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第388話 チャラ男

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「お、お帰り。アップルパイ食うか?」
「あ、うん。ありがとう……って、いつの間にこんなに買ったの!? あと凄くボロボロだよ。これ……」

 ギルドの様子を見てきたクレハにアップルパイを渡すと軽めのツッコミが返ってくる。

「成り行きでな。今さっき買い占めた所だ」
「……ユキマサ君のことだから成り行きでも、どうせそれ相応の理由はあるんでしょ?」
「さぁ、どうだろうな?」

 話を軽く流し、サクリと俺はアップルパイを食べながらギルドの様子はどうだったかをクレハに問う。

「手配書あったよ。ここまで届いてるなら基本的にどの街でも手配書は貼られてると思う」

 ユキマサ君、悪くないのに。と、呟くクレハに俺は「ありがとな」と返すと「うん……」と小さく頷いた。

 と、その時だ──

「──ウェーイ! ちょっとそこ行くそこのイカスお兄さん達、ちょーっとだけお話いい感じ的な?」

 金髪に褐色の見るからにも喋るからにもチャラい男に話かけられる。どこのキャッチだよ、コイツ。

「ユキマサ君!」
。心配すんな」

 コイツには関わらない方が良いな。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、待ってくださいよ!」
「先を急いでるんだが?」
「まあ、そう言わず。つーか、見てましたよ。俺感動したんスよ。あの幼女パイセンのアップルパイの一件ってやつを、くぅ~、痺れるっスね」

 かなり話し方に訛りがある。
 なんつーか絵に描いたようなチャラ男喋りだ。

「成り行きだ」
「ひゅう、こうなんつーか、一日一善的な? マイルール持ってる感じスか?」
「言ってろ。用がそれだけなら俺たちは行くぞ」

 クレハの手を引き俺は路上のキャッチを振りきるような感じでその場を後にする。
 根は悪い奴じゃなさそうだが、正直

 *

 ユキマサが去ったギルド前の道で金髪の褐色肌のチャラい男は、不意に背後から声をかけられた。

「はぁ、やっと見つけた。チャッチャラーさん、ギルドの前で何やってるんですか!」
「おっ、バラッたん。お疲れちゃん」
「バラドです。例の男は見つかったんですか?」

 バラド。通称バラッたん。は憲兵服に長いマント、手には抱え持つような大きめの銃が握られている。

「見つかったつーか、見つかってないっつーか、パラドックス的な? 頭ん中こんがらマッチョなワケよ」
「はぁ、よく分かりませんが。現状をかんがみるに見つかってないと解釈してよろしいですか?」
「オーケー、それでいきやしょ。そーだ、バラッたん。バラッたんなら、地面に落ちて踏まれたボロボロのアップルパイってどんな状況なら買う?」
「え、そんなの普通の状況なら買いませんよ」
「どゅーかん、やっぱイミフ、わけワカメだわ」

 チャラ男ことチャッチャラーは伸びをしながら雪降る空を仰ぐ。そんなチャッチャラーをバラドは不思議そうに見つめるのだった。
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