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第401話 服屋
しおりを挟む〝スノーワイトの街〟の服屋に着くと、思いの外に店が広い……異世界の服屋だし、エルフの国の服屋と同じぐらいで、大きくてもコンビニぐらいかと思ってたが、倍はあるな。
「いらっしゃいませ。あら、旅の方ですか?」
出迎えてくれたのは男性にしては少し長めの青い髪の20代後半ぐらいのイケメン……
なのだが、話しのトーンと仕草から察するに、オネェだぞコイツ! イケメンのオカマだ。珍しい。
「そ、そんな所だ。悪いが少し店を見せて貰うぜ」
「お邪魔します……」
イケメン青髪オカマキャラという中々の店員にクレハも少し苦笑いだ。
「あらぁ、そんな畏まらなくてもいいのよとま。ささっ、たっぷり見ていってちょうだい!」
「……てか、品揃え、いいな」
普通の服は勿論、コートだけで50種類はある。マフラーや手袋に、服屋なのに布団や毛布まであるぞ。
「あら、ありがと。アタシね〝スノーワイト〟で一番の品揃えを目指してるの。まあ〝大都市エルクステン〟や〝イリス皇国〟には遠く及ばないけどね」
店主はそれでも楽しそうに笑っている。
いい店だな。店員が客と話して笑っていられる店は良店舗の証だ。服屋なら尚更だ。
「応援するぜ、アンタならいつか追い越せるさ」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね☆ あー、もう決めたわ! お買い物サービスしちゃうわ! 割引よ、割引! あ、勿論、気に入ったのがなかったら見るだけでも全然大丈夫よ☆ ゆっくりしていってちょうだいね。可愛い、私のお客さんたち☆──」
キレのあるウィンクを貰った。
どうしよう要らねぇ。割引は嬉しいが。
「じゃあ、クレハの──マフラーと手袋を見るか」
「うん、よろしくお願いします!」
とは言っても、俺は女子相手にコーディネートとかできる美学センスは待ち合わせてない。
和服なら多少は分かるが──
と、まずはマフラーを選ぶ。
色はもふっとした白。明るい色の方がいいだろう。
俺はくるくるとクレハにマフラーを巻く。
「どうだ?」
「あったかい。一発目だけど、私これがいいな」
「じゃあ、マフラーはそれだな」
次は手袋なんだが、これは条件を満たすのが1つしか無かった。
条件を満たす物──クレハはスキルで〝空間移動〟を使う。そして〝空間移動〟は生きてる物に対しては直接触れなければならない為、もしもの状況に瞬時に対処できるように、手袋は指先が出ているフィンガーレスタイプのの黒い手袋となった。
「あとはこれかな」
俺がクレハの頭から被せたのは白い耳当てだ。
うん、似合う。着る人間の素材がいいからかな。
「あら、かわいい♪ お嬢さんの素材がいいのね」
店主も俺と同じ意見みたいだ。
「クレハ、これでいいか? 正直、コーディネートとかしたことないから自信は無いんだが……」
「ユキマサ君……その、私……か、可愛い……?」
「ああ、可愛いぞ。超可愛い!」
「本当? じゃあ、これにする!」
顔を赤くしながら、ぱぁぁと笑顔になるクレハ。
「あ、会計は俺が払う。いくらだ?」
「小金貨1枚と銀貨2枚よ。でも小金貨1枚でいいわよ」
「気前がいいな。ありがとう。購入させて貰うぜ」
支払いを済ませ、店の外に出ると、早速クレハが買ったばかりのマフラーと手袋と耳当てを付ける。
「あったかいか?」
「うん、スッゴく。ありがとう、大切にするね!」
眩しいぐらいの笑顔のクレハ。
そこまで喜んで貰えるとこっちも嬉しいな。
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