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第230話 留守
しおりを挟む──大都市エルクステン
ギルド・受付前──
人口密度が高く、冒険者や騎士で賑わうギルド内、そこには一人の少女が足を運んでいた。
「ふぅ、やっと着いた。で、ユキマサは何処?」
栗毛色の長い髪の少女──花蓮理沙は、キョロキョロとギルドの中を興味津々に見渡しながら呟く。
「てか、ユキマサ、宿とかどうしてるんだろう? 何処の宿屋に泊まってるか聞いとけばよかったな」
「あ、あれ? あ、あの、理沙さんですか?」
あわあわした可愛らしい声がかかる。
そこには140cmぐらいの長い水色の髪に、水色のワンピースを着た、小動物のような少女がいた。
「あ、確か、ミリアちゃんだっけ? こんにちは!」
「ふぁ、ふぁい! み、ミリア・ハイルデートです……! こ、こんにちはございます!」
自分から話しかけたのだが、ミリアは凄く緊張していた。理沙とは一度会ってはいるが、一対一で話すのは少しばかりまだミリアには難易度が高かった。
それでもミリアが話しかけれたのは、直感で理沙が良い人だと認識していたからだ。
「ミリアちゃん、ユキマサ何処にいるか知らない?」
「あ、はい、知ってます」
と、その時だ。
「ミリアー」
「ミリアどこー」
「あ、クレハ、エメレア、こっちだよ」
パタパタと手を振るミリア。
「て、あれ、理沙さん? 珍しい組み合わせだね」
「こんにちは、クレハさん。今、丁度ここでミリアちゃんに会って、ユキマサの居場所を聞いてたの」
「あー……ユキマサ君なら、昨日から──エルフの国〝シルフディート〟に行っちゃって留守ですよ……」
「エルフの国って。うわぁ、あいつ好きそう」
「システィア姉さんから聞いたのだけど、何か私に変な頼み事をしてったのよね」
「すいません、家のバカが……」
身内の失礼に謝る理沙。
「〝精神疎通〟で、ノアさんへの伝言だっけ? 正確にはお付きの──ヴィクトリア・フィーさん経由での伝言だけど」
「ええ、でも、内容はよく分からなかったわね。一応、伝えといてあげたけど、正直、意味不明だったわ」
「ご、ごめんなさい。本当に家のバカが……」
「あ、いや、理沙さんが謝ること無いわよ……って、ミリア、どうしたの? 嬉しそうな顔して?」
クレハと理沙とエメレアの会話を、嬉しそうに黙って聞いていたミリアにエメレアが問いかける。
「えへへ、エメレアがユキマサさんのお願いを聞いたのが嬉しかったの──皆、仲良し! 嬉しいね!」
「べ、別にシスティアさんの顔を立てただけよ///」
「それで理沙さんはユキマサ君に何か用事ですか?」
「ええ、ちょっと、おじーちゃんとの和解もありましたし、この世界のおじーちゃんの家に一緒に住まないかと思いまして」
「え?」
「わわっ……!」
エメレア、ミリアが慌てた声をあげる。
「……え……」
ピシッ! と、固まったクレハは世界が終わったのではないか? と、言うような顔をするのだった──
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