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第387話 ボロボロのお菓子
しおりを挟むまさか街の中に家を取り出すワケにもいかず〝スノーワイト〟での初日は俺たちは街の宿屋に泊まった。
飯付きだったのでそこで夕食は済ませた。味は悪くなかった。家族経営らしく50代の夫婦と15.16ぐらいの娘さんの三人で営む宿屋らしい。
すいませんね。そんな平和な所に指名手配犯がお邪魔して、迷惑はかけないので多めに見てくださいな。
「あれ、お客さん、出発ですか?」
朝食を終えると宿屋の娘が話かけて来る。
頭にバンダナを巻いた茶髪ショートの少女だ。
「ああ、朝食美味かったよ。ご馳走さま」
「私も美味しかったです。ご馳走さまです」
「あ、いえいえ。これはご丁寧に。嬉しいです!」
「なあ、あんた、この街で変わったことは無いか?」
「変わったことですか? いえ……特に。あ、申し遅れました。私はランと申します」
「そうか、ラン。ありがとう。また今夜も世話になると思うが、よろしく頼むよ」
「はい、ではお二人様でご予約入れときますね」
ランの話だと変わったことは無いと言う。てことは〝仙極〟は追っては来ていないか。
人類の最大戦力部隊である〝六魔導士〟が街に来た何てなれば十分な変わったことになるだろう。
次に俺たちは各街に大なり小なりあると言うギルドを探した。宿屋から歩いて20分ほどの所に中規模なギルドがあった。クレハが中を調べに行く。
俺の手配書の確認だ。まあ一応な。手配書の有り無しで俺のこの街での動きやすさが決まるし。
ギルドの外でフード付きマントを被った俺がクレハを待っていると、ふと6.7歳の少女が目に入る。長めの黒い髪の、幼いが利発そうな少女は籠の中の小さな袋に入った菓子のような物を売ってるみたいだ。
──と、その時だ。
茶色いコートを着た男性が少女にぶつかる。
「あっ……」
籠の中の菓子は道に落ちる。
「ち、気を付けろ」
あろうことかコートの男性は落ちた菓子を何の躊躇も無く踏みつけ、その場を去ってしまう。少女はボロボロになってしまった菓子を悲しそうに拾い集める。
俺はそっと少女に近づき一つ菓子を拾う。
あーあ、こりゃもう売り物にならないな。
砕けた菓子を俺は口に運ぶ。
「アップルパイか。うん、美味い」
少女はポカーンと俺を見る。
あー、端から見れば無銭飲食だしな。
「ああ、驚かせて悪いな。このアップルパイを全部売ってくれないか? とても美味かった」
「え、あ、ぜ、全部ですかっ!? でも、割れちゃったり、ぐちゃぐちゃになったりしちゃってて……」
「味は変わらん。腹が減って死にそうなんだ」
アップルパイの数は19個、っと、俺が食べちまったのが1個あるから全部で20個か。
まあ、これぐらいなら問題なく食えるな。
「20個で銀貨4枚です。ありがとうございます!」
1個銅貨2枚なのか日本円で200円。
妥当な値段より少し安い部類だ。
銀貨4枚を渡し、アップルパイを受け取る。
「ありがとう。気を付けて帰りな?」
「こ、こちらこそありがとうございました!」
ペコペコと頭を下げる少女に手を振り俺はその場を後にする。それにしても、あのぶつかってきた茶色コートの奴、罰当たればいいと思う。
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