上 下
231 / 518

第230話 留守

しおりを挟む

 ──大都市エルクステン
       ギルド・受付前──

 人口密度が高く、冒険者や騎士で賑わうギルド内、そこには一人の少女が足を運んでいた。

「ふぅ、やっと着いた。で、ユキマサは何処?」

 栗毛色の長い髪の少女──花蓮理沙はなはすりさは、キョロキョロとギルドの中を興味津々に見渡しながら呟く。

「てか、ユキマサ、宿とかどうしてるんだろう? 何処の宿屋に泊まってるか聞いとけばよかったな」
「あ、あれ? あ、あの、理沙さんですか?」

 あわあわした可愛らしい声がかかる。
 そこには140cmぐらいの長い水色の髪に、水色のワンピースを着た、小動物のような少女がいた。

「あ、確か、ミリアちゃんだっけ? こんにちは!」
「ふぁ、ふぁい! み、ミリア・ハイルデートです……! こ、こんにちはございます!」

 自分から話しかけたのだが、ミリアは凄く緊張していた。理沙とは一度会ってはいるが、一対一で話すのは少しばかりまだミリアには難易度が高かった。
 それでもミリアが話しかけれたのは、直感で理沙が良い人だと認識していたからだ。

「ミリアちゃん、ユキマサ何処にいるか知らない?」
「あ、はい、知ってます」

 と、その時だ。

「ミリアー」
「ミリアどこー」

「あ、クレハ、エメレア、こっちだよ」

 パタパタと手を振るミリア。

「て、あれ、理沙さん? 珍しい組み合わせだね」
「こんにちは、クレハさん。今、丁度ここでミリアちゃんに会って、ユキマサの居場所を聞いてたの」

「あー……ユキマサ君なら、昨日から──エルフの国〝シルフディート〟に行っちゃって留守ですよ……」
「エルフの国って。うわぁ、あいつ好きそう」

「システィア姉さんから聞いたのだけど、何か私に変な頼み事をしてったのよね」
「すいません、家のバカが……」

 身内の失礼に謝る理沙。

「〝精神疎通テレパス〟で、ノアさんへの伝言だっけ? 正確にはお付きの──ヴィクトリア・フィーさん経由での伝言だけど」
「ええ、でも、内容はよく分からなかったわね。一応、伝えといてあげたけど、正直、意味不明だったわ」

「ご、ごめんなさい。本当に家のバカが……」
「あ、いや、理沙さんが謝ること無いわよ……って、ミリア、どうしたの? 嬉しそうな顔して?」

 クレハと理沙とエメレアの会話を、嬉しそうに黙って聞いていたミリアにエメレアが問いかける。

「えへへ、エメレアがユキマサさんのお願いを聞いたのが嬉しかったの──皆、仲良し! 嬉しいね!」
「べ、別にシスティアさんの顔を立てただけよ///」

「それで理沙さんはユキマサ君に何か用事ですか?」
「ええ、ちょっと、おじーちゃんとのもありましたし、この世界のおじーちゃんの家に一緒に住まないかと思いまして」

「え?」
「わわっ……!」

 エメレア、ミリアが慌てた声をあげる。

「……え……」

 ピシッ! と、固まったクレハは世界が終わったのではないか? と、言うような顔をするのだった──
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】貴方が好きなのはあくまでも私のお姉様

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,899pt お気に入り:2,528

一途な令嬢は悪役になり王子の幸福を望む

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,033pt お気に入り:1,709

養子の妹が、私の許嫁を横取りしようとしてきます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,586pt お気に入り:4

【完結】旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:53,221pt お気に入り:8,094

王子を助けたのは妹だと勘違いされた令嬢は人魚姫の嘆きを知る

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,088pt お気に入り:2,675

遑神 ーいとまがみー

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:30

20年かけた恋が実ったって言うけど結局は略奪でしょ?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,125pt お気に入り:7

世界を造った神様は人界で隠居します。(飽きたら冒険者!)

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:6

吸血鬼が異世界転生したら普通に馴染んだ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:0

処理中です...