヤストの姿もある。
時折、エルルカはフォルタニアに視線を向けるが、フォルタニアは結婚式が始まって依頼、ずっと俯いたままで、その視線に気づくことは無かった。
花婿姿のボルスと花嫁姿のフォルタニアが祭壇に立つ。
そしてこの結婚式を取り仕切る司祭が現れる。
司祭により、聖書朗読が始まる。
──
────
司祭の聖書朗読が粛々と進んでいき、その時は直ぐにやってきた。
「ボルス・ハンジ。汝は愛を、魂を逃走と理解し、それでも尚、神の導きによって今、この時から、フォルタニア・シルフディートを妻とし夫婦となる。汝、健やかなる時も、病める時も、嬉しき時も、悲しき時も、これを愛し、敬い、慰め合い、分かち合い、助け共に、その命尽きる迄、永遠に愛すことを誓いますか?」
「誓います」
ボルスが宣言する。
「フォルタニア・シルフディート。汝は愛を、魂を逃走と理解し、それでも尚、神の導きによって今、この時から、ボルス・ハンジを夫とし夫婦となる。汝、健やかなる時も、病める時も、嬉しき時も、悲しき時も、これを愛し、敬い、慰め合い、分かち合い、助け共に、その命尽きる迄、永遠に愛すことを誓いますか?」
「…………誓えません…………」
フォルタニアは嘘が吐けない。
嘘が吐けないのだ。嫌な物は嫌と言うしかない。
フォルタニアが悪いのではない。自分の気持ちをコントロール何て誰にもできないのだから──
結婚──女性ならば1度は誰もが憧れたことがあるだろう。フォルタニアもその例外ではない。
『いつか、私も素敵な人と一緒に』
そんな事を昔、考えた事もあった。
だが、どうしても目の前のボルス・ハンジという男をフォルタニアは一切、好感など持てず、ましてや好きになるなんて天地がひっくり返ってもあり得ないだろうと、フォルタニアは思う。
「構わないわ、続けなさい」
フォルタニアの発言で凍りつく式場に女王の一言が響く。
「ん、んっ、では、誓いのキスを」
司祭が告げる。
その言葉にじゅるりとボルスは舌で自身の上唇を舐める。
対するフォルタニアは覚悟を決めたように、ゆっくりと目を閉じる。
そして直ぐに来るであろう、唇に唇が当たる初めての感触までの数秒がやけに長く感じる。
だが、1秒、2秒経っても覚悟していたその感触は来ない。その代わりと言っては何だが、一人の男性の声がフォルタニアに投げ掛けられ、次の瞬間、全身をふわりとした感覚が襲い、フォルタニアは、その男にお姫様抱っこで抱え上げられる。
「よう、フォルタニア、怖かったらそのまま目ぇ閉じてな? ──この結婚式を壊しに来た」
そう場違いな台詞と共に、誓いのキスを邪魔し、結婚式の破壊を宣言するは、稗月倖真であった。
──結婚式当日。
結婚式は王宮の大広間で執り行われる。
この日の為、急ピッチで大広間を大々的にウェディング仕様に改装が行われた。
新郎新婦の入場から始まり、着々と結婚式プログラムが進められる。
今回の結婚式の主役であるフォルタニアは、エルフの国で作られた特産品である上質なシルクで編まれた、純白のウェディングドレスとヴェール、そしてブーケで綺麗に着飾っており、その姿はまるで天使のように美しかった。
ちなみにゲスト席には、六魔導士〝剣斎〟エルルカ・アーレヤストの姿もある。
時折、エルルカはフォルタニアに視線を向けるが、フォルタニアは結婚式が始まって依頼、ずっと俯いたままで、その視線に気づくことは無かった。
花婿姿のボルスと花嫁姿のフォルタニアが祭壇に立つ。
そしてこの結婚式を取り仕切る司祭が現れる。
司祭により、聖書朗読が始まる。
──
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司祭の聖書朗読が粛々と進んでいき、その時は直ぐにやってきた。
「ボルス・ハンジ。汝は愛を、魂を逃走と理解し、それでも尚、神の導きによって今、この時から、フォルタニア・シルフディートを妻とし夫婦となる。汝、健やかなる時も、病める時も、嬉しき時も、悲しき時も、これを愛し、敬い、慰め合い、分かち合い、助け共に、その命尽きる迄、永遠に愛すことを誓いますか?」
「誓います」
ボルスが宣言する。
「フォルタニア・シルフディート。汝は愛を、魂を逃走と理解し、それでも尚、神の導きによって今、この時から、ボルス・ハンジを夫とし夫婦となる。汝、健やかなる時も、病める時も、嬉しき時も、悲しき時も、これを愛し、敬い、慰め合い、分かち合い、助け共に、その命尽きる迄、永遠に愛すことを誓いますか?」
「…………誓えません…………」
フォルタニアは嘘が吐けない。
嘘が吐けないのだ。嫌な物は嫌と言うしかない。
フォルタニアが悪いのではない。自分の気持ちをコントロール何て誰にもできないのだから──
結婚──女性ならば1度は誰もが憧れたことがあるだろう。フォルタニアもその例外ではない。
『いつか、私も素敵な人と一緒に』
そんな事を昔、考えた事もあった。
だが、どうしても目の前のボルス・ハンジという男をフォルタニアは一切、好感など持てず、ましてや好きになるなんて天地がひっくり返ってもあり得ないだろうと、フォルタニアは思う。
「構わないわ、続けなさい」
フォルタニアの発言で凍りつく式場に女王の一言が響く。
「ん、んっ、では、誓いのキスを」
司祭が告げる。
その言葉にじゅるりとボルスは舌で自身の上唇を舐める。
対するフォルタニアは覚悟を決めたように、ゆっくりと目を閉じる。
そして直ぐに来るであろう、唇に唇が当たる初めての感触までの数秒がやけに長く感じる。
だが、1秒、2秒経っても覚悟していたその感触は来ない。その代わりと言っては何だが、一人の男性の声がフォルタニアに投げ掛けられ、次の瞬間、全身をふわりとした感覚が襲い、フォルタニアは、その男にお姫様抱っこで抱え上げられる。
「よう、フォルタニア、怖かったらそのまま目ぇ閉じてな? ──この結婚式を壊しに来た」
そう場違いな台詞と共に、誓いのキスを邪魔し、結婚式の破壊を宣言するは、稗月倖真であった。
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