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第374話 シナノの願い
しおりを挟む──翌朝。
「う~、頭が痛いです。吐き気がします……」
起きるな否やシナノが頭痛と吐き気を訴える。
「二日酔いだな。はぁ、仕方ねぇな」
「え、わ、何ですか!?」
シナノの額に手を当てる俺に戸惑った様子を見せる。次に俺は回復魔法を使う。二日酔いにも一発だ。
母さんには酔った親父には絶対使うなって言われてたけどな、自業自得だからって。まあ、ごもっとも。
「わ、一瞬で治りましたよ! 何ですか一体!?」
「飲み過ぎには気を付けるんだな」
「はい……ありがとうございます」
朝食は白米と卵と味噌汁だ。シンプルでいいよな。
実に美味だった。シナノもクレハも何も文句無く食べていた。二人は味噌汁をおかわりしてたよ。
つーか、前にエメレアも気に入った様子だったし、異世界人に受け良いのかな? 味噌汁。
まあ、出汁系はハマると本当に美味いよな。
ところで、42℃の熱があっても食事は残さないと豪語してたシナノだが、二日酔いでも残さず食べたのかね? 治すの後にすれば良かった……なんてな。
食事を終えると、徐に立ち上がったシナノが──
「あ、あのっ!!」
継ぎ接ぎだらけのロングスカートを小さく握り、意を決したような声で話かけて来る。
意外にも唐突で大きな声だったので、洗った皿を拭くクレハがビクッとして一瞬手を止めた。
「……ど、どうした?」
すぅ、はぁ~、とシナノは息を整える。
「私もお二人の旅に連れてって貰えませんか! 家事でも雑用でも何でもやります! 必ず役に立ちますから! ──どうか、どうかお願いします!」
バッと頭を下げるシナノ。その様子にクレハは「どうするの?」みたいな表情。
だが、俺の中での答えは、もう決まっている。
「悪い、お前を連れてはいけない。割りと危険な旅なんだ。今の所の最終目標は魔王の討伐、お前は戦えるか? 奴等と、魔王と──?」
「……た、戦えません。私に戦闘力は皆無です……」
「嫌な言い方になったな、すまん」
魔王の討伐と聞き、シナノの観念したように引き下がった。そりゃそうだ、魔王と好き好んで戦いたいと言う奴が、この世界に何人いることやら。
まあ、少なくとも一般人のすることじゃねぇな。冒険者で一握り、騎士で防衛の為に仕方なく。後はたまに居る物好き。それぐらいだろう。
家の外に出ると、家を〝アイテムストレージ〟に仕舞う。ちなみに家の中に誰か生きた人間がいた場合、家だけが〝アイテムストレージ〟に仕舞われ、人はその場に置き去りにされるみたいだ。
体感的には家にいたら家が消えた。みたいな摩訶不思議な状態なんだろうな。なったこと無いけど。
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