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第442話 黒霊山4
しおりを挟む──一瞬で景色が変わった。
クレハの〝空間移動〟だ。
「ハハハ、楽しいなこれ、俺は好きだぜ!」
「相変わらず呑気だね、もう少しで私たち串刺しだったんだよ」
「それはクレハ様々だな」
〝空間移動〟した上空から黒霊山に落下しながら俺は笑い飛ばす。
ハハハ、いいじゃん異世界!
俺を退屈も失望もさせてくれるなよ。
──地面に着く前に魔法陣を展開。
「このまま駆け上がるぞ! しっかり掴まってな!」
魔法陣を足場にし、トントンと軽い足取りで山を駆け上がって行く。
そのまま魔法陣から魔法陣に飛び進み、山の中枢。
──ん? 妙だな。
あれほど、わんさかと湧いていた鎧骸骨と鎌ゴーストが一定の場所から先に追ってこない。
まるで自分たちの縄張りでもあるかのようだ。
パカラ、パカラ。そんな足音から一番に連想される生き物は何だろうか? と聞かれれば俺は馬だと答える。
俺の進行方向に現れた、やたら筋肉質な馬には光沢のある豪華な青紫の鎧を着た人が乗っていた──
と、俺は思った。
いや、人は乗っているのだ。だが、人には必ずある筈の首から上が、馬に乗るその人物は持ち合わせていなかった。
「──デュラハンって奴か。うん、初めて見た」
右手には剣。左手には兜を被った己の首を持っている。兜を被ってるので表情は見えない。
つーか、生首の表情なんて見たくないしな、これはラッキーと思っておこう。
ゆっくりと剣を構え、俺たちに狙いを定める、そいつの攻撃は急に来た──
気づくとデュラハンは攻撃を終え、俺の背後に回っていた。
反射的に〝アイテムストレージ〟から一瞬で取り出し構えた〝月夜〟で防御しなければ、今頃は首と胴体が永久にバイバイしていたかもしれない。
「嘘だろ!? 今の剣筋、エルルカ級だぞ!!」
驚く俺をデュラハンは待ってはくれない。
──ギンッ!
振り返った矢先に刃と刃が交差する。
「コイツは強ぇ、正直な所、予想外だ。何でこんなのがここにいるんだよ? クレハ悪いが少し離れてろ」
お姫様抱っこのクレハを一度地面に下ろし。
「すぐ戻る。手、また繋ごうな」
そして少し名残惜し目に手を離した。
顔を赤らめたクレハが「うん」と優しく頷き笑う。
「さて、とっとと終わらせるぞ。首無し」
一瞬で俺は距離を詰めると、デュラハンに問答無用で斬りかかる。胴体を真っ二つにする思いで。
だが、これは予想外。真正面から受け止められた。
剣と剣のぶつかった余波が辺りに旋風を起こす。
──〝アイテムストレージ〟から〝魔力銃〟を一瞬で取り出し、早撃ちをしてみるが、デュラハンはエルルカ並みに速い。シュッと簡単とまでは言わないが確実に避けられてしまった。
ハハハ、こりゃ本当に一筋縄ではいかなそうだ。
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