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第427話 銀雪祭18

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 少し酔いが回ってきた。
 だが、胸のつっかえは取れない。

「ユキマサ君、飲み過ぎじゃない? お水いる?」
「……ん、いる……」

 クレハの言葉に俺は短く返す。

「鴨と牛タンのサンドウィッチ、食っていいか?」
「あ、うん。勿論、これ凄く美味しいよ」

 水を俺に渡しながらサンドウィッチの包みもこちらに手渡してくれるクレハに礼を言いながらそれらを受けとる。

「なあ、クレハ、お前は……これからも俺と一緒に旅に──言っちまえば、終りの見えない指名手配犯のバカな逃亡劇に付き合ってくれるのか?」

 酔ってる時にしか怖くて聞けない。
 そんな事も時にあるだろう。
 俺は少しばかり酒に頼り、そんな質問をした。

「え、うん。そのつもりだけど?」

 間を空けず、返事が返って来た。
 あまりにもあっさりした返事だったので聞いた俺の方がポカーンとしてしまう。

「そうか、そうか、クレハ──ありがとう」

 それとつっかえてた胸が少しだけスッとした。
 何だったんだ? この胸のつっかえと変な頭痛は。前にもあったが、続くようなら病院行ってみるかね?

「ユキマっさん、バブも美味しいっスよ」
「バブ? あ、ケバブか。祭りの最初に食ったよ。それも美味いよな。俺はソースはオリジナル(甘口)派だ」
「あ、私も」

「俺はスペシャル(辛口)派ッスね」
「私もスペシャル(辛口)派かな」

 俺とクレハがオリジナル派(甘口)、チャッチャラーとアリシアがスペシャル派(辛口)と綺麗に派閥が別れた。
 いいねぇ、飲食物で派閥ができるってのは人気の証拠だ。俺は食べ物の派閥で論じるのが好きだ。
 だが、これだけは言っておこう。派閥の論議とは相手をけなし、敗者を決める物じゃない。己の好きな物を好きなだけ褒め、崇め、時にたてまつり、勝者を決めて行う紳士の遊戯だ。そう親父は言っていた。
 もう一度言おう、決して相手をバカにしては、けなしてはならない。

 ──と、8杯目の酒に俺が口を付けた時だ。

 まだお焚き上げの火が残る会場に大盛りの拍手が巻き起こった。その拍手の先には──

 服屋の若い青髪のイケメンの爽やかなオカマとリナちゃんと、あれは──イカだ!! 銀狼に食われた奴!
 どうやら、これも恒例らしい、祭りの出演者キャストの登場に会場は更に盛り上がりを見せる。
 魔法で銀狼のに化けてた中の人(青髪イケメンのオカマ)は出てきたが、イカは相変わらずのスタイルの良い全身白タイツに頭にイカの被り物の姿だがいいのか?

 いや、イカに中の人なんていないんだ。
 とある夢の国のマスコットと一緒なんだ。ハハッ。

「きゃー! イカプリオ様ぁぁ!!」
「こっち向いてぇ!! キャー!」

 え? イカプリオって言うの? あのイカメン……

 きょろきょろ、きょろきょろとイカプリオの横にいるリナちゃんが左右に首を2回振った所で俺と目が合う。

「──黒いお兄さん! クレハさんたちも!」

 ダッシュで駆け寄って来るリナちゃん。

「よう、リナちゃん、酔っ払いで悪いな? 祭りの参列に並んで出てきた時は驚いたぜ?」
「はい! 私、今年のイカソムリエなんです」
「い……イカソムリエ……?」

 も当然のようにイカソムリエなる単語を使うリナちゃんは俺の隣に来ると優しく微笑むのだった──
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